涌宝会申合に行ってまいりました

今日は神楽坂の矢来能楽堂にて、6月2日(日)に開催される「東京涌宝会大会」の申合に行ってまいりました。

毎年ながら盛大な御会で、舞囃子16番、能「猩々」、他にも居囃子、独調、仕舞、素謡などが演じられます。

また会主の和久荘太郎さんのご長男凜太郎君も、今回は舞囃子の地謡に入っていて、初めて隣で地謡を謡いました。

生まれた時から知っている若者と一緒に謡うのは中々感慨深いものがあります。

朝10時から夜18時15分までの盛り沢山な舞台、「東京涌宝会大会」

明後日6月2日、矢来能楽堂にて開催されます。

皆様どうかふるってご来場くださいませ。

構えた時の”爪先”

今日は江古田稽古でした。

夕方に仕舞稽古にいらした方は、前回まで「桜川」、今日から新しく「岩船」の仕舞を始める事になっていました。

稽古を始めようとすると、その会員さんから、

「岩船のような強い曲は、構えは爪先を開いた方が良いのでしょうか?」

と質問されたのです。

半ば好みの問題かもしれないのですが、私は「爪先を開いて構える」というのはしないようにしています。

“柔らかい”仕舞では足を揃え気味で、”荒い”仕舞では腰を深く入れてやや足を開いて構えます。

しかしどちらも両足は平行にして、爪先は開かないように意識して構えているのです。

腰を入れて力を込めて構えた結果、少し爪先が開いて見えるくらいは良いと思います。

でも開き過ぎると”ガニ股”になって、見た目が美しく無い気がします。

「鬘桶」に座っている時も同様で、足先は常に平行になるように気をつけております。

ただ古い舞台写真などを見ると、明確に爪先を開いて構えているものがあるので、やはり個人の考え方や、時代によっても構えは微妙に変わるのかもしれません。

3日分歩きました

普段から歩ける限りは徒歩で移動するのを心がけています。

今はちょうど暑くも寒くもないので、歩くには絶好の季節です。

しかし一昨日の松本、昨日の青森と強い雨に降られてほとんど歩けませんでした。。

今朝は青森の宿を出ると雨が止んでいたので、3日分を取り戻そうと、思い切って青森駅から新青森駅まで歩いてみました。

およそ1時間の距離です。

新青森から仙台に移動して、仙台駅から稽古場の東北大学近くの公民館までも往復歩いたので、月曜火曜を足したよりも長く歩けて大満足でした。

途中で紫色の綺麗な花を見かけて、ラベンダーかと思って調べたらどうも違うようでした。

人の家のお庭に咲いていたので写真も撮れず…

色々調べて近そうなのが、

「セイヨウジュウニヒトエ」

という花でした。

確かに紫色の派手な見た目は、「十二単衣」を西洋風にした感じでした。

今度見かけたら何とか写真を撮ってみたいものです。

明日からは暫し東京なので、初夏の都内をどんどん歩こうと思います。

「ほおり」と「ホーリー」

昔「井筒」の謡を初めて辰巳孝先生に稽古していただいた時の事です。

シテ謡の出だし「暁ごとの閼伽の水」

で、「閼伽(あか)」はなんの事か知ってるかい?

と先生に聞かれたのです。

もちろん当時は知らず、「いえ、わかりません」と即答しました。

すると先生は、

「閼伽は元々は”アクア”と同じ語源だよ。だから”閼伽の水”というのは本当はおかしいんだ。”水の水”になってしまうからね」

と仰いました。

謡本の中の言葉とラテン語が同じ語源とは新鮮な驚きでした。

その後も「鳥居」の語源がストーンヘンジの三角柱”トリリトン”であるという説を歴史ミステリーの本で読んだりしました。

今では、意外な語源に繋がっていそうな日本語を見つけると、つい色々と語源を想像して楽しんでしまいます。

今日これを書いたのは、昨日松本稽古場で「三輪」の謡稽古をした時に、やはりそんな言葉があったからです。

「三輪」後場の最初の地謡に、

「ただ祝子が着すなる」

という言葉が出てきます。

“祝子”は”ほおりこ”と読み、「神職」を意味するそうです。

そして「holy」という英語は、名詞だと「聖人、聖者」を意味するのです。

“ほうり”と”ホーリー”

もちろん全く関係ない言葉なのでしょうけれど、響きと意味がこれほど似ていると、もしかしたら同じ語源かも…

あるいは、「神聖なる存在」を「ホーリ」と呼びたくなる、何らかの理由があるのだろうか…

などと想像して、ひとり楽しい気分になってしまうのです。

山々に守られて

今日は雨のパラつき出した東京を昼過ぎに出て、特急あずさで松本稽古に向かいました。

下諏訪あたりまでは降ったり止んだりだったのですが、トンネルをひとつ抜けて松本盆地に入ると雨は上がっていました。

水の入った田圃に空の薄青色が写って、瑞々しい初夏の風情があります。

松本は山に囲まれているので、雨も雪もその山々に遮られて、ひどくは降らないのです。

数年前の「松本城薪能」でも、台風の接近で舞台中止かと思いきや、ギリギリで天候が持って能「鵺」をなんとか舞えた記憶があります。

実は今年も8月8日に「松本城薪能」が開催予定です。

宝生和英御宗家がシテを勤められる能「紅葉狩」と、私がシテを勤めさせていただく能「経政」が出ます。

今回も天気だけが心配ですが、松本盆地を囲む山々に守ってもらい、なんとか舞いたいと思います。

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第17回関西宝生流学生能楽連盟自演会が開催されました

今日は香里能楽堂にて「第17回関西宝生流学生能楽連盟自演会」が開催されました。

各学校とも稽古の成果を存分に出し切った熱い舞台でした。

天候にも恵まれて、見所には関西宝連各校のOBOGの姿も多数見られて、一日中賑やかな雰囲気でした。

私が見て「これは素晴らしい…!」と感心する舞台がいくつもあり、やはり先生方の確かな稽古が根付いているのだと嬉しくなりました。

先日書かせていただきました京都女子大宝生会の久々の新入生は、「鶴亀」の仕舞を完璧に舞っていて、これまた嬉しい驚きでした。

明らかにセンスの良さが光っていて、今後がとても楽しみです。

京大宝生会の仕舞と謡も普段稽古で見ているよりも本番の方が出来が良く、この調子で全宝連も頑張ってほしいです。

後席の締めには「千秋楽」の謡を皆で謡い、今頃は二次会で盛り上がっている学校もあるかと思います。

次はいよいよ6月29.30日に京都金剛能楽堂にて開催の「全国宝生流学生能楽連盟自演会」です。

ホスト支部としてこれから色々とやる事が増えますが、全国の皆さんと京都で楽しく交流できるように学生も能楽師も一体となって準備を進めて行きたいと思います。

本物の松尾芭蕉はどれ…?

松尾芭蕉が「奥の細道」の旅へと出発したのは、元禄2年3月27日、新暦に直すと1689年5月16日のことです。

つまり今月は芭蕉が奥の細道へと旅立った月でもあるのです。

そしてその出発地点は私の東京三ノ輪の自宅から程近く、辺りの日光街道沿いには「松尾芭蕉」の像や絵が幾つも点在しています。

以前からそれらの像の横を通る度に思っていたのが、

「どれが本物の松尾芭蕉に一番似ているのだろうか」

ということでした。

何しろそれぞれの像が全く違う個性を持っているのです。

例えば、南千住駅前の銅像はこんな感じ。

そして北千住に近い旧日光街道沿いの木像は、

こんな感じです。

この2つはまだヒョロリと痩せている所など共通点が多いのですが、足立市場近くの石像は…

ふっくらして全然違うイメージです。

この石像が旅立ちの時点で、旅を続けていくうちに痩せていったとか…?

そして隅田川にかかる「千住大橋」の下には、芭蕉が船から上がっていよいよ奥の細道に出発する時の絵が描いてありました。

これまた先ほどの3体の像とはちょっと異なる風貌です。

しかしこの絵、実は松尾芭蕉を敬愛して奥の細道を実際に辿って旅をしたという「与謝蕪村」が描いた芭蕉の肖像なのです。

芭蕉と蕪村は時代も近いし、これはこの絵の「芭蕉」が一番本物に近いのかも…と思いました。

新作能「松尾芭蕉」ができたとしたら、どんな能面が似合うのでしょうかね…?

免許更新に行って参りました

今月は誕生月で、5年ぶりに免許更新に行って参りました。

内弟子を出てから運転することがめっきり減っております。

今では1年のうちで松本澤風会翌日の観光ドライブだけしか運転しない年があるくらいです。

以前は江東運転免許試験場に更新に行って、かなり時間がかかったと記憶しています。

しかし前回から近所の下谷警察署で更新できるようになり、また今回から事前予約制になったので待ち時間がほぼ無くなりました。

14時10分からの予約で、視力検査、写真撮影、講習など諸々終えて新しい免許を受け取るまでに1時間もかかりませんでした。

講習の時には講師の方から、

「5年後の講習はおそらくウェブ講習になるので、こうやって皆さんで映像をみるのは最後だと思います」

と言われて、こういう風に時間が短縮されていくのは大変良い事だと思いました。

運転回数は減りましたが、5年後もゴールド免許で更新できるように安全運転を心掛けて参ります。

大仁稽古場への坂道

今日は伊豆の大仁稽古でした。

大仁稽古場へは、伊豆箱根鉄道の「田京」という駅を降りて、東へ向かって山を登って行きます。

中々の急坂です。

途中で振り返ると…

伊豆長岡の「葛城山」が見えます。

ロープウェイもあるこの山は、御釈迦様が寝ているようにも見える事から「寝釈迦山」とも呼ばれるとか。

坂道自体は車道ですが、道の両側は緑に覆われており、鶯の囀りや蛙の合唱を聴きながら登っていくのは「放下僧クセ」のような風情でとても良い気分です。

遠くには薄っすらと富士山の影も見えます。

この急坂を10分程登ると稽古場の公民館があります。

急坂の先の稽古場と言えば「大山崎稽古場」の「宝寺」に向かう坂道が思い出されます。

(2017年2月20日のブログにこの坂道の事を詳しく書きました)

しかし実は宝寺は現在本堂などの改修工事中で、もう1年以上あの長くて急な坂道を登っていないのです。

何かちょっと寂しい気がして、早くまたあの急坂を登って大山崎稽古に行きたいと願っております。

第17回関西宝連のお知らせ

来る5月26日(日)13時より香里能楽堂にて、

「第17回関西宝生流学生能楽連盟自演会」

が開催されます。

これは「第17回阪神宝生流学生能楽連盟自演会」と、

「第129回京都宝生流学生能楽連盟自演会」

を合わせた催しです。

今年は各学校とも新入生が入ってくれたようで、新しい顔ぶれをたくさん見ることができそうです。

なにより大きなニュースがあります。

「京都女子大学宝生会」

が3年ぶりに新入生を迎えて復活したのです。

この4月の新歓イベントで石黒実都師とOGが力をあわせて仕舞を出した結果、その舞台に心を動かされた新入生が入部したいと言ってくれたそうなのです。

しかも聞けばとても真面目で稽古熱心な新入生だそうです。

過去に何度も能を出した事もあり、歴史ある「京都女子大学宝生会」を、何とかまた盛り上げていってほしいです。

京大宝生会も新入生がシテワキを勤める素謡「鶴亀」などが出るので、今週はきっと毎日空き時間に稽古している事でしょう。

もちろん上回生の舞台や、最後には指導する能楽師の番外仕舞もあります。

皆様香里能楽堂にて5月26日(日)13時開演の「関西宝連」に是非ご来場くださいませ。

よろしくお願いいたします。