彦根城能に出演して参りました

今日は「彦根城能」に出演して参りました。

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彦根城能舞台は江戸時代の寛政12年に作られたという舞台です。

橋掛りがかなり斜めに付いているのも、歴史ある能舞台の特徴なのです。

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今日の能「望月」の子方は、フルサイズの”羯鼓”の舞があるなど色々と難しい役です。

今回勤めた男の子は、非常に気合いの入った良い演技でした。

聞けばお父さんとお兄さんも以前に「望月」の子方を勤められたそうで、きっとこの役には期する所があったのでしょう。

舞台を無事に終えた男の子は、ひとつ大人になった良い顔をしていました。

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「望月」の地謡座に座っていると、途中でなんだか袴に入れた手が非常に痒くなってきました。。

目だけを動かして辺りを見ると、なんと沢山の蚊が飛んでいます…。

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地謡座では動けないので、「耐えるしかないか…」と思ったところで、ふと気がつくことがありました。

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能「望月」の舞台は”近州守山の宿”で、この彦根からも比較的近い場所です。

そして”近州守山”とは、古来「蚊の産地」として知られているのです。

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「人間ほどもある蚊がいる」という伝説もあって、そんな人間大の蚊が出てくる「蚊相撲」という狂言もあるくらいです。

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なので、

「歴史ある舞台の上で、名高い名所の蚊に刺されるのもまたひとつの思い出になるか…」

と痒さを我慢して地謡に没頭していったのでした。。

懐かしい「藝祭」

今日は午前に水道橋宝生能楽堂での「月並能」の申合にて能「鵺」の地謡を勤めました。

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終わって大阪に移動して、これから明日の彦根城能の申合があります。

こちらは能「望月」の地謡です。

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一方で今日から東京上野の東京藝術大学では、通称「藝祭」と呼ばれる学園祭が始まっているはずです。

私が教えている1年生の青年は、今日午後の能楽専攻の発表会の舞台を終えた頃と思われます。

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藝祭は私が在学中の頃も大変な盛り上がりでした。

音楽学部邦楽科では、「葵」という出店を出して、焼き鳥やビールを売っていました。

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能楽専攻の学生達も、店長や焼き鳥係、会計など色々な役を割り振って、慣れない接客業を頑張ったものです。

講師の先生方も入れ替わりでいらして、無礼講で盛り上がったのが懐かしいです。

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藝祭は明後日日曜日まで開催されているそうです。

能楽専攻の舞台は終わっていますが、「葵」はやっているはずです。

また、藝術大学ならではの見応えのある学園祭です。東京近郊の皆さま、よろしければ覗いてみてくださいませ。

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また関西近郊の皆さまは、明日土曜日は是非「彦根城能」

にご来場くださいませ。

彦根城博物館能舞台にて、16時開場16時半開演です。

どうかよろしくお願いいたします。

自分でおさらいをする時間

今日は江古田稽古でした。

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最初にいらした方は、今度の澤風会京都大会で仕舞を舞ってくださいます。

「それでは仕舞稽古しましょうか」

と稽古を始めようとするとその方が、

「昨日の今日でおさらいが出来ていないのです…。」と仰いました。

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確かにその方は、昨日も稽古いらしていただいたのでした。

それならばと思い、

「では次の人の謡を先に稽古しますので、その間舞台を自由に使っておさらいなさってください」

と申し上げました。

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20分ほど謡の稽古をしてから、再び

「それでは仕舞稽古しましょう」

と言って稽古を始めると、おさらいの効果覿面で昨日よりも大変良くなっていました。

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やはり稽古場に来ていきなり稽古に入るよりも、ご自分でおさらいをする時間を少しとった方が良いようです。

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これは京大宝生会の稽古でも実践しています。

部員は授業が終わった人から順々にBOXにやって来ます。

なので、何人か新しい部員が来たところで、

「今から10分くらい、自由に舞台を使って稽古して」

と言って、私は一休みするようにしているのです。

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後から来た部員が摺り足から稽古を始めて、自分の仕舞を一通りおさらい出来た頃合を見計らって、

「ではそろそろ稽古再開します!」

と声をかけるのです。

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京大の場合、後から来た部員のおさらいの意味に加えて、稽古が終わった部員が注意された箇所を早速復習する時間にもなるのです。

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時間の都合で難しい時もあるのですが、私はこの「自分でおさらいをする時間」というのを大切にしたいと思っております。

合宿明けなのに…

今日は午後に江古田の個人稽古、その後田町稽古に移動しました。

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田町稽古場では、田町の会員さん達と並んで自治医科大学の青年が座って待っていました。

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彼とは一昨日の朝まで京大合宿で一緒にいたのです。

「合宿その後無事に終わったの?」

と聞いてみると…

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「はい!無事に終わりました」

謡い納めも滞りなく…?

「はい!14時頃まで謡っていました」

それはお疲れ様でした。

「その後BOXに戻って、稽古しました!」

え?

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確かに一昨日は月曜日で、夕方から宝生会の稽古日ではありました。しかし4泊5日謡い通し舞い通しの合宿明けです。。

ちょっと稽古して解散したのでしょうか?

「いえ、みんな普通に夜まで稽古していましたね。僕は夜行バスの時間があって20時頃にBOXを出ましたが、まだまだ稽古する感じでした」

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なんと。。

驚きを通り越してちょっと呆然としてしまいました。

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日曜日の晩は、全員の鸚鵡返しが終わったのが確か午前0時半頃でした。

それから打ち上げで、明け方まで起きていた部員もいるはずなのです。

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声も枯れ果て、膝は長時間の正座で限界に来ているに違いない彼らが、更に京大に戻って夜遅くまで稽古とは。

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20年以上稽古していても、京大宝生会のパワフルさには驚かされることばかりです。

このパワーを良い舞台に繋げられるように、私も彼らに負けずに全力でサポートしたいと改めて思いました。

第14回澤風会申合が終わりました

昨日は「松実会申合」でしたが、今日は香里能楽堂にて「第14回澤風会大会」の申合がありました。

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今回の澤風会では、舞囃子「高砂」と能「羽衣」が出るので、その2曲の申合でした。

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舞囃子「高砂」シテの会員さんは、去年宝生流教授嘱託になられて、澤風会で能「小袖曽我」の曽我五郎を勤めた方です。

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そして今回能「羽衣」シテを勤める会員さんは、この度教授嘱託の資格を取られることになりました。

10年ほど前に紫明荘で全くの初心から稽古を始めて、澤風会10周年大会では能「加茂」後シテ、去年の能「小袖曽我」でツレ母と、順調に経験を積んでこられました。

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紫明荘で稽古を始めた人が教授嘱託の資格を取る、というのは亡くなられた植田竜二先輩の望みでもありました。

今回ようやく植田さんにそのご報告ができることになり、大変嬉しく思います。

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先ほどの申合での能「羽衣」は、長く稽古を重ねた甲斐あって、ほぼ完成に近い段階に来ていました。

しかし修正点もいくつか見つかりました。

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本番までにはまだ何回も稽古があるので、更に稽古をして、

「紫明荘で稽古を積んだ人はしっかりしている」

と思ってもらえるように頑張りたいと思います。

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当日は植田先輩も能楽堂のどこかで、ニコニコして舞台を見守っておられることでしょう。

見どころ満載の「絵馬」

今朝は京大合宿から大山崎稽古に直行して、その後夜には大阪の山本能楽堂にて、石黒実都師の「松実会」申合に出演して参りました。

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今回の松実会は「20周年記念・第10回」

という記念大会だそうです。

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記念大会に相応しく、能は「絵馬」というお目出度い曲が出ます。

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この能「絵馬」には、前後で4人のシテとツレが登場して、5つの能面が使われます。

なんとこの5面全てをシテの会員さんが打たれたとのことです。

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そして舞台には、前半は伊勢神宮の社殿、後半は”天の岩戸”として用いられる「宮」の作り物が出されます。

この曲の「宮」は特殊な構造で、観音開きの扉が自動で閉まるように細工されています。

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今回これまたなんと、この複雑な構造の「宮」を、石黒実都師ご自身で手作りされたそうなのです。

今日拝見しましたが、布の張力を上手く利用して扉が自動で閉まるようになっており、その精巧さに驚きました。

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もちろん能面や作り物だけでなく、超絶的スピードの後シテ”神舞”や、後ツレの”神楽相舞”も、この曲ならではの演出です。

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このように見どころ満載の能「絵馬」の他にも、沢山の舞囃子、仕舞、謡などが出る「松実会」です。

9月16日(月・祝)午前10時半より、大阪谷町四丁目の山本能楽堂にて開催されます。

皆さまどうかご来場くださいませ。

いつか舞いたい「八島」

今日も京大宝生会夏合宿で1日稽古いたしました。

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私の仕舞稽古には、先輩と後輩の2人1組が代わる代わるやってきます。

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ある組の時に、4回生の仕舞「八島」の稽古を始めました。

すると見ていた2回生が、型を小さく真似してなぞったり、拍子をとったりしています。

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わかりやすく言うと、「ものすごく舞いたそう」なのです。

とは言え流石に2回生に「八島」は難しかろう…

と思ったところで、あることに気がつきました。

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その2回生は高松出身だったのです。

つまり「八島」は”ご当地ソング”なわけです。

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きっと今すぐではなく、いつか舞いたい曲なのだろうと思い、

「よかったら八島スマホで録画しておいたら?」

と言ってみたところ、

「本当ですか!八島いつかやりたいんです!」

と顔を輝かせて録画しながら熱心に先輩の稽古を見ていました。

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自分の故郷が舞台の曲を舞う、というのも大きな目標になります。

近い将来に、この2回生の「八島」を稽古するのもまた楽しみになりました。

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合宿は明日までです。

22時を回ったこの時間でも、まだまだ宿の各所から謡が聴こえてきます。

今回もいつもながら熱い京大宝生会合宿なのでした。

2019京大宝生会夏合宿

今日は京大宝生会の夏合宿にやってきました。

いつもの大原の民宿で、現役達はBOXでの1日稽古から含めるともう4日目になるそうです。

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就活や院試、また登山や旅行など、各々が自分の夏を過ごした後に、またこの民宿に集まって声を限りに鸚鵡返しをしていました。

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去年よりも1週間遅い日程なので、大原はかなり涼しくなっています。

しかし舞の稽古を始めると、すぐに暑くなってきました。

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今回は何と言っても、能「竹生島」の稽古があるのです。

シテ、前ツレ、後ツレをとりあえず個別に稽古して、合宿の最後に皆で合わせる計画です。

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シテと前ツレは、塩ビ製折りたたみ式の”船”の作り物を使って稽古しました。

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後ツレも船の胴を”宮”に見立てて稽古しようとしたのですが、そこではたと困りました。

“床几”が無いのです。

何かかわりになる椅子は無いか…と、大広間から探しに出た瞬間に、素晴らしいものが目に入りました。

よく食堂で見かける「子供用椅子」です。

作り物の中にピッタリと収まる絶妙な大きさでした。

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更に後ツレが腰掛けると…

「ものすごく落ち着くんですけど…」

確かにこれまた絶妙に、緑色の小さな椅子に収まっています。

この椅子が大広間のすぐ傍にあったのも何かのご縁なのでしょう。

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明日もこれらのアイテムを使って、「竹生島」の稽古を頑張りたいと思います。

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もちろんそれ以外にも、稽古する仕舞や謡が山積しており、今回も非常に充実した合宿になりそうです。

ワールドワイドなパンフレット

今日は岐阜の「長良川薪能」に出演して参りました。

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長良川河川敷にて行われる予定でしたが、残念なことに天候が良くなかったため、市民会館での開催となりました。

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能は家元がシテの「清経」でした。

楽屋に到着して、置いてあったパンフレットを何気なく手に取ってみました。

“当日用”は内容が少し違うこともあるのです。

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能の解説を読もうとして、ふと違和感を感じました。

見慣れない単語が目に入ったのです。

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「あれ?こんな言葉があったのか。或いは東海地方の方言のようなものだろうか…?」

と思って、本文を読み進めようとしたら、今度は何故か文字が全く頭に入って来ません。

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「…疲れているのだろうか?或いは”文字が読めなくなる病気”というのがあったかも…」

と一瞬不安になったのですが、よくよく見ると理由がわかりました。

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そのパンフレットは全ての内容が”中国語”で書かれていたのです。

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その横には、普通の日本語のパンフレットと、更に全て英語のパンフレットも並べてありました。

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ひとつの薪能公演に3カ国語のパンフレットを用意するのは大変なことと思います。

しかしこれだけ海外からのお客様が増えた現代です。

こうして色々な言語に対応して宣伝するのは、とても効果的で大切なことなのだろうと思いました。

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色々ととても丁寧に準備されている舞台でした。

関係者の皆様どうもありがとうございました。

新生・日本女子大の初舞台

今日は久しぶりの江古田稽古でした。

稽古場に到着すると、母親がiPadで撮影した動画を見せてくれました。

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昨日の郁雲会稽古会「四季の会」で、日本女子大の新入生が、記念すべき初舞台・仕舞「羽衣キリ」を舞っている動画です。

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後ろに郁雲会のベテラン4人が並んで地を謡い、新入生は緊張気味ながらも正確に丁寧に舞っていました。

前半は完璧で、「これは天才的かも…」と思えるほどでした。

しかし終盤にちょっと早過ぎて戸惑うシーンがあり、それもまた京大宝生会などの新入生と似通っているようで、実に微笑ましく思いました。

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そして夕方になり、その日本女子大の新入生2人が稽古にやって来ました。

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初舞台を経て、気のせいか一回り成長したようで堂々と落ち着いて見えます。

仕舞は冬に向けて新しい曲を始めました。

「鶴亀」と「玉葛」です。

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既に母親の稽古で一通り習ったということで、早速一緒に舞ってみました。

「鶴亀」ではサシ回シヒラキ、六ツ拍子、大左右にユウケン。

「玉葛」の方は打合セやシヲリ、ヒラキカケなど、新しい型が沢山出て来ます。

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しかし2人とも「羽衣キリ」の時よりも格段にスムーズに舞えるようになっていました。

やはり一曲を終えると一段階成長するようです。

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続けて謡「鶴亀」も稽古しました。

こちらも既に母親から一通り鸚鵡返しを受けているそうで、私は細かな記号の説明をしながら半分だけ稽古しました。

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私「冬の関宝連では、2人でシテとワキを割り振って、素謡鶴亀を出したら良いよ」

新入生「はい、関宝連のエントリーシートが来ているので、書いて出しておきます」

最近では学生の舞台もネット上でエントリーするのですね。便利になりました。

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12月初めの関宝連は、今度は新生・日本女子大の初能楽堂出演になります。

エントリーシートを出すと、いよいよその舞台が視界に入ってくる気がします。

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関宝連の一員として恥ずかしくないように、舞台に向けてしっかり稽古して参りたいと思います。