御先祖様の物語

今日は松本稽古でした。

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松本ベテラン組の謡は、今「兼平」を稽古しています。

鸚鵡返しが丁度キリの部分からで、兼平の最

期の有り様を一句ずつ稽古していきました。

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そのキリの鸚鵡返しが終わって、曲の最初に戻ってお浚いに入るところで、”兼平の子孫”に当たる女の子のお母様が稽古にいらしたのです。

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もう一度鸚鵡返しは時間的に無理でしたが、せっかくなので「兼平」のクセとキリを私が続けて謡って、それを聴いていただきました。

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木曽義仲と今井四郎兼平の最期の戦いを活き活きと描写したクセキリは、何度謡っても心が熱くなります。

まして、それが自分の御先祖様の物語だったとしたら…。

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私「この謡を、是非お嬢さんに聴かせてあげてくださいね。自分の御先祖様が能になっている人なんて、滅多にいないのですから」

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実はお嬢さんは今受験で稽古お休み中なのです。

最期まで強く生きた兼平のように、受験勉強もギリギリまで全力で頑張ってもらいたいと思います。

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稽古を終えて晩御飯を食べて外に出てびっくりしました。

雪が降りしきっていたのです。

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駐車場の車にも積もり始めていました。

明日朝にはどんな景色なっているのだろう…

と思いながら、ジャケットの雪を払いつつ宿に急いだのでした。

伏見龍馬会新年会

今日は京都北文化会館にて紫明荘組稽古でした。

その稽古を終えて、夕方から伏見に移動いたしました。

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今日は「伏見龍馬会」という団体の新年会にお呼ばれして、全国から集まった会員の皆様の前で30分程、仕舞と謡を披露させていただいたのです。

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そもそも「伏見龍馬会」との御縁は、紫明荘組稽古から始まりました。

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昨年、紫明荘組の新人会員さんのご紹介で、四条木屋町下ルにある素敵なギャラリーをお借りして稽古したことがありました。(2019年6月11日ブログ参照)

その稽古の最中に、偶々ギャラリーの見学にいらした方が「伏見龍馬会」の会長さんだったのです。

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稽古後数日して、「伏見龍馬会新年会でひとさし舞っていただきたい」との御連絡をいただきました。

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今日の新年会会場は伏見の銘酒「英勲酒造」縁の、築150年という大変趣深い日本建築の”京風フレンチ”のお店でした。

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私の他に、”新内枝幸太夫”と仰る新内浄瑠璃のお師匠様の美声の披露もあり、大変楽しく勉強になる時間を過ごさせていただきました。

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稽古から始まった御縁が繋がって、今日はまた新しい出会いもありました。

この先またこの御縁が繋がっていくと、とても嬉しく有り難く思います。

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伏見龍馬会の皆様、本日は誠にありがとうございました。

青森仙台での自由時間

昨日は青森稽古、そして今日は仙台に移動しての稽古でした。

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仙台稽古は夕方からなので、昼間は自由時間です。

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せっかくなので、青森の美味しいものを食べてから仙台に行こうと思い、青森駅前の有名店「おさない食堂」へ。

ここで「鮭はらこ丼」と「じゃっぱ汁(鱈のアラ汁です)」を食べて大変幸せになりました。

おさない食堂はとても安くて美味しいのですが、開店時間と私の予定がなかなか合わずに滅多に行けないのです。

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帰り際おさない食堂のお母さんに、

「これ今日はバレンタインなので商店街からの贈り物です」

とチョコならぬリンゴをいただいて、身も心も温まって仙台へ向かいました。

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仙台でも時間があったので、駅から青葉城の方向に歩いてみることにしました。

そして散歩しながら、

「どこか稽古出来る場所が無いかな…」

と野外稽古場所を探していたのです。

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3月7日の澤風会郁雲会では、私自身も最後に番外舞囃子「邯鄲 盤渉」を舞います。

その「盤渉楽」という舞を、このところ日々稽古しているのです。

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30分程ぶらぶら歩いたところで、素晴らしい場所を見つけました。

石畳がちょうど舞台の大きさの正方形に区切られていたのです。

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「櫻岡公園」という青葉城の麓の公園でした。

ここで何度か邯鄲を稽古して、それから「櫻岡大神宮」という伊達政宗公が勧請したという神社に参拝しました。

束の間の自由時間をとても有意義に過ごして、気分良く仙台稽古場へと向かったのでした。

独吟の効用

昨日は午前中のNHKラジオ録音の後に、午後から江古田個人稽古、さらに夜に田町稽古でした。

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田町稽古場では3月7日の澤風会郁雲会で、初めての試みとして「独吟」を出す会員さんが3人います。

それぞれ「氷室」、「鞍馬天狗」、「八島」の一部分、時間にして5分前後の謡を、舞台の中央近くに正座して1人で謡うのです。

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昨年末に稽古場で「独吟発表会」のようなものをしたのがきっかけになり、今度は是非能楽堂で独吟を、と私がおすすめしました。

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昨日の時点でもう暗記して、無本で稽古した人もいて、皆さんやる気満々でした。

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そしてこの「独吟」への挑戦は、思わぬ別の効果を生むことがわかりました。

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素謡「須磨源氏」の稽古の時に、皆さんの声がこれまでより明らかに大きくて、余裕と自信を持って謡われていたのです。

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「無本」で「独り」で謡う独吟に比べたら、「本を見て」「皆で」謡う素謡には余裕を持って臨めるようになった、ということなのでしょう。

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今回素謡だけの参加の方も、次回以降独吟に挑戦されたら良いかもしれないなぁと思いました。

独吟の大きな効果を感じた昨日の田町稽古でした。

ラジオ録音初めての…

今日は朝から渋谷のNHKでラジオ録音に出演して参りました。

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ラジオ録音では、いつも一曲を最初から最後まで通して録音します。

しかし短めの曲の場合、全曲録音しても放送時間に足りないことがあります。

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そのような時には、足りない時間の分だけ別の曲の一部分を追加で録音することになっています。

そして今日も、一曲録音したところ放送時間に5分ほど足りないことがわかりました。

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そこで別の曲のキリの部分を追加録音したのですが、私はその追加録音でシテを謡わせていただいたのです。

長いことNHK録音に出演して参りましたが、ほとんどが地謡での参加でシテは今日が初めての経験でした。

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わずか5分ほどですが、大変嬉しい録音になりました。

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そのラジオの放送日なのですが、実は3月の澤風会郁雲会の翌日の日曜日なのです。

しかも早朝6時からです。。

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私はまず間違いなく澤風会郁雲会で力尽きて寝ていると思われますが、起きられる方はどうか聴いていただければと思います。

よろしくお願いいたします。

第2回橙白会に出演して参りました

今日は矢来能楽堂にて、辰巳大二郎さんのお社中会「橙白会」に出演して参りました。

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昨年が第1回で今回は2回目の開催でした。

皆さん謡も舞もしっかりと稽古されていて、それぞれ昨年よりも着実に上達されていました。

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澤風会の田町稽古場の会員さんも、橙白会にお友達がいらっしゃるようで、朝からずっと見所で応援されていたようです。

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大二郎さんは来月には能「道成寺」を披くことになっており、その稽古や準備でも忙しい中を、今回のような盛大な会を主宰するのは大変なことだったと思います。

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橙白会の会員さん達は、今度はその「道成寺」を見所で応援されることでしょう。

橙白会の今後のますますの御発展と、大二郎さんの道成寺の成功をお祈りしております。

光秀公ゆかりの稽古場

今日は大山崎稽古のために早朝に東京を出ました。

新幹線はかつて無いほどがら空きで、私の乗った車両には10人ほどしか乗客の姿がありません。

新型肺炎の影響は徐々に大きくなっているように感じます。。

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しかしJR山崎まで来ると、全く普段と変わらない様子でホッとしました。

いや、厳密にはちょっと普段と違っていました。

まず下のようなポスターが駅などに何枚も貼ってあります。

そう、今年の大河ドラマは”明智光秀公”が主人公です。

そして山崎や隣の長岡京はその光秀公や、娘の細川ガラシャゆかりの地なのです。

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稽古場の「宝積寺」も天王山の中腹にあるので、境内には上のような「いざ!天王山」という幟がたくさんはためいていました。

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そして午前中の大山崎稽古を終えて、私が午後に移動した先は…

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亀岡です。

こちらには光秀公が築城した「亀山城址」があり、やはり大河ドラマで盛り上がっているようでした。

稽古場もその亀山城址の中にあるのです。

亀岡駅には明智光秀グッズがたくさん並び…

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城址のお堀端には新しく作られた”明智光秀公像”が立っていました。

亀岡には新しいサッカースタジアムも完成して、今年は色々と賑やかになるのでしょう。

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しかし稽古場に到着すると、城址の中は普段と変わらない静謐な雰囲気でした。

そして今年も梅の花が音も無く開花していました。

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世間は色々大変ですが、変わらず静かに咲く梅を見て、また何かホッとしたのでした。

「安全な死に方」とは…?

今日は水道橋宝生能楽堂にて開催された「月並能」に出演して参りました。

私は能「錦戸」の立衆を勤めました。

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この立衆は、ワキ錦戸太郎の配下の武士で、シテ泉三郎と切り組んで討死する役です。

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切り組みの討死の仕方には、色々なバリエーションがあります。

①直立した状態からそのまま後ろに倒れる「仏倒れ」

②舞台から橋掛りへ向かって欄干を飛び越える「欄干越え」

③手を使わずに前転する「でんぐり返し」

④その場で飛び上がり平臥をする「平臥」

などです。

①が一番危険で、下に行くほど危険度は低くなります。

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そして今日の私の討死の仕方は…

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頭上に差しかざした太刀でシテの太刀を何度か受けて、押されて三足ほど下がって片膝をつく。

というものでした。

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膝にも足にも頭にも負担の全くかからない、いわば「最も安全な死に方」だったのです。

なんだか申し訳ないと思いながら片膝をついて、すぐに切戸に引いて帰りました。。

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来たる4月の「五雲会」で勤める能「兼平」では、ちゃんと(?)飛び上がり平臥をして、「自害の手本」となるような華やかな最期を遂げたいと思います。

居合女子!

今日は都内の私立女子中学校での能楽教室に行って参りました。

始まってからもう7年目になる能楽教室です。

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各教室に分かれて色々なお囃子や型や謡を体験します。

教室では、掃除の時のように机が後ろに下げてありました。

そしてその机の間に、私は気になるものを見つけました。

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どう見ても、能に使う「太刀」にそっくりなものがキャリーケースに入れて置いてあったのです。

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そのキャリーケースも、今日の実演曲「船弁慶」の太刀を入れて来たケースと全く同じものでした。

しかし船弁慶の太刀は控え室に置いて来たので、この教室にある筈がありません。。

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中学校の先生に「あの…この”太刀”は誰のものなのですか?」と聞いてみました。

すると…

先生「ああ、”居合道部”の子がいるのです」

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なんと、居合に使う刀なのでした。

後で詳しく聞くと、その学校に居合道九段の達人の先生がいらっしゃるとか。

なので、家で親御さんに「クリスマスプレゼント何が良い?」などと聞かれると、

「新しい刀!」

と答える居合女子が沢山いるそうです。。

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150人程の生徒さんは、皆とても熱心に能楽体験をしてくれました。

「この中にいる”居合女子”さん達は、きっと能の型をやっても格好良くきまるのだろうな…能も稽古してくれないかな…」

と思いながら、最後の実演の「船弁慶」を頑張って謡ったのでした。

面白写真〜2020冬〜

最近ネタが集まらずに御無沙汰していた、旅先などでの「面白写真」です。

およそ一年ぶりくらいになりました。

先ずはこちらから。

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神保町にて。”激安居酒屋 きぬちゃん”というお店でした。

しかしこの看板…ほぼ確実に蕎麦屋のリサイクルですよね。。

“ちゃん”がなんとも哀愁をそそって、ツボに嵌りました。

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浅草の唐揚屋さんです。”ご当地ずり”ですね。

しかし急いでいたので「スカイずりー」そのものを目視できなかったのが残念でした。

次は時間を見つけて食べに行ってみたいと思います。

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ここは青森駅片隅の、むしろ殺風景な場所でした。

そこに唐突に津軽弁を使うセンス。

やはり青森県人のユーモアは計り知れません。。

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京都駅にて。最近爆発的に増えた外国人観光客向けのお土産です。色々考えるものですね。

読み方が中々難しいものがいくつかありました。

「家仁威寿」とか。「ケニーズ」ですかね…?

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こちらも京都にて。

面白そうな古本屋さんを見つけると入ってみるのが常なのですが、ここは入口が本で塞がれて入れないという恐るべき古本屋でした。。

店員さんは一体どうやって出入りしているのでしょうか…?

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これは能「藤戸」を知っている人だけにわかるネタです。

後ワキの謡う一句に、この二社の社名が出てくるのです。

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もう最後の写真になります。

三ノ輪のご近所の根岸にある交差点です。

スクランブルどころか、交差点をとにかく全部横断歩道にしてしまったようです。

こういうヤケクソ気味のセンスも私は大好きなのです。

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今回はこの辺で失礼いたします。

皆さまからいただいた面白写真もあるので、また機会を見て掲載させていただきます。