最初の関宝連、最後の関宝連

一昨日の金曜日には自治医大稽古に行って参りました。

来週23日に宝生能楽堂にて開催される

「関東宝生流学生能楽連盟自演会(関宝連)」

に向けての仕上げの稽古です。

3週間にわたる卒業のための長い試験を終えたばかりでやや疲弊気味の6年生、実習や解剖などで遅くまで来られない下級生など、やはり自治医大の皆さんは医師を目指しての過酷な日々を送っているようでした。

しかしその中でも、自主稽古はきちんとしてくれていたようです。

今回の関宝連が初舞台となる1年生の仕舞「鶴亀」を稽古してみると、前回よりも格段に上手くなっていました。地謡との合わせもバッチリです。

「鶴亀だいぶ稽古したんだね!」

と言うと、シテも地謡も

「はい!」

と胸を張って即答でした。

また6年生にとっては最後の関宝連になります。

仕舞「歌占キリ」と「紅葉狩」。

こちらは先輩らしく、高い完成度で仕上がっていました。

他にも4年生の仕舞「東北クセ」と、2年生が初めて”地頭”を勤める全体連吟「鶴亀」など、3時間ほどかけてゆっくりじっくり稽古しました。

自治医大稽古では、途中で医学部特有の話題で盛り上がったりするので面白くて勉強になります。

今回は「肺から出る血管を覚えるための体操」という話で盛り上がっていました。。

初舞台の1年生から最後の関宝連の6年生まで、忙しい中でも一体感を持って楽しく稽古している自治医大能楽部宝生会です。

来週の関宝連の舞台に期待したいと思います。

稽古を終えて外に出て驚きました。

かつて見た事の無いほど濃い”夜霧”であたりが煙っていたのです。

写真では今ひとつ伝わりませんが、実際のグラウンドの光景は、濃い夜霧に照明があたってとても幻想的でした。

2024年夏の自治医大合宿

皆様 お久しぶりでございます。

猛暑と仕事の山場が続いて、ブログをお休みしておりました。

松本城薪能の能経政シテや、七葉会などのいくつかの大きな舞台がおかげさまで無事に終わりました。

そして今週は自治医大宝生会の夏合宿に行って参りました。

場所は奥日光の中禅寺湖畔にある自治医大の研修施設です。

研修施設に到着すると…

なんと熊さんのポスターがお出迎えです。。

最近は全国的に熊の出没が増えているようです。

幸い合宿中に遭遇することはありませんでした。

春の自治医大合宿では何人かの部員が体調不良でお休みだったのですが、今回は新入生も含めたフルメンバーが参加してくれました。

京大若手OBの2人も参加して、私を含めて総勢9人という過去最多人数の賑やかな合宿になりました。

謡「黒塚」と、各自一番ずつの仕舞、そして自治医大にとっての”初舞囃子”を目指して全員揃って「中之舞」を稽古しました。

新入生には少々情報量の多い合宿でしたが、

「夏の成果は秋に出る!」

という受験勉強のような格言を言って励ましながら、なんとか全員が目標の稽古をクリア出来ました。

最終日には中禅寺湖から更に奥の「湯ノ湖」や「戦場ヶ原」まで足を伸ばして観光しました。

上は部員が撮影した「湯ノ滝」です。

実に涼やかです。

実際に真夏の奥日光は涼しくて、なんと2泊3日の間はエアコン無しで過ごせたのです。

稽古、食事、観光ともに誠に充実した合宿でした。

2024年夏の素晴らしい思い出として、部員達の心に刻まれた事でしょう。

もちろん私の心にも。

自治医大の自由な稽古

今日は久しぶりの自治医大宝生会の稽古でした。

先月の「全宝連」以来の稽古で、当初の予定では8月にある夏合宿に向けて、とりあえず仕舞と謡の曲を決めて、少し稽古を始めてみようかという話でした。

しかし稽古の中で、「実は10月の文化祭で何か仕舞を出したいのです」という話が出て、見栄えが良くストーリーもわかりやすいものを、と考えて「経政キリ」はどうかという話になりました。

まだクラブとして若い自治医大宝生会では、経政キリのように扇を2本使う「二本差し」という仕舞は未経験の部員が殆どです。

そこで今日は、1年生から6年生までとにかく全員で「経政キリ」をみっちりと稽古することにしました。

一本の扇は刀に、もう一本は盾に、という二本差しの基本がやはり難しいようで、皆それぞれ苦労して扇を扱っていました。

しかしなんとか頑張って、数時間の稽古で全員が一応ひと通り経政キリが舞えるようになりました。

自治医大宝生会はこのように、歴史が若い分、自由な稽古形態がとれます。

夏合宿では、今度は全員で「中之舞」をマスターするという稽古もしてみたいと思っております。

お祭りを終えて

全宝連京都大会から1週間と少し経ちました。

あの舞台では、みんな春先からの稽古の成果を遺憾なく発揮してくれました。

そしてそれからの1週間の間に早くも、京大と自治医大から「夏合宿のご案内」というメールが届きました。

京大からは、「秋の京大能楽部自演会の舞囃子のご相談」というメールも来て、既にシテと候補曲も決まっているようでした。

お祭りのような大きな舞台を終えて、この先は合宿と稽古で地力をつけて、また次の大きな舞台へのチャレンジが始まるのです。

…しかし、学生さん達はその前に大変な実習や前期試験などが待っているはずです。

とりあえず学業のヤマを越えて無事に夏休みが迎えられるように祈っております。

自治医大宝生会の京都観光

先週の全宝連京都大会、初日の6月29日は舞台終了から夜のレセプションまでに3時間ほどの自由時間がありました。

そこで、自治医大宝生会の部員達と短い京都観光をしようと思い立ちました。

彼らのうちの何人かは初めての京都だったのです。

自治医大のある栃木県にゆかりのある場所や、今回仕舞が出る「敦盛」などの謡蹟は組み入れたい…と考えて、コースを決めました。

金剛能楽堂を出発して先ずは北上。

今出川通から市バス203に乗って東へ。

途中「鴨川デルタ」や「百万遍交差点」などの名所(?)を見つつ、「銀閣寺道」で下車。

最初の目的地「東北院」を目指して歩き始めました。

神楽岡通で見つけた和菓子屋で、ちょうど6月30日の”夏越の祓”に食べる和菓子「水無月」を購入して皆で食べました。

自治医大は食欲旺盛で、鮎の形をした和菓子「若鮎」も追加で食べていました。

東北院では外から「軒端の梅」を眺めて、すぐに次の目的地「真如堂」へ。

ここでは「殺生石」から作られたという「鎌倉地蔵」を見ました。

鎌倉地蔵を彫ったのは能「殺生石」のワキである「玄翁上人」です。

京都から空を飛んで那須野に逃げた「玉藻前」が殺生石になり、それが玄翁上人の手でお地蔵さんになって再び京都に戻って、そのお地蔵さんを那須野の近くから来た自治医大宝生会が眺める…

というなんとも不思議なご縁でした。

その後は金戒光明寺に下って、「平敦盛」と「熊谷直実」の供養塔が向き合って建っているところにお参りして、一応の行程を終えました。

途中で比叡山が見えたので「あれが比叡山だよ」と言うと、部員の1人が何故か高めのテンションで、

「あれが比叡山ですか❗️愛宕山はどこですか⁉️」

と言うので、また途中で愛宕山が見えた所で「あれが愛宕山だよ」と言うと、

「あれが愛宕山ですか❗️

あれをイメージして舞います‼️」

そうでした。その部員は「花月キリ」の仕舞を舞うことになっていたのです。

実物の比叡山や愛宕山を見られてテンションが上がっていたのですね。

その後は丸太町通に出て再び市バスに乗って、レセプション会場ちかくの烏丸丸太町に向かいました。

途中で「京大病院」が見えたので「あれが京大病院だよ」と言うと、今度は全員が

「あれが京大病院ですか‼️」

とハイテンションになって、さすが医大生、と感心しました。

舞台を”言語化”して観るということ

先週土曜日の全宝連京都大会レセプションの時のお話です。

宝生和英家元は昼間の国立能楽堂での舞台の後すぐに京都に駆けつけてくださり、レセプションの冒頭でスピーチをしてくださいました。

その中で家元は、

「他の学生達の舞台を見るのはとても大事です。他人の芸の長所と短所を”言語化”して、それを自分の芸に活かすのです。私も常にそうしています」

と仰いました。

「長所短所を言語化する」

という考え方は初めて聞いたので、すぐには腑に落ちませんでした。

しかしよくよく考えてみると「成る程!」と目から鱗が落ちる思いがいたしました。

例えば、

「この人は運びの最中に下を向いている」

とか、

「今の飛び返りはとてもキレが良かった」

というのを、普段の私は感覚的にしか捉えていなくて、「何となく上手い」としか認識していませんでした。

それを”言語化”して改めて認識し直す事によって、

「運びの最中に下を向かないように気をつけよう」

とか、

「キレのある飛び返りを研究してみよう」

と具体的に自分の芸に活かす事ができるのです。

今後は私も他人の舞台を観て気付いた事は一度”言語化”して、自分の芸の改善に努めていきたいと思います。

家元の貴重なお言葉は学生達にもきっと響いたことでしょう。

有り難い事でした。

全宝連京都大会が盛大に開催されました

昨日一昨日と京都金剛能楽堂にて、

「全宝連京都大会」

が盛大に開催されました。

コロナ禍の時には開催見送りやオンラインでの開催、また開催されても学校毎に固められた番組で、学生同志の交流が制限されていました。

しかし今回からは、番組も色々な大学がランダムに配置され、また初日終了後には京都ガーデンパレスホテルにて、全国の学生と、宝生和英御宗家始めシテ方能楽師も参加した「レセプション」も開催されました。

完全にコロナ以前に戻った雰囲気の2日間で、特にレセプションでの学生達の楽しそうな様子は、見ているこちらも思わず笑顔になってしまうほどでした。

そしてもちろん、2日間にわたる舞台は非常に熱気溢れるもので、見所も学生やOBOG、また学生のご家族などで終日賑やかでした。

舞台でも楽屋でも、またレセプションやその前後にも、本当に多くの素敵なエピソードが生まれた「全宝連京都大会」でした。

また個別のエピソードも改めて書かせていただきます。

今回の全宝連に関わったすべての皆様、特に運営を担って大会を成功させた全宝連委員の皆様に心より御礼申し上げます。

全宝連での得難い経験

いよいよ明後日から「全宝連京都大会」が2日間にわたって開催されます。

私が全宝連委員長を勤めたのは確か平成3年の全宝連京都大会で、会場は四条室町上ルの旧金剛能楽堂、レセプション会場はコープイン京都でした。

今は金剛能楽堂は御所の西に移り、コープイン京都も無くなりました。

あれから幾星霜、コロナ禍も乗り越えて、また京都に全宝連が帰ってくるのは実に感慨深いです。

と言っても私が委員長を勤めた時は、私自身は2日間ほぼずっと玄関に座って、全国から来る皆さんや、能楽師の先生方をお迎えしたり、色んなトラブルへの対応に終始していました。

自分が出る時以外の舞台は全く見られなかったので、舞台の記憶は殆ど無いのです。

正直しんどい仕事でした。

しかし、例えば目上の人への手紙の書き方、口のきき方、フォーマルなレセプションでの挨拶の仕方などは、この全宝連委員長の時に初めて経験しました。

そしてその経験が今の私の日常にも確実に活かされているのです。

今回も神戸大の委員長さんを始め、全宝連委員や関西の大学の学生は、これから本番終了まで、間違いなく大変な数日間になる事でしょう。

でもその大変な経験は、将来きっと自分を助けてくれる、得難い経験になるというのもまた、間違いない事なのです。

全宝連京都大会が実り多い舞台になるように、私も全力でお手伝いしたいと思います。

全宝連京都大会のお知らせ

今週末の6月29(土)30日(日)に京都金剛能楽堂にて、

「全国宝生流学生能楽連盟自演会京都大会」

が開催されます。

東京、名古屋、金沢、関西を中心に、宝生流を稽古する全国の学生達が一堂に会する盛大な催しです。

29日10時半〜15時まで学生自演会

30日は10時〜13時まで学生自演会、15時から鑑賞能があります。

学生自演会は入場無料、鑑賞能は有料の催しになります。

鑑賞能は宝生和英御宗家による

能「鞍馬天狗 白頭」

ほか、各大学を指導する能楽師による仕舞が多数演じられます。

番組は下の通りです。

詳細情報、また鑑賞能チケットの購入は下のリンクをご覧くださいませ。

鑑賞能チケットは当日受付でもご購入いただけます。

学生達の熱い舞台と、その後の盛りだくさんな内容の鑑賞能を観に、週末は是非京都金剛能楽堂にお越しくださいませ。

よろしくお願いいたします。

https://ja.kyoto.travel/event/single.php?event_id=10193

https://zenporen2024.peatix.com/?lang=ja

自治医大の集中力

今日は自治医大宝生会の稽古に行って参りました。

先日の「関宝連」は、6年生の地元実習の関係で、本番2日前に1度だけしか稽古できずに本番を迎えました。

しかも私自身が関西で舞台があり、仲間の若手楽師に自治医大の事をお願いして関西に向かったのです。

今日自治医大に到着すると、真っ先にその関宝連の様子を聞いてみました。

すると笑顔で「いや〜絶対無理だと思っていたのに、本番はノーミスで出来ました〜!」

おお!さすが普段から集中力が求められる医大生です。

1度だけの稽古の音源や映像で、本番直前までみっちりと自主練したようです。

そして今日は、来週末に迫った「全宝連京都大会」に向けての稽古です。

関宝連前は差し迫った本番のための必要最低限のことしか言えなかったのですが、今回はまだ時間もあるので、より細かな稽古ができました。

自治医大はこれでもう全宝連本番を迎えるわけですが、彼らは今回もここから集中して自主稽古をしてくれるはずです。

6月30日の全宝連本番は、今度こそは私も行けるので、金剛能楽堂での彼らの奮闘をしっかりとサポートしたいと思います。