自分の周りを平和にすること

今日は朝に松本を出て、江古田稽古に直行して夜まで稽古いたしました。

東京も猛暑でしたが、昼からたくさんの方にいらしていただきました。

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眼の手術をされてお休みだった会員さんより、手術が無事終了したとのメールをいただき安堵しました。

小学生の男の子は、頑張って稽古した後に、西武ドームでナイター観戦があると勇んで帰っていきました。

最後に母親と、芸大生を稽古して1日が終わりました。

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小さな出来事を積み重ねて、今日という日を私はいつも通りに過ごすことができました。

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74年前の今朝、母親の家族達も広島でそれぞれの生活をいつも通りに過ごしていたのです。

私がこの世にいる間は、そういう家族の暮らしが確かにあったこと、そしてそれが一瞬で消えてしまったことを忘れないでいようと思います。

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今朝特急あずさの車内で見た携帯ニュースの、広島の小学生達の「平和への誓い」に心が動きました。

「自分の周りを平和にすることは、私たち子供にもできることです」

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もしかしたら、綺麗事だと言う人もいるかもしれません。

しかし私はこの子供達のような考え方に深く共感するのです。

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私の周りの縁あって知り合った方々と、私はこの先も小さな日常を、平和に穏やかに積み重ねていきたいと改めて強く思いました。

永平寺からの嬉しいお土産話

今日は松本稽古でした。

松本駅に到着して気温計を見ると…

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私が松本で経験する最高気温である「40℃」を示していました。。

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その猛暑の中でも、10数人の皆さまにいらしていただき、新しく作った袴を披露された方もあり、夜まで賑やかな松本稽古場でした。

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色々話題はあるのですが、個人的に一番嬉しい出来事がありました

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小学2年生の男の子とお母さんが、最近福井に家族旅行に行って来たらしく、そのお土産を持って来てくれました。

その時に…

私「永平寺で”彼”に会われたのですか?」

お母さん「はい!会えたのですよ!」

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“彼”とは、京大宝生会OBのT君です。

去年7月1日の「永平寺の修行僧」というブログに書いた人で、2018年冬からずっと永平寺で修行生活を送っているのです。

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前回稽古で男の子とお母さんの福井家族旅行計画の話を聞いて、ダメ元で、

「永平寺にいらしたら、受付でお願いしたらT君に会えるかもしれません。もし会えたらくれぐれもよろしく伝えてください…」

と頼んであったのです。

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私「T君大丈夫でしたか?」

お母さん「はい、顔色ツヤツヤして元気そうでした!」

おお!それは良かったです。

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お母さん「この子に、”今何の仕舞を稽古してるの?”と聞いてくださって」

私「ほうほう」

お母さん「”加茂です”と答えたら、笑って”ああ、ホロホロ〜だね〜!”と言ってくださいました」

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元気そうで、仕舞の話までしてくれたと聞いて、心から安心して嬉しく思ったのでした。

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まだまだ続く辛い修行生活です。

私自身も北陸に行く時には、また彼に一目会いに永平寺に行きたいと思います。

東京五輪に向けたプレイベント

今日は国立能楽堂にて、2020東京オリンピック・パラリンピックに向けたプレイベント「ESSENCE能」に出演して参りました。

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今から55年前の前回の東京五輪の時には、10日間にわたる大規模な能楽公演があったそうです。

そして来年の2020東京五輪期間中には、なんと合計12日間にわたって”史上最大規模”の能楽公演が企画されていると伺っております。

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スポーツの祭典であるオリンピックに向けて、来年は全世界から物凄い数の人々が日本にやって来ることでしょう。

せっかく日本で開催されるのですから、その方々にスポーツだけでなく日本の伝統文化も味わっていただくというのは、とても大事なことだと思います。

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私は残念ながら今後の人生においても、五輪競技に選手として参加することは出来そうにありません。

しかし能楽師として、来年の五輪期間中に日本全体を盛り上げるためのお手伝いが少しでも出来るならば、それは有り難く嬉しいことです。

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今日はその来年のためのプレイベントに参加させていただき、大変意義深い1日になりました。

そして遠い先だと思っていた東京オリンピック・パラリンピックが、今日1日の体験でなんだか目前のことのように思えてきたのでした。

聞く心

今日は予定の稽古がキャンセルになり、ポッカリと休みになりました。

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夕方に三ノ輪の自宅から外に出ると、京都よりはだいぶ過ごしやすい気温です。

「東京で蝉の声をまだ聴いていない気がする」と思って散歩に出たのですが、大通りから裏道に入ると、近所の寺や社の小さな森から湧き立つような蝉の声が賑やかに聴こえてきました。

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やはり最近少々忙しかったので、私の耳に入っていなかっただけのようです。

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「音を聴く」

という行為は、いくつかの能の曲において、非常に重要なシーンで使われます。

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例えば能「小督」のいわゆる「駒之段」ではシテ源仲国が、

「峰の嵐か松風か それかあらぬか 尋ぬる人の琴の音か…」

と小督の局の琴の音を探して耳を澄まします。

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また能「砧」では、

「砧の音 夜嵐 悲しみの声 虫の音。交じりて落つる露涙。ほろほろ。はらはらはら…」

と、周囲全ての音が渾然一体となり、独り残された妻の痛切な悲しみとして表現されています。

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他にも能「班女」においては、シテ花子が、

「秋風は吹けども 荻の葉のそよとの便りも聞かで。鹿の声 虫の音も 枯れ枯れの契り。あら よしなや…」

と恋人からの音信が絶えてしまったことを自然の音に喩えて嘆き悲しみます。

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上記のシーンでは、シテはいずれも「聞く心」という型をします。

ある切実な思いを持って「音」に耳を澄ませる様子を表現する型です。

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機械音や人工音に囲まれた現代ですが、東京都心であっても蝉の声や鳥の声、場所によっては蛙の鳴き声を聴くこともあります。

「聞く心」を出来るだけ忘れないでいたいものだと、今日近所で蝉時雨を聴きながらしみじみと思ったのでした。

猛暑とゲリラ豪雨

今日は午前中から京都丹波橋にて紫明荘組稽古、夕方に京大に移動して夜まで稽古でした。

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紫明荘組稽古は今日は10人で、能「羽衣」を始め舞囃子、仕舞、独吟、素謡など、9月21日開催の「澤風会大会」に向けた稽古をいたしました。

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京大宝生会は、大学院試や帰省でお休みの人をのぞいたやはり10人ほどが来てくれました。

それぞれ仕舞を稽古した後に、能「竹生島」の地謡の稽古などをしました。

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特別な出来事が無くて、淡々と真面目に稽古して終わる1日もあります。

今日はそんな日だったのですが、特筆することがあるとしたら「暑さ」と「ゲリラ豪雨」でしょうか。

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丹波橋から京大までは、通常ならば京阪電車一本で「神宮丸太町」で下車して、歩いて10分で到着します。

ところが今日の京都は最高気温39℃。

京阪電車を待つホームでの僅か3分ほどで、あまりの暑さに心身ともに疲弊してしまいました。。

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結局電車で終点の「出町柳」まで行き、そこから市バスで京大BOX近くまで戻るというやや贅沢な方法をとりました。

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そしてBOX舞台で稽古を始めて終盤に差し掛かった頃、今度はスマホに「京都市に大雨警報」の緊急速報が入りました。

BOXは地下なので外の様子がわからないのですが、雨雲レーダーで見ると確かに強い雨の赤い表示がちょうど左京区上空辺りにかかっています。

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最後にやって来た部員は、かわいそうにその雨に降られてしまったようで、カバンがびしょ濡れになっていました。

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この京都の「猛暑」と「にわか雨」は、おそらく9月くらいまでずっと続くのでしょう。

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この先ひと月ほどは、体調管理に気をつけて何とか夏を乗り切っていきたいと思います。

2019吉備津神社子供能楽教室・開講式

今日は岡山の吉備津神社にて、子供能楽教室の開講式に出席して参りました。

この能楽教室は、去年が初開催で今回が2回目になります。

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午前中に岡山駅で家元始め何人かの楽師と待ち合わせました。

駅前の噴水が涼しげですが、実際はとても暑いです。。

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そして2両編成の「桃太郎線」に乗ってガタゴトと吉備津へ向かいました。

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車両の内装。車窓から見える風景。

無人の吉備津駅から神社までの松並木の参道。その脇に広がる長閑な田園風景。

そしてジリジリと灼かれるような暑さ。

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全てが1年前と全く変わっておらず、非常な既視感を覚えました。

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吉備津神社に到着しました。

いわゆる「吉備津造」の壮麗な本殿ももちろん去年のままです。

その向かって右側には、子供達が仕舞と謡を奉納する舞台にもなる「拝殿」が見えます。

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殆ど全てが変わらない中で、唯一去年と違っていたのが他ならぬ「子供達」でした。

人数が倍増していたのです。

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その増え方も、

「去年お姉ちゃんの稽古を見てやりたくなった妹さん」

「去年妹さんの舞台を見てやりたくなったお姉ちゃん」

というケースが多く、去年の教室を頑張った甲斐があったと嬉しく思いました。

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リピーターも多くて、去年見た顔とたくさん再会出来たのもまた有り難く嬉しいことでした。

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これから8月の1ヶ月をかけて、それぞれが仕舞1番と、謡「高砂 千秋楽」を稽古していきます。

今年の教室がまた来年にも繋がっていくように、一層頑張って稽古して参りたいと思います。

驚くべき子供達

今日は早朝に東京を発って、「枚方市子供向け能楽体験教室」に行って参りました。

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社会人向け教室には2回程稽古に行きましたが、子供向け教室の稽古は今日が初めてです。

小学校低学年の子供もたくさんいるようで、果たしてどんな稽古になるのか少々ドキドキしながら会場に向かいました。

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朝10時前に会場に到着すると、もう何人かの子供達と親御さんが集まっていました。

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1人ずつ、「鶴亀」「西王母」「高砂」…と稽古して行きましたが、なんと驚くことに稽古3回目にして型は一通りできており、シテ謡もひとりで謡える子供ばかりだったのです。

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自分の順番を待つ間に、スマホの映像を見ながら仕舞を自主練している小さな子供を見て舌を巻きました。

この子達はどうやら、大学生や大人にも負けない程の潜在能力を持った子供達のようです。

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午前中の3時間で18人、休憩を挟んで午後もほぼ同じ数の子供を稽古しました。

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中には”ガキ大将”のようなキャラの子もいたのですが、シテ謡を謡う時は甲高い声で

「スーナーワーチー スーガーターヲー アーラーワーシーテー!」

と健気に謡うので思わず微笑んで「よしよし!」と頷いてしまいました。

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考えてみれば、澤風会で何人かの子供達を稽古して来ましたが、まとめて30数人を稽古するのは全く初めての経験でした。

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しかし、一人ひとりが真面目にきちんと稽古してくれるので、人数の割には疲労感は無く、大変充実した気持ちで最後まで稽古出来ました。

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まだ本番までには何回も稽古があります。

この子達が最終的にどこまで上手くなってくれるのか楽しみです。

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そしてまた願わくば、来年以降も継続して稽古してくれるとしたら、非常にレベルの高い稽古集団になる事は間違いないと思います。

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将来への夢も膨らむような、嬉しい稽古日になりました。

枚方市のスタッフの皆様、本日も色々と御配慮いただきまして誠にありがとうございました。

隙間花壇〜ショートカット〜

昨晩のことですが、三ノ輪の自宅マンション横の「隙間花壇」の前を通りかかると、夜目にもいつもよりスッキリとした外観に見えました。

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今日改めて見に行ったところ…

やはり全体的に葉っぱの量が減って、随分と風通しが良くなっています。

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どうやら「隙間花壇」を管理しているパン屋のご主人が、「紫陽花」の葉の剪定をしたようです。

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地面に近いところまで剪定されており、上から覗いたところで思わず「おお…!」と声を出してしまいました。

7月11日に見た時には「オシロイバナ」の葉に埋もれそうになっていた「ツツジ」。

その「ツツジ」が、地面近くに何株もひっそりと生き残っていたのでした。

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今年は改修工事の影響でツツジの花を見ることは出来ませんでしたが、これならば来春には必ず再び花を咲かせてくれることでしょう。

楽しみがひとつ増えました。

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そして「オシロイバナ」も毎日夕方になると沢山の花が開き、早くも黒い種子をつけているものもありました。

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いよいよ本格的な猛暑が始まりましたが、「隙間花壇」はショートカットにイメージチェンジした人のように、少し軽やかで涼しげに見えたのでした。

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また何か変化があればご報告いたします。

ひらがなテキスト

昨日までの「強者4曲」の小謡本との格闘が一段落して、今日は一転してゆるゆると「ひらがな」と戯れておりました。

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今週から岡山の吉備津神社での「子供能楽教室」が開講します。

その時に使う小学生向けの謡のテキストを、「ひらがな」で作っていたのです。

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例えば「高砂」の千秋楽の謡を、節使いも含めて全部そのまま平仮名変換すると、

「せええんしうらくは たみをなで

まんざいらくには いのちをのおぶうう

あいおいのお まつうかぜ さああっさんの

こえぞお たのしむう さああっさんのお

こええぞ たのしいいむうう」

という感じになります。

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これでもテキストにはなるかもしれませんが、少しでもわかりやすくしたいと思いました。

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「せエエんしうらくは たみなで

まんざいらくには いのちをオぶウ…」

というように、”生み字”といわれる母音はカタカナにしてみました。

更に、強吟は”ハネる”という、音を一瞬だけ高くする技巧が多用されるので、その”ハネる”部分を太字にしました。

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これでちょっと謡いやすくなったのではと思うのです。

「せエエんしうらくは たみなで

まんざいらくには いのちをオぶ

あいおいのまつウかぜ さアアさん

こえオオ たのしむ

さアアさんオ こエぞ たのしイイむウウ」

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…如何でしょうか?

この平仮名で謡ってみて、違和感や改良点があればどうか御指摘くだされば有り難く存じます。

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とりあえずこのテキストをもとに、岡山の子供達に、この夏休みに宝生流の謡を楽しく体験してもらえたらと思っております。

熱海の舞台を終えて

熱海にての能「昭君」と「王昭君」を含む舞台が先ほど無事に終わりました。

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昨日が申合で、その後に大半の能楽師は熱海泊まりでした。

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泊まった宿はプールなども付いたリゾートホテルで、休日を満喫する人々で溢れていました。

それを横目に我々はブツブツと謡を覚えたりしておりましたが、美味しい晩御飯と朝御飯で熱海の味覚は充分に堪能させていただきました。

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ワキ方や囃子方も含めた相部屋だったので、普段あまり聞けないお話をたくさん聞くことが出来て非常に勉強になりました。

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おワキの細かな動作などは、シテ方からは意外に見えないことが多く、それらの微妙な動きに実に多くの意味が隠されていると知りました。

詳細はオフレコなのが残念なのですが…。

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それにしても「昭君」と「王昭君」という今月最大の山場を、なんとか越えることが出来ました。

舞台の途中は、果たして最後まで気力体力が持つのか不安な時間帯もありました。

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しかし最後の「王昭君」が終わると、不思議なことにまだまだ謡い続けられそうな気持ちになっていたのです。

いわゆる”ランナーズハイ”みたいなものでしょうか…?

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明日からはまた通常の稽古の日々に戻ります。

満次郎先生、巽会とあまねく会の皆様、本日は誠にありがとうございました。