同期の交流

先日京大宝生会の部長さんにメールした時の事です。

メールの用向きは、今度の澤風会郁雲会の自由参加の素謡「鶴亀」のシテとワキを、京大1回生の誰かにお願いしたいというものでした。

するとすぐに返信が来て、シテワキの名前がちゃんと書いてあります。

早いな、と思って返信の続きを読むと、なんとその日は1回生で集まって、大阪ベイエリアにある某有名テーマパークに遊びに来ているというのです。

皆でジェットコースターに乗った時の事などが楽しそうに書いてありました。

大変素晴らしい事だと思い、数日後に京都稽古場で若手OBに話したところ、

「…まあ私の学年では一生無いでしょうね」

彼の学年は男子2人なので、それはまあそうでしょう。。

しかし私の現役時代は、同期が男子2人女子2人だったのですが、遊園地どころか3回生になるまで同期揃って御飯を食べた事すら無かったのです。

それは流石にサークル運営上も良くないだろうと言う話になり、同期4人で洋食屋の個室を予約しました。

クロスの掛かった四角い大きなテーブルを4人で囲み、あまり盛り上がる事もなく静かに洋食を食べたのを覚えています。

そんな同期4人ですが、なんだかんだで卒業から30年以上経た現在でも交流は続いております。

細く長い繋がりというやつでしょうか。

引き換えて今の1回生達は、宝生会に入ってすぐからずっと仲良しです。

どうかこれからも太く長く交流を続けていってほしいと願っています。

能「敦盛」の女性地謡

来たる3月9日(土)10日(日)の澤風会郁雲会には、3番の能が出ます。

能「野宮」、「敦盛」、「砧」です。

このうち「敦盛」は女性のみの地謡になります。

後列3人は女性能楽師、前列3人が京大宝生会の若手OGです。

前列の1人は京都で働いており、もう1人は京大大学院生、あと1人は東京で働いているという、全くバラバラな経歴の3人です。

それぞれの空いている日程と場所で、やはりバラバラに敦盛能地を稽古する事になります。

大学院生は1月の京都稽古で。

京都で働いている人は、2月の若手OBOG合宿で稽古しました。

そして昨日は神保町で東京のOGが初めて敦盛能地の稽古をしたのです。

来週申合なのに大丈夫かと思われそうですが、実は1月の大学院生の稽古の音源をスマホ経由で共有してもらっていたので、初めての稽古で既に謡えるようになっていました。

それぞれ仕事や研究で大忙しな3人が、なんとかやり繰りして敦盛能地に挑戦してくれます。

大学院生OGさんの稽古をしている時の事。

OGさん「すみません、扇の持ち方はどうすればいいのですか…?」

今回が初めての能地だそうで、この機会に色々な能地の作法なども経験してもらって、また機会があればどんどん能地に入ってもらいたいと思います。

能「敦盛」は、シテやツレはもちろんの事、女性地謡にも是非ご注目くださいませ。

一回生だけで舞囃子が…

昨日は京都観世会館にて「同明会」が開催されました。

宝生流からは能「来殿」、舞囃子「松尾」、舞囃子「西行桜」が出て、他にも観世流金剛流の舞囃子や一調、独調などが盛大に演じられました。

京都の囃子方が主催の「同明会」は、色々珍しい番組が出るので、能楽愛好家にはとても人気がある舞台です。

終演後にロビーに出ていくと、昨日「仕舞百番舞う会」で頑張っていた京大宝生会の現役や若手OBOGもたくさん観に来ていました。

彼らの中には、お囃子を習っている人も何人かいます。

大鼓、小鼓、太鼓、笛の四拍子のうち、京大宝生会関係では小鼓と太鼓がちょっと少なめだったのですが、実は一回生達がお囃子にも興味を持って、最近何人かが習い始めたのです。

6人の一回生のうちの3人が、それぞれ大鼓、小鼓、太鼓の稽古を始めてくれました。

そして笛に興味を持った一回生もいるので、間もなく一回生だけでシテ、地謡に四拍子が揃って舞囃子が出来る事になります。

流石にこの春の新歓には難しいと思いますが、来年以降の新歓では是非とも今の一回生達が自前で舞囃子を出してもらいたいと期待しております。

百番会のテーマ

昨日京大能楽部BOX舞台にて開催された

「2024年京大宝生会仕舞百番舞う会」

今回は私としては「一回生に仕舞を沢山見てもらって、将来やりたい仕舞や、春合宿で習いたい仕舞を選んでもらいたい」

というのを最大の目的と考えておりました。

しかしいざ始めてみると、この”一回生に見てもらって”というのはちょっと的外れなテーマだとわかりました。

一回生達は”見る”というよりは、積極的に”参加”してくれたのです。

彼らは昨年習った仕舞を舞うだけでなく、先輩達の仕舞の地謡にもどんどん入って謡っています。

「班女」などという、一体いつの間に稽古したのかと思うような難しい地謡にも果敢に入っていきます。

一回生の成長ぶりは、私の想像をはるかに超えていました。これは嬉しい驚きでした。

また今回もう一つ私が決めていたのが、

「私自身は100番のうち1番も舞わない」

という事でした。

百番会を初めた頃は私が40番ほども舞っていた記憶がありますが、回を重ねるごとに私の番数は少なくなっていきました。

2019年の百番会ではブログによれば私は9番舞ったようです。

それから5年で若手OBOG達も飛躍的に実力をつけました。

もう彼らだけで100番舞えるだろうと思ったのです。

こちらの方は私の思った通りになりました。

私は地謡を少しだけ謡っただけで、仕舞は1番も舞う事なく100番目の「船弁慶キリ」まで終えることができたのです。

今回の百番会は現役も若手OBOG達も、得たものがとても大きかったと思います。

この経験を自信にして、今後の合宿、新歓、舞台に繋げていってもらいたいと願っています。

昨日参加してくれた皆様本当によく頑張りました。お疲れ様でした。

カラオケボックスに行く目的は…

一昨日、若手OBOG合宿初日の稽古が終わった後の事。

OBのT君が、

「え〜と、私これからカラオケボックスに行くので…」

と言うのを聞いて「まだ歌い足りないのか…!」と驚きました。

しかしT君は、

「カラオケボックスで笛を吹きたいのです。1日に最低30分は笛を吹く事に決めているので」

なんと、笛の稽古でしたか。

しかし毎日欠かさず最低30分とは大変立派な事です。

するとOBのM君も、

「私もよくカラオケボックスで大鼓の稽古します。この間は部屋に入って”‼️‼️”と稽古を始めたら、店員が”大丈夫ですか⁈”と飛んで来ましたよハハハ」

…入室した途端に険しい顔で意味不明な絶叫を上げ始めるお客さんを見た店員さんは、さぞかし狼狽した事でしょう。。

その後、カラオケボックス稽古を終えたT君が晩御飯の会場にやや遅れてやって来ると、T君とM君でまたひとしきりカラオケボックス話で盛り上がっていました。

「稽古し放題30分290円で、ソフトクリーム食べ放題のカラオケボックスがあるんですよ!ソフトクリームだけで元が取れるという…」

「コートダジュールっていうカラオケボックスが良いんですけど、京都にあまり無いんですよね」

などなど…

仕事の合間にカラオケボックスで稽古をして、真面目な顔で1人でソフトクリームを食べている彼らを想像すると、何かとても微笑ましい姿に思えて笑ってしまいました。

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若手OBOG合宿が無事終了いたしました

京大宝生会若手OBOG合宿が無事終了いたしました。

舞囃子:八島、羽衣盤渉、邯鄲盤渉。

謡:実盛クセキリ、阿漕後半、敦盛能地、葵上。

あとは仕舞が歌占クセ、善知鳥、橋弁慶などおよそ20番ほど。

これらを2日間にわたってみっちりと稽古しました。

現役の合宿のように途中で散歩したりもせずに、只管稽古です。

OBOG達なので、仕舞や舞囃子の地謡もどんどん謡ってもらいました。

能舞台に近い環境で稽古できたので、非常に実り多き合宿になったと思います。

この成果は先ずは来週京大能楽部BOXにて開催される「仕舞100番舞う会」で披露されます。

今年の「100番舞う会」は、1回生達にとにかく沢山の仕舞を見てもらって、次に稽古したい仕舞を決めたり、将来習いたい曲をイメージしてもらったりするのが一番の目的です。

若手OBOG合宿で稽古した多くの曲が、1回生達の心に響く事を願って帰路につきたいと思います。

京大宝生会若手OBOG達の近況

今日は京大宝生会の若手OBOG達の近況を。

コロナ禍で色々な活動が制限されていた時期にも、若手OBOG達は弛まずに稽古を続けておりました。

その成果として、この数年で4人の30代若手OBが”教授嘱託”の資格を取りました。

現在彼ら4人は「七宝会」など関西宝生流の公演にも地謡として出演しております。

澤風会大会においても、京都大会で能「鶴亀」「小督」「蝉丸」「龍田」のシテとツレ、東京大会で能「夜討曽我」ツレなどを始め、実に多くの熱気溢れる謡や舞を披露してくれました。

そして今年も、3月9日(土)10日(日)に宝生能楽堂にて開催される「20周年記念澤風会東京大会郁雲会大会」において、

舞囃子「八島」を始め能「敦盛」地謡、素謡「昭君」、また仕舞10番ほどを若手OBOGが勤める予定です。

そして今年新たに教授嘱託取得を目指している人もおり、コロナ制限が無くなった今、彼らの活動はますます盛んになっていくと思われます。

実は今日明日とその京大宝生会若手OBOGの稽古合宿をいたします。

先ほど書いた澤風会郁雲会の舞台の他にも、今月末に予定されている「京大宝生会仕舞100番舞う会」に向けての仕舞稽古、また秋の「京都澤風会大会」に向けた舞囃子稽古など、みっちりと稽古したいと思います。

2024年全宝連京都大会の打ち合わせ

今日は大阪で七宝会申合がありました。

明日2月9日が七宝会の本番で、枚方市総合文化芸術センター小ホールにて17時開演。

能「春日龍神」シテ辰巳和磨

能「源氏供養」シテ辰巳孝弥

他狂言が演じられます。

その申合の後で、関西宝連の学生数名と楽師での打ち合わせがありました。

これは

「全国宝生流学生能楽連盟自演会(全宝連)」

の打ち合わせです。

来たる6月29日(土)30日(日)の2日間、京都金剛能楽堂にて

「2024年全宝連京都大会」

が開催されるのです。

宝生流を稽古している全国の学生達が年に一度集まって盛大に開催される「全宝連」。

コロナ禍で1年延期の年があったので、5年ぶりの京都大会になります。

番組作りの事、鑑賞能(30日に開催予定)のチラシやチケット制作、全宝連委員による謡蹟巡りの事などなど…

たくさんの内容を話し合いました。

なにしろ前回全宝連京都大会の時には皆まだ中高生であり、彼らは何も知らないところから委員をしないといけないのです。

我々楽師は出来るだけ委員の負担を軽くしつつ、楽しい全宝連にするためのお手伝いをして行けたらと思っております。

鑑賞能の詳細な番組など、また正式に決まり次第お知らせしてまいります。

繰り返しですが、

今年6月29日(土)30日(日)金剛能楽堂にて開催の「全宝連京都大会」

どうかよろしくお願いいたします。

京大宝生東京OB会新年会

今日は宝生会春日教室舞台にて、「京大宝生東京OB会新年会」に参加してまいりました。

毎年恒例だった新年会も、コロナ禍により2019年以来の久々の開催でした。

素謡4番と仕舞で、若手からベテランまで各世代のOBが思う存分に舞台を満喫した1日でした。

京大宝生会伝統の、

「役も地頭も地謡も、誰もが等しく全力で謡う」

というスタイルはコロナ以前と全く変わらず健在で、この数年でzoomなどのリモート稽古も積極的に行われていたようで皆様それぞれ腕を上げておられて驚きでした。

この6月には、こちらも数年ぶりの「京大宝生会OB会全国大会」が東京で開催される予定です。

今日の東京新年会の勢いで、全国大会もきっと盛大に謡って舞う1日になると思います。

今からとても楽しみです。