旧仮名遣いの「旅の友」
私は関西や松本の稽古に行く時には、しばしば「宝生流旅の友」という3冊で宝生流の謡が全曲入っている本を携えていきます。
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「旅の友」にも何種類かあって、今よく使っているのは昔に発行された少し小さめのものです。
やはりちょっとでも小さくて軽い方が有り難いです。
百均の化粧ポーチにぴったり入ってしまうのも便利なのです。
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この古い「旅の友」、謡の印刷の内容は最近のものと変わらないのですが、無意識に使っていると偶に「あれ?」と戸惑う事があります。
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例えば「葵上」という曲、「あ.お.い」なので全曲中で一番最初に載っているはずです。(「翁」は別格で冒頭にあるので、厳密には翁の次の2曲目です)
しかしそこを探しても「葵上」は無くて、「阿漕」が翁の次に載っているのです。
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「葵上」は何処だろう…?
と一瞬考えて、そうか”旧仮名遣い”か、と思い至りました。
「あ.ふ.ひ」
かな…と見当をつけて探すとやはり、
「敦盛」と「海人」の間に「葵上」があったのです。
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同じ事が「猩々」を探す時にも起こりました。
「昭君」の次…と何時もの癖で探すと無くて、
「ああ、”しやうじやう”か…」
と少し戻って引くと「猩々」があるのです。
ちなみに「正尊」も「しやうそん」なので猩々の次に載っています。
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この旧仮名遣いが残っている「旅の友」、いつ頃の発行なのか見てみると…
「昭和7年12月25日初版発行」
とあり、やはり戦前でした。
(ちなみになんとこれは私の父親の誕生日の翌日の日付で驚きました)
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第二次大戦を境になくなった旧仮名遣いが、私の普段使いのアイテムの中に残っている訳です。
この貴重な「旅の友」をこれからも大切に使っていこうと思います。