新歓の出足は…

今日は新年度初めての京大宝生会稽古でした。

今日はまた京大入学式の日でもあります。

入学式当日にサークル見学に来る人などいないだろうと思われるでしょうが、去年はいて、その人がちゃんと入部して今や部長をしているのです。

今年もそんな人がいると良いな…と思いながら能楽部BOXに到着しました。

2回生を中心に部員達がビラ配りに行こうとしています。

私も手伝おうかと思っていると部長さんが、

「あっ!今新入生からLINEが来て、これから見学に来たいそうです!」

なんと!

到着から30分ほどで、早くも今年最初の新入生が見学に来ることになったのです。

ドキドキしながら新入生を迎えて、自己紹介などしていると、ビラ配りに行っていた4人の部員達が2人ずつ帰って来ました。

なんと驚くことに、それぞれ新入生を連れて帰って来て、新入生は合計3人になりました!

3人ともなかなかに個性的です。

「高校では部活を8つ掛け持ちしていました」という人や、

“ブリッジ姿勢”で入学式記念写真を撮っていた人、

また雅楽を小学校からずっとやって来た人、

などなどです。

稽古を見学してもらった後に、新歓時期にいつも行くアメリカンダイナーに皆で行って晩御飯をにぎやかに食べました。

新入生達は学部や出身地などで現役やOBOGと繋がりも多く、早速授業の取り方などの情報交換も行われていました。

今年の新歓もいよいよスタートです。

出足は好調なので、これから色々な新歓企画でさらに盛り上げて多くの新入生に来てもらいたいと思います。

平仮名の地名、人名

今月27日(土)に大阪の七宝会にて能「昭君」のシテを勤めさせていただくので、今はその稽古に没頭しております。

「昭君」は紀元前の前漢時代のお話ですが、謡の中に出てくる地名や人名に”平仮名”が多く使われています。

そもそも前シテの老夫婦が住んでいるのが、

「かうほ(こうほ)の里」

という平仮名地名です。

また曲の前半には、

「しんやう」、「とけつ」

といった平仮名人名が登場します。

極め付けは、辺境に流されてしまった愛娘”王昭君”の面影が映る鏡の事を、

「えんとん」

という平仮名で書いてあるのです。

ある意味でこの曲の最も重要なはずのアイテムが、元の字がわからない状態で謡われている訳です。

不思議な心持ちになりますが、裏を返せば自分で色々な漢字を想像して当て嵌める楽しみもあるのです。

「えんとん」

は、たとえば「円団」かな…とか(“団”も中国では丸いものをあらわすようです。団扇とか)

「かうほ」の夫婦が「えんとん」の前で悲しみにくれるこの曲を、想像力を駆使して理解していきたいと思います。

2件のコメント

能楽師に限らず…

大きな舞台や難しい役が近づくと見る夢があります。

昨夜も見ました。

昨夜のは舞台の正中で”引き分け”という型をした所で、次のシテ謡が全く出て来なくなり、見所が次第にザワザワし出す、という内容でした。

この手の「悪夢」は、他の楽師もよく見ると聞いた事があり、「能楽師」という職業に特化した夢かと思っていました。

しかし先日、そうとは限らないと思う出来事があったのです。

3月の澤風会郁雲会の能「敦盛」でツレを勤めた中学生高校生のうちの2人が、本番が近くなった頃に同じような「悪夢」を見たと話してくれました。

「舞台の上で謡が止まっちゃって、どうしよう…ってなる夢を見たんです」

「あ、それ私も見た!」

という感じです。

どうやらこの「悪夢」は、能楽師に限らず舞台に真剣に向き合っている人が本番近くに見る、という夢なのでしょう。

ちなみに私の経験では、この「悪夢」を見るか見ないかで、舞台の出来に影響は無いと思われます。

先日の能「敦盛」でもツレは皆とても良い出来でした。

京大や自治医大などにも、この手の夢を見た人がいるか聞いて見たいと思います。

筑波山”下山”記

自治医大合宿は下のような素敵な雰囲気の古民家ゲストハウスで行われました。

午前中に稽古を終えて、昼頃に宿をチェックアウトして、合宿は無事終了いたしました。

そしてその後は全員予定が無い事が判明したので、日が暮れるまでの間に「筑波山」に行ってみようという話になったのです。

山麓の「筑波山神社」に到着したのが13時半頃。

登山にはちょっと遅いので、ケーブルカーを使って一気に山頂に行く事にしました。

ケーブルカーは10分足らずで筑波山山頂駅に到着します。

山頂駅は男体山と女体山の中間部にあり、我々は「女体山」経由で、巨石や奇岩の多いという「白雲橋コース」を通って下山することにしました。

山頂からは黄砂に霞んではいましたが、関東平野や霞ヶ浦が見えて絶景でした。

またちょうど時期が良く「カタクリ」が咲いているのも見られました。

道は中々の急坂です。

しかし途中ですれ違った登山者の中には高齢の女性や小さな子供、また小型犬を連れた人までいて、皆さん健脚でびっくりしました。

そして山道の途中に確かに様々な巨石奇岩が点在していました。

「ガマ石」や…

「裏面大黒」など、個性的な名前が付けられています。

ここは何と「高天原」と呼ばれており、この先には神々が座す天上世界があるというのです。

またこの山にも「弁慶」に関係する場所がありました。

これは「弁慶七戻り」で、巨岩が落ちそうで恐れた弁慶が七回後戻りしたという伝説があるそうです。

弁慶は修行でここまで来たのでしょうか…

急だった山道も、ようやく緩やかになって来ました。

そして程なく、無事に麓の鳥居まで降りて来る事ができました。

今回は時間の制約があって、登山というより筑波山”下山”でした。

また機会があれば、次回はちゃんと”登山”して、男体山にも登頂してみたいです。

自治医大合宿は筑波山観光まで付いて、大変盛りだくさんなものになりました。

自治医大宝生会の皆さんありがとうございました。

自炊もしながら

昨日から筑波山の近くにある古民家ゲストハウスで自治医大能楽部宝生会の合宿をしております。

筑波山を間近で見るのは初めてなのですが、何となく比叡山に似た姿だと思いました。

ゲストハウスの周りは見事な日本建築の大きな農家が多く、栗や梨が名産品だそうです。

京大合宿所の民宿きつねと違って、今回のゲストハウスではご飯は自炊になります。

昨夜は秋田出身の部員が「きりたんぽ鍋」を作ってくれました。

比内地鶏の出汁で、非常に美味しかったです。

そして今朝は、京大からゲスト参加のOBが腕を振るって、大変豪華な朝ごはんになりました。

焼き鮭、焼きウインナー、空豆とベーコンのオムレツ、味噌汁、昨夜のきりたんぽ鍋の出汁で作った雑炊、などです。

食べる話ばかりですが、稽古もちゃんとしています。

謡は「三笑」、仕舞は「花月キリ」「巻絹クセ」「忠度」などを一通り稽古しました。

これから授業が始まるととても忙しくなる自治医大生ですが、実習や授業の合間をぬって、次の関宝連や全宝連に向けて頑張ってもらいたいと思います。

井戸と防災

能にはしばしば「井戸」が出てきます。

「井筒」では恋する2人が影をうつし、「養老」では滔々と湧き出す水が生命力の象徴となり、また「鉄輪の井戸」などと言う恐ろしい伝説もあります。

今回は私の自宅周辺の井戸のお話です。

今日三ノ輪の自宅の近所を歩いていると、こんな井戸を見つけました。

昔ながらの懐かしい井戸です。

近所にこんな風な古い井戸が残っているのかと驚きました。

そして時間があったので、その辺りにもっと井戸が無いか探してみたのです。

すると…

古い形状ではありませんが、そこ此処に井戸を見つけることが出来たのです。

本体は無くなって蓋がしてあるものも…

そして公園にはこんな井戸がありました。

この井戸、単なる防災用水だけで無くて、実はすごい機能があるのです。

なんと奥に並ぶマンホールと併用すると、「災害用トイレ」になるのです。

この使い方は初めて知りました。

他にも防災井戸がいくつもあり、昔ながらの井戸が現代でもこのような形で生きているのだと知りました。

また井戸探しの途中で見つけたお地蔵さんがあります。

「大震災一周年記念碑」

とあったので、東日本大震災の事かと思い、後ろに回って見てみると…

なんと「関東大震災」から一周年の碑でした。

今日は井戸探しから、図らずも防災について考えさせられる日になりました。

またいつ大きな地震がくるかわからないので、特に「災害用トイレ」など、近所の場所を確認しておこうと思いました。

パスポート再発行チャレンジ

今日は久しぶりの休みだったので、かねてより行こうと思っていた「パスポート再発行」の手続きに行って参りました。

私は海外公演の経験はそれほど多くないのですが、それでもコロナ禍以前には1〜2年に一度くらいのペースで海外公演に参加していたのです。

しかしコロナ禍が始まった2020年頃以降は、全く海外に行く事が無くて、パスポートも家で眠ったままでした。

そしてふと思い出してパスポートを出してみたところ、なんと2020年で有効期限が切れてしまっていたのです。

昨年くらいから海外公演が増えて来て、どこそこの国に行って来たという話をしばしば聞くようになりました。

私にも今後お呼びがかかる可能性はあります。

パスポート再発行は色々時間がかかると聞いていたので、海外公演を依頼されてから手続きを始めて間に合わないと大変です。

という訳で今日手続きを思い立った訳ですが、やはり色々大変でした。

まず役所で戸籍謄本を取り、そこからパスポートセンターに移動して、申請書を提出するまでに40分以上、そこから受領書を受け取るまでに更に1時間半近くかかりました。

謡を覚えたり文庫本を読んだりしながら待っていたので、私にとってはある意味有意義な待ち時間でした。

パスポートが実際に入手出来るのは1週間ほど先になりますが、何か大仕事を終えたようでホッと致しました。

卒業式の教室のような…

今日は江古田稽古でした。

江古田で稽古するのは澤風会郁雲会の前日の3月8日以来で、約3週間ぶりになります。

稽古場に到着すると、前回まであったダンボール箱などを組み合わせて作られた「砧」の作り物や、厚紙や竹の棒で作られた「野宮」の作り物は綺麗に片付けられていました。

収納を開けると、「敦盛」で使っていた稽古面がポツンと置いてありました。

「そうか、あれらの曲はもう稽古しないのか…」

と何だか少し感傷的な心持ちになり、この感覚どこかで…と思い返してみると、「卒業式の日の教室」のような感じだと思い至りました。

色々片付けられた教室を見渡すと、さっぱりしているけれど何かさびしい気持ちになったのを思い出します。

…しかし、感傷的になったのはほんの一瞬でした。

今日から「奥伝」の難しい謡に取り掛かる人や、長い仕舞に挑戦することにした人など、皆さん早速次の目標を立てて新たなスタートを切られました。

当面は大きな舞台はありませんが、こういう時期こそ難易度の高い曲をじっくり稽古できるのです。

私もしばらくは稽古に集中して、また新たな気持ちで頑張って参りたいと思います。

人は城 人は石垣

今日の昼にリモート稽古をしたのは、江古田でボイストレーナーをされている方です。

他にも色々な仕事をされているパワフルな方で、今日も私のリモート稽古の直前まで、やはりリモートで日本語会話のレッスンをされていたそうです。

どちらの国の方を教えていらしたのですか?と尋ねてみると、

「アメリカのユタ州の銀行員の方です!」

行ったことの無い外国の人と、レッスンでつながれるのは良いですね。いつかそこに行けるかもしれないし。と言ってみると、

「そうですね!でも今のところ逆に、彼らが日本に来た時に色々と歓待してしまって、結局赤字なんですよ。アハハ!」

と明るい声で答えが返って来ました。

これと似た話を最近松本稽古場でも聞きました。

北アルプスの麓でハーブ栽培をされている松本澤風会会員さんは、100人規模の栽培グループの代表として数100種類ものハーブを育てて県内のリゾートホテルやレストラン、カフェなどに出荷しておられます。その方が、

「栽培や出荷の作業は本当に大変なのですが、収入度外視なので、結局月に1人数100円の儲けにしかならないのですよ」

と、穏やかな笑顔で話されていたのです。

お2人の話を聞いて、

「人は城、人は石垣…」

という武田信玄の有名な言葉を思い出しました。

海外の方との関係や、あるいは100人もの栽培グループメンバーとの繋がりは、金銭的なものよりもよほど貴重で実りのあるものだし、それによって助けられたりする事もきっと多くあると思うのです。

そういう姿勢は私も見習いたいと強く思いました。

澤風会や郁雲会の皆様には教えられる事が多く、いつも感謝しております。