豪雨の後の亀岡浴衣会

今日は亀岡で「浴衣会」がありました。

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亀岡は先日の豪雨の時はJR山陰線も、また「老ノ坂」と呼ばれる山越えの幹線道路も寸断され、一時完全に京都市内との交通が不可能になりました。

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私も先週土曜日の稽古には山陰線が不通で行けず、今日はどうなっているか心配しながら東京を出ました。

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しかし京都から山陰線に乗って、嵯峨嵐山から保津峡を越えて亀岡盆地に入る間、豪雨の痕跡は全く見られずに、保津峡も少し水量が多いかな、くらいの流れでした。

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亀山城址にある稽古場も、大きな被害は無かったのとこと。少し安心いたしました。

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能楽には「祈り」の思いが込められています。

浴衣会の初めに主催者代表の方より、「今回被災された方々への祈りの気持ちを込めて、今日の浴衣会の舞台を勤めさせていただきます」とのご挨拶がありました。

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ニュースでは、今日になってからも広島で河川やため池が決壊しそうだと度々報道しています。

「祈る」しか出来ないのは何とも歯がゆいのですが、今はこれ以上被害が広がらないように、祈りたいと思います。

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亀岡の皆様は、先週土曜の稽古が出来なかったにもかかわらず、頑張って謡い、舞ってくださいました。

先週土曜の分の代替稽古日程も決まって、また私も新たな気持ちで頑張って稽古させていただきます。

亀岡の皆さま、本日はどうもありがとうございました。

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おまけですが、亀岡稽古場の「業平の杜若」に種子の入った莢が出来ておりました。

もう少し経つと、莢が茶色になって割れて、種子が見えてくるそうです。

種子から育てて花を咲かせるには3、4年かかると言うことですが…。

青森と東京の気温差

昨日の青森稽古の行きがけ、新幹線が新青森に到着してホームに降りると、横にいた会社員グループが「青森寒っ」と声を上げました。

確かに、寒いとまでは感じませんでしたが涼しい空気です。

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夜に入って道路の気温計を見ると「17℃」の表示。

流石に少し肌寒く感じました。

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そして今朝。

新幹線で青森から東京に戻り、そのまま西荻窪の稽古に向かいました。

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西荻窪駅に到着して外に出ると、熱い空気の塊がブワンとぶつかって来るような感覚を覚えました。

全く信じられないくらいの暑さです。

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おそらく気温としては30℃を少し越えたくらいで、まだ本格的な真夏の暑さではないはずです。

しかし昨日の青森とのギャップが激しすぎて、私にとっては35℃にも感じられたのだと思われます。。

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夜までぶっ通しで稽古して、外に出るとまだ大気には昼間の暑さが残っています。

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「青森の涼しさが懐かしい…」などと思いながら、ヨロヨロと家路についたのでした。

今年も「ねぶた」見学

毎年8月2〜7日に開催される青森の「ねぶた祭」

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今日青森稽古で新青森駅に到着すると、大きなポスターが貼ってありました。

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昨年「ねぶた大賞」をとったのは、下の「紅葉狩」だったようです。

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昨年はねぶた製作を見学しに行ってブログに書きました。

しかし今日は昨年の稽古よりも時期がかなり早い上に、昼間に仙台稽古をしたので、青森に到着したのが18時頃になってしまいました。

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もう見学は難しいだろうと思いながら、一応アスパム横のねぶた製作所、「ラッセランド」に急いで行ってみました。

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案の定、既にどこの巨大テントも幕が閉じられて中が見えません。。

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諦めて帰ろうかと思いましたが、まあ念の為と思ってラッセランドをぐるりと一周することにしました。

すると…

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一箇所、幕に作られた小窓が開いているテントがありました!

中には色付け途中のねぶたが。

この段階でも中々の迫力です。

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頑張って窓から覗くと、奥には悪そうなねぶたが見えます。鬼でしょうか?

何となく「大江山」か「羅生門」かな…と思い、とりあえずねぶたを1つでも見られたので半分満足して、更に先に行ってみました。

すると…

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ひとつだけ人が出入りしているテントがあり、入口には上のような貼り紙が。

なんとなく、可愛らしいねぶたを作っていそうなテントです。

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「こんにちは〜」「おじゃましま〜す」と声をかけると、中から「どうぞ〜」と優しい声が。

一歩足を踏み入れると…

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うわぁ!

いきなりど迫力の虎ねぶたが!

顔だけで私の背丈ほどあります。

こんな至近距離でねぶたを見るのは初めてです。

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このねぶたは「鐘馗」という題名だそうで、虎の横には色付け前の鐘馗様が奥に見えて、今は手前の鬼を製作中でした。

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製作中のお兄さんが鬼に襲われているようにしか見えません。。

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虎の横には、こんな貼り紙が。

「ちょせばまねはでな‼️」

何のことか全く理解出来ません…。

「これはどういう意味ですか?」

と聞くと、

「触ったら駄目だよ‼️」という意味の津軽弁だそうです。

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今回も僅か10分ほどの駆け足ねぶた見学でしたが、色々大満足して宿に急いだのでした。

松本城薪能と松本澤風会発表会

今日は松本の稽古日でした。

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新宿から特急あずさで無事に松本に到着したのですが、松本駅のアナウンスで「名古屋からの特急しなのは大雨の影響で全て運休になっております」とのこと。

今回の豪雨の影響は、長野にまで及んでいました。

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松本駅に到着して観光案内所に立ち寄ると、下のようなチラシが置いてありました。

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今からちょうど1ヶ月先の8月8日に、毎年恒例の「松本城薪能」が開催されます。

松本城天守閣と北アルプスを借景に舞台が組まれ、薪に照らされて宝生流の能と大蔵流の狂言が演じられるのです。

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能は初番が金井雄資師の「清経」。

その後狂言「蝸牛」を挟んで、能「鵺」を私が勤めさせていただきます。

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そしてこのチラシをよくよく見ると…

非常に小さな文字で「地元能楽愛好会・宝生流松本澤風会による発表会」と書いてあります。

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実は今回、薪能開演前の15時半〜16時半の間に、薪能の舞台を使って松本澤風会の発表会をさせていただくことになったのです。

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8年程前から、松本とその近郊の方々を中心に「宝生流松本澤風会」として稽古を重ねて参りました。

その後、金春流太鼓と幸流小鼓の稽古場も出来て、徐々に能楽が盛んになって来た松本です。

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今回は仕舞に加えて、太鼓と小鼓の独調も披露される予定です。

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そして仕舞は、松本城近くの小中学校の子供達や、地元の骨董屋さん、お味噌屋さん、鰻屋さんなどなどの皆さんが、只今絶賛稽古中です。

今日も、私も含めて皆さん汗をかきながら、一生懸命稽古いたしました。

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松本城天守閣の前で舞う、という素晴らしいシチュエーション。

少しでも良い舞台にするために、私も当日ギリギリまで頑張って準備をさせていただきたいと思います。

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薪能も含めて無料の催しです。

皆さま8月8日は出来ましたら15時半からの澤風会発表会から、松本城にお越しくださいませ。

どうかよろしくお願いいたします。

岡山と広島の被害

今朝も早朝に起きて、まず関西の大雨のニュースを見ました。

今朝から間引き運転をする予定だった嵯峨野線が、始発から運休になっています。

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やはり今日の亀岡稽古も延期にせざるを得ず、私は東京に2日間停滞しました。

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京都の河川の事を心配していたら、実は広島や岡山や愛媛で大変な被害が出ていたと知り、映像に衝撃を受けました。

二階の屋根に迫るほどの濁流が町を覆い尽くしています。

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あの町の中でまだ救助を待つ人々が多勢いらして、これから夜を徹して救助活動が行われるそうです。

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いつものように私は何も出来ずにただ祈るのみなのですが、一刻も早い救助と、そして救助活動をされている方々の無事を心からお祈りしております。

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そして実は、この8月に私は岡山県の小学生向けに仕舞教室を、また東広島の保育園で能楽ワークショップをする予定なのです。

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これから会うはずのまだ顔も知らない子供達と、その御家族のご無事もまた、心よりお祈り申し上げます。

身の安全を第一に

今朝三ノ輪の自宅で起きてニュースを見ると、やはり大雨のために関西の交通機関は大幅に乱れているようでした。

今回の稽古場所の丹波橋まで、たとえ無事にいらしていただいたとしても、帰りに電車が止まったら大変なことになります。

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早めに決断して、今日の紫明荘組稽古は延期にさせていただきました。

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それでも、夜の芦屋稽古には行けるかもしれません。

午後まで三ノ輪で様子を見て、東海道新幹線とJR京都線普通列車が動いているので何とか芦屋までは行けそうだと、東京駅までは行ってみました。

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しかし東海道新幹線は、動いてはいますが名古屋から新大阪までが150分遅れとの情報がありました。

それでは到着する頃には稽古時間が終わっています。

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やはり芦屋稽古も延期のお願いをして、すごすごと三ノ輪に帰って参りました。

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明日行く予定の亀岡も、今のところ嵯峨野線が不通になっています。

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稽古をお休みにするのは何とも心苦しいのですが、自然災害は本当に恐ろしいものです。

いざ遭遇してからでは、どうにも対処出来ないことが多いのです。

稽古される方々と、私自身の身の安全を第一に考えて行動したいと思っております。

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日曜までには天気も回復するという予報です。

昨日の繰り返しですが、関西の皆さまどうかくれぐれもお気をつけて、無理をなさらず過ごしてくださいませ。

関西の大雨

今日の朝早くに、三ノ輪の自宅で携帯のマナーモードが振動しました。

メールかと思い、「こんな明け方に何だろう…」と寝ぼけ眼で画面を見ると、「京都市左京区に大雨情報」という気象速報でした。

私の携帯には、京都市左京区の気象情報が流れてくる設定になっているのです。

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最近は夕方になるとよく同様の大雨情報があるのですが、「今日は朝からか…」と思い携帯を置いて、再び眠りに入りました。

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ところが、それからも1時間と置かずに繰り返し京都の大雨速報が入って来ます。

「これは余程すごい雨だな…」とちょっと心配に思いながら起きて江古田稽古に向かいました。

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江古田稽古の合間にも関西の気象情報が続々と入って来ます。

「大山崎町、茨木市、高槻市」など先日の地震で大変だった場所に今度は「土砂災害警戒情報」が。

「よりによって地震と同じ場所に大雨とは…」

とますます心配になりました。

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実は私は明日明後日と関西方面で稽古の予定なのです。

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しかし京都は鴨川、芦屋は芦屋川、亀岡は大堰川と、行く先々にある川がそれぞれ水量が大幅に増して危険な状況になっているようです。

JR嵯峨野線などいくつかの路線で終日運休という情報もありました。

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江古田稽古は先ほど無事に終わりましたが、今夜は気象情報をチェックしながら、明日の関西での稽古が可能かどうか様子を見たいと思います。

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関西の皆さま、どうかくれぐれもお気をつけて過ごしてくださいませ。

番組作り

「番組作り」というのは、中々に手間のかかる作業です。

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今、ある大きな催しの番組作りを手掛けているのですが、その作業が佳境に入りました。

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数百人の参加者と、40人程の能楽師のそれぞれの予定を考慮しつつ、能、舞囃子、仕舞、素謡、連吟、独吟の膨大な量の番組を組んでいきます。

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本番の番組が一通り出来上がったら、今度は申合の番組作り。

こちらも細かい時間の希望などを可能な限り反映させて作っていきます。

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明日いっぱいで何とか本番、申合ともに完成させねばなりません。

という訳で、短いですが今日はこれにて失礼いたします。

日本代表のメンタリティ

昨夜というか今朝早く、ワールドカップの日本対ベルギー戦を観ました。

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終わって呆然としつつ眠りにつき、午後からの稽古のために目覚めると、やはりニュースは日本代表のことで持ちきりでした。

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いくつか読んだ中で特に心を動かされたニュースが2つありました。

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ひとつ目は本田圭佑選手のインタビューです。

「このワールドカップが終わったら人生が終わると仮定してみた。その場合、自分はどんな覚悟をして、周囲とどんな会話をしていくかを考えて行動した。」というような内容でした。

ワールドカップという究極の大会で、更に人生がそこで終わってしまうという精神的極限状況に自分を置いてみる。

本田選手ならではの壮絶なメンタリティだと思います。

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ある舞台に臨む時に、そこで人生が終わると仮定して準備したことがあるかと自問してみました。

道成寺の時は、本当にその危険性はありましたが、逆に「怪我はしても死ぬことまではあるまい」と考えていた記憶があります。

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今後大事な舞台に臨む時には、この本田圭佑選手の言葉を思い出してみたいと思いました。

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ふたつめは、ロッカールームの話です。

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ベルギーに惜敗してワールドカップを去った日本代表。

そのロッカールームを掃除しに行った大会関係者が見たのは、すでに綺麗に掃除されたロッカールームと、「スパシーバ」と書かれたメモ、そして日本代表のチームカラーの青い折り鶴だったそうなのです。

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今朝のあの歴史に残る激闘を終えた日本代表が、非常な悔しさの中で、ロッカールームを掃除する人のことまで気遣って行動していたとは。

こちらも驚くべきメンタリティだと思います。

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あのような状況で「後から掃除する人のことを考える」というのは、「想像力」が余程豊かでないと出来ないことです。

そしてそういう「誰かのことを思い遣る想像力」とは、我々能楽の世界においても最も大切なことのひとつなのです。

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日本代表のワールドカップは今回は終わってしまいました。

しかし私を含めて多くの人々が、日本代表に大切なことを色々と教えてもらった気がしております。

地震の影響は…

今日は朝から大山崎稽古でした。

あの6月18日の地震以来の稽古です。

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JR山崎駅を出ると、すぐ前に千利休が建てたという国宝のお茶室「待庵」がありますが、この待庵の壁に地震でひびが入ったと聞いておりました。

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たしかに今朝9時半頃に山崎駅に到着すると、待庵の脇にはすでに作業車が止まっていて、職人さんが何人か待庵に出入りしていました。

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稽古場の宝積寺は大丈夫だっただろうかと心配しながら、いつもの急坂を登って行きました。

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山門に到着すると、仁王様がいつものようにギョロリとした目でお元気に(?)辺りを睨みつけておられます。

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秀吉が一夜で建立したという三重の塔や、本堂の様子も全く変わらず、まずは一安心いたしました。

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稽古場の会員さん達もほとんど被害は無かったようですが、「昨日もまた揺れたね〜」と話しておられて、まだまだ油断は出来ないようでした。

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大山崎稽古を終えて、午後から今度は6月18日の地震の影響で行けなかった伊豆大仁の稽古に向かいました。

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私「先日は地震で来れなくてすみませんでした」

大仁の会員さん「いえいえ。しかしこちらも南海トラフが怖いですよ。。」

確かに、南海トラフ地震はいつ起こってもおかしくないと言われています。

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会員さん「でも結局、怖がってばかりいたら何も出来ないですからね。」

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そうですね。

私も毎日のように東海道を行ったり来たりしているので、地震に遭う可能性はかなり高めだと思います。

しかしこの日本に住んでいる以上、絶対に地震に遭わない土地など存在しないとも言えるのです。

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ナーバスになり過ぎるのもある意味で地震の悪影響かと思いますので、覚悟はしつつもあまり怖がらずに移動生活を続けていこうと思っております。