四柱神社の神道祭

昨日の夕方、私は京都大山崎から移動して松本駅に何とか辿り着きました。

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駅から稽古場に向かう途中に”四柱神社”という大きな神社があります。

その前を通り過ぎようとしたら、境内に提灯が下がっていて、そしてとても沢山の屋台が並んでいます。

境内の方からは演歌歌手の歌声で、何故か「コーヒールンバ」が聴こえて来ました。(昨日10月1日は”コーヒーの日”だったようです)

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稽古時間は迫っていたのですが、ちょっとだけ覗いてみたい!という誘惑に抗えずフラフラと神社に足が向いてしまいました。。

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境内にはノスタルジックな夜店が軒を連ね、ステージの上では演歌歌手が今度は自分の持ち歌を歌い始めて、小ぢんまりした客席には近所のおじいさんやおばあさんが集まっていました。

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なんだか子供の頃にタイムスリップしたような昔ながらのお祭りです。

しみじみと「良いなあ…」と思いつつも、写真を撮る間も無く、お祭りの名前も聞かずに稽古場へと急ぎました。

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そして稽古を始めてすぐに扉が開き、中学生の女の子が元気良くやって来ました。いつもはお母さんと一緒に来る筈が、何故か後ろからもう1人同級生らしい女の子が入って来ます。

「もしかして見学かな?」と思ったら、

「先生!今日は早めに稽古をお願いします!終わって友達と四柱神社のお祭りに行くんです!」

…成る程。さっきのお祭りですね。

地元の子供達もこぞって集まるお祭り。ますます魅力的です。

会員さん達にお祭りの名前を聞いてみました。

四柱神社の”神道祭”という昔から続くお祭りで、松本に秋の訪れを告げる風物詩的なお祭りだそうです。

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小学1年生の男の子も、稽古を終えて一旦「さよなら〜」と帰ってからしばし経って、「金魚獲れた〜❗️」と嬉しそうに戻って来ました。

手にしたビニール袋の中には、小指ほどの金魚が数匹ヒラヒラしています。

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稽古を終えて、もうやっていないだろうと思いながら四柱神社の方に歩いて行くと、なんとまだまだお祭りは続いていました。

しかも夕方よりも遥かに多い人集りです。

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金魚掬いの夜店。さっきの男の子はここで金魚を獲ったのでしょう。

他にも…

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射程や、

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ヨーヨー釣り。

そして…

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昨日も載せたお面屋さん。

お面の中には…

現代風のキャラに混じって、昔ながらの狐のお面や、なんと「般若」と「小面」の姿も!

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松本に何年も通いながら、今回初めて知った”神道祭”。

また松本での毎年の楽しみが増えてしまいました。

綱渡りの1日

昨日は台風から逃げるように、名古屋から東京まで何とか帰りました。

21時半に三ノ輪の自宅に到着した直後から東京も風雨が強くなってきて、本当に間一髪ギリギリセーフの移動でした。

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そして荷物を入れ替えて、今日の予定はというと…

①朝一の新幹線で京都に移動して大山崎稽古。

②午前中に稽古を終えて京都から松本に移動して、夕方から松本稽古。

というものでした。

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ところが、まず①で朝一に東京駅に行ったところ東海道新幹線が始発から止まっておりました。。

線路の安全を確かめる作業中ということで、これはむしろ急かしては申し訳無いことです。

ホーム上の新幹線車内で静かに出発を待ちました。

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結局1時間遅れで東京を出発して、更に途中に徐行運転もあり京都には90分遅れで到着。

そこから大山崎の宝寺に急いで移動して、稽古を何とかすることができました。

10月7日開催の澤風会京都大会前の最後の稽古だったので、稽古出来て本当に良かったです。

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そして次の②の行程では、名古屋からの中央西線の”特急しなの”が運行してくれるのかどうかが最大のネックでした。

大山崎稽古終了段階では運休だったのが、幸いなことに名古屋まで移動してみると13時発から運転再開しておりました。

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一本遅い14時発の”しなの”に乗って名古屋を出発。

途中やはり徐行運転もありましたが、16時半前に無事に松本に到着。

松本稽古もほぼ予定通りの時間に始めることが出来ました。

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松本でも来たる10月21日に「松本澤風会」を開催予定で、それまでに今日を入れて2回を残すだけの稽古日程でした。

こちらも今日もしも稽古出来なければ、困ったことなっていた筈です。

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昨日の名古屋から今日の松本まで、切れそうな細い綱にすがるような移動でした。

しかし綱が何とか持ち堪えてくれたおかげで、とても充実した稽古をすることができたのです。

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「普通に稽古が出来る幸せ」

というものを再認識させていただいた1日でした。

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松本では素晴らしいお祭りに出会ったのですが、またそれは次の機会に。

また台風が…

今日は名古屋能楽堂にて開催された、「和久荘太郎演能空間」の舞台に出演して参りました。

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能「天鼓 盤渉」を始め、家元の仕舞「熊坂」や満次郎師の独吟「西浜八景」など盛りだくさんの内容でした。

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生憎台風24号が近づいており、主催の和久さんはさぞかし神経をすり減らす思いをされたことと思います。

しかし、舞台は気合いの入った素晴らしいものでした。

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京大宝生会からも何人か観に来る予定と聞いていましたが、台風で来れないかも…と心配しておりました。

しかし流石というかやはりというか、全員が予定通り観に来ていました。

舞台終了時点で名古屋から出る電車が軒並み運休している中、彼らはどうやって帰るのでしょうか…。

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かく言う私も新幹線が運休で東京に帰るのが絶望的だったのですが、何とか車で名古屋を脱出しました。

途中強い横風が吹き付けてきましたが、何とか無事に21時過ぎに東京に到着いたしました。

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今年は本当に何度も何度も台風に苦しめられます。

今回の台風の被害が出来るだけ少ないことを祈るばかりです。

ランナーズ・ハイ

昔高校の時に、陸上部の中長距離をやっておりました。

放課後の練習で遠くの公園まで”アップ”と称するジョギングをする時。

走り始めは、まだ身体が暖まっておらずにすぐに息切れをしてしまいました。

しかし、数分走っていると不思議に気持ちが高揚して来て、「ようし、今日ももっと走り込むぞ!」と前向きな気持ちになったものです。

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後日それは”ランナーズハイ”と言って、科学的に検証されている現象だと知りました。

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そして時は流れて、本日香里能楽堂にて開催された「京阪神巽会」でのお話です。

番組の関係で、私は午前中から午後にかけてしばらくの間、切れ目なくずっと舞台で地謡を謡っておりました。

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最初の1時間が経過した頃には、「足が痺れて立てないかも…」と思い、次の1時間では「もう無理!足が痛くて座れん〜!」と若干泣きそうになりました。

しかし、その後の時間帯になると不思議なことが起きました。

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「足、なんだか痛くなくなって来た。」

「頭がクリアになって来て、まだまだいくらでも謡える気がする…!」

と、何故かとても前向きな気持ちになって来てしまったのです。

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まだ誰も実験実証はしていない筈なのですが、”ランナーズハイ”と同様に”謡・ハイ”というのも存在すると思われます。

今日は”謡・ハイ”のおかげで何とか京阪神巽会を無事に謡終えることができました。

明日はまた名古屋での和久荘太郎さんの演能空間で”謡・ハイ”になるくらい頑張って謡って参りたいと思います。

自転車操業中です…

今日は朝東京を出て、10時半頃には京都丹波橋にて紫明荘組稽古を開始。

夕方終えて京大に移動して、先ほどまで稽古しました。

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紫明荘組と京大の合間には、新しい稽古場候補のとても良い感じの古民家ゲストハウスを見学したりもしました。

その辺の話を詳しく書きたいところなのですが、明日は朝から香里能楽堂にて京阪神巽会、明後日には名古屋で和久荘太郎さんの”演能空間”の舞台が控えていて、若干追い詰められている状況です。

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今日はこれにて失礼させていただき、小本と睨めっこして謡の世界に突入して参りたいと思います。。

傘がない…!

今日は午前中から江古田稽古でした。

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時間は遡って昨日の夜。

大槻能楽堂にて大阪養成会が無事に終了したのが20時40分頃でした。

そして東京行きの最終新幹線が新大阪を21時23分発。

私は20時50分には紋付袴のままで呼んでおいたタクシーに乗り込み、新大阪を目指しました。

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幸いに道は流れており、21時10分に新大阪駅に到着。

何とか最終新幹線に乗ることに成功しました。

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新幹線が静岡県にさしかかる頃から、窓を叩く雨が強くなってきました。

「これは傘が役に立たない程の降りだな…」

と思ったところで、傘をタクシーに忘れたことに気がつきました。。

この雨の中、傘無しでしかも今日は紋付袴の格好です。普通に帰ったら酷いことになってしまいます。

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ウームと考えて、「そう言えば、日暮里駅のタクシー乗り場は日暮里舎人ライナーの高架下にあって、雨が防げたはずだ!」と思い出しました。

さっき大阪でもタクシーに乗ったばかりで、非常に心苦しくはありましたが、紋付袴を無駄にするよりはマシです。

山手線で日暮里に向かい、屋根のあるタクシー乗り場から濡れずにタクシーに乗り込み、自宅マンションの前まで着けてもらって何とか無事に帰宅したのが午前0時半でした。

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色々ありましたが、昨日自宅まで帰れたおかげで今日は万全の状態で江古田稽古を1日頑張れました。

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実は明日は午前中から京都で紫明荘組の稽古なのです。

折角苦労して帰って来ましたが、明日はまた頑張って早起きして関西に向かいたいと思います。

大人の能楽師を目指して

今日は夜に大阪の大槻能楽堂にて、「大阪養成会」の舞台に出演して参りました。

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宝生流の演目は能「経政」で、シテは石黒空君でした。

空君は、数年前に私が大阪若手能にて能「百万」を勤めた時には子方をしてくれました。

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それがもう高校3年生になって、初めて面を掛けてシテとして舞台に立ったのです。

時の流れの早さを感じてしまいます。。

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現代の高校生というのは、学校だけでも相当に忙しいはずです。

彼はその学校と平行して、”大人の能楽師”を目指す為の修行をしている訳です。

それは子方時代の稽古とは比較にならない程の非常に厳しい修行であり、生半可な覚悟では出来ないことだと思います。

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しかし、満次郎師から指導を受ける空君を見ていると、何かご注意をいただく度に「ハイッ!」と何とも力強くきっぱりとした返事をしていて、直向きな姿勢を好もしく感じました。

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これからしばらくの間は、今よりも更に厳しい修行期間が続くと思います。

その修行を経て彼が”大人の能楽師”になる時を、期待して待ちたいと思います。

緊張感MAX

今日は大阪の香里能楽堂にて、第13回澤風会京都大会の申合がありました。

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今回は舞囃子「忠度」、「玉葛」、「草紙洗」、そして能「小袖曽我」が出るので、シテと地謡を合わせて10数名の方々が参加されました。

初めての舞囃子の方、初めて能装束を着る方なども多くいらして、皆さん緊張感MAXという感じでした。

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私のこれまでの稽古の方針としては、申合で色々と注意点をチェックして、申合から本番までの間にそれらを修正、そして本番では基本的に何も手出し口出しはしないことにしております。

つまり、私自身としても実は申合の時が一番緊張して舞台を見ているのです。

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今日もまた五感をフルに使って、チェックポイントを色々と探しておりました。

その甲斐あって、実りの多い有意義な申合になったと思います。

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毎回のことですが、ここから本番までが最も集中力が高まる期間になります。

今日申合を頑張った皆様は、どうか本番までもうひと頑張りしていただいて、最高の舞台を作っていただきたいと思っております。

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もちろん私も、ここから更に気合いを入れて稽古させていただきます。

会員の皆様、どうか本番までよろしくお願いいたします。

一杯のワインの物語

今日は松本稽古でした。

しかし、偶々お仕事や体調不良やご家族の付き添いなどが重なり、稽古にいらしたのは4人で、早めに終わってしまいました。

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稽古場を出て松本駅に向かう帰り道に、会員さんのイタリア料理店”クチーナにしむら”があります。

連休中の今日はもちろん営業されていました。

忙しそうだなと思って通り過ぎようとしたら、これも偶々お客様が入っていかれる所で、

「いらっしゃいませ!あ、先生も、いらっしゃいませ!!」

と私を見つけて声をかけていただきました。

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そこでついつい、「いえ、実は18時半の電車に乗るのですが…では、一杯だけいただきます。」

と席についてしまいました。

時間はまだ30分ほどあったのです。

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お任せで出していただいた一杯の赤ワイン。

ワインの知識の無い私は、「美味しい!」

という感想しか述べられないのです。。

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しかしそこで会員さんから、このワインに纏わる物語を聞かせていただきました。

このワインを作った方がつい最近若くして亡くなられたこと。

でもお嬢さんが跡を継いでいるということ。

会員さん御夫婦は、この方のワインに出会ってからお店のワインの方向性が定まったのだということ…

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そのお話を伺ってから飲むと、ワインの味が違って感じられました。

色々な歴史や人生が関わり合って、私の前にこの一杯のワインがあるのです。

何だかこのワインを飲んだら無くなってしまうのが勿体ないような気持ちになりました。

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その旨を会員さんに伝えたところ、

「それがワインですから。」

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成る程。

さっき素通りしていたら全く知らなかった筈のワインと、そこに内在する物語を、会員さんのおかげで体感することが出来ました。

あの一杯のワインとは一期一会ですが、”クチーナにしむら”さんにお邪魔すれば、また違うワインの物語と出会えるのでしょう。

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何か能楽にも通じる大切なことを教わった気がして、感謝してお店を出ました。

そして今、特急の窓からは中秋の名月が見えています。

今日も記憶に残る松本稽古になりました。

都庁前広場にての”東京大薪能”

昨日の熱海サンビーチから一転して、今日は東京のど真ん中、新宿の都庁前広場にて開催された”東京大薪能”に出演して参りました。

舞台の背後には巨大な東京都庁が聳え立ち、また前にも左右にも高層ビルが並ぶ、まさに”ビルの谷間”での薪能でした。

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未来世界のようなビル群に響き渡る謡と囃子。

昨日の熱海のように自然を感じながらの舞台は良いものですが、今日のようなシチュエーションもまた不思議に心地よい高揚感を感じました。

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今回の薪能には4000人以上のお客様がいらしてくださったようです。

能楽の普及という意味でも大きな意義のある催しだと思いました。

短いですが本日はこれにて。