秋の訪れ

ここ数日でぐっと涼しくなりました。

火曜日は群馬県で薪能があり、その日は陽射しが強烈で日没まではとても暑く、「まだ夏みたいだ」と思っていました。

ところが昨日の水曜日。

大阪枚方の淀川河川敷で薪能があったのですが、会場に夕方到着すると風がとても冷たく、今シーズン初めて「肌寒い!」と感じました。

そして今日は信州松本稽古。

朝に松本稽古場の会員さんから「松本凄く寒いです。ストーブつけたいくらいです。」とメールが来ました。

特急あずさで新宿を出ると、車窓から見える風景は、例えば刈り入れが済んで稲が架け干ししてある田圃や、ススキが風に靡いているのや、種類によっては早くも赤く色づき始めている木々など、「日本の正しい秋の訪れ」を感じさせるものでした。

そして松本稽古場では、大変大きくて美味しい栗の渋皮煮をいただきました。

会員さん「主人が8時間かけて煮たものです。」

いつも美味しいお菓子を作ってくださる御主人、どうもありがとうございます。

視覚や味覚で秋を感じた一日でしたが、いかんせん極端な暑がりの私のことです。服装は全く夏のままの半袖シャツ一枚で松本稽古場に行き、皆さんに笑われてしまいました。。

しかし私としては、昨日今日のようにちょっと肌寒いくらいが丁度良いのです。

一年で一番好きな秋が、ようやく来てくれました。

これから気温が下がるのと反比例して、私の行動力は増していく筈です。

ますます稽古や舞台を頑張りたいと思っております。

旅をする蝶

月曜日の京都謡蹟散策の解散後に、私は亀岡稽古に参りました。

実はその日の亀岡稽古では、密かに楽しみにしていることがありました。

8月27日のブログに写真を載せた「フジバカマ」を覚えていらっしゃるでしょうか?

この花です。

秋の七草のひとつでもあるフジバカマには、実は10月初旬にある特別な来訪者があるのです。

「アサギマダラ」という蝶です。

私がこの蝶と初めて出会ったのは、中学校の「科学部」の夏合宿で訪れた山梨県の本栖湖畔でした。

都内では見たことの無い綺麗で大きな蝶が、私のすぐ近くで逃げもせずに植物と戯れていました。

しかしその時には、このアサギマダラに非常に特殊な習性があることは知りませんでした。

アサギマダラは「渡り」をする蝶なのです。

春から夏には主に本州の高原地帯に住み、秋になると南へと移動を始めます。

そして本州から九州へ、更になんと大海原を越えて南西諸島まで渡っていくのです。

中には遥か台湾まで2000キロ以上の渡りをする個体もいるとか。

途中は海上に浮かんで休み、栄養補給はしないということです。

なので、海上に出る前に食餌を済ませる必要があるのですが、アサギマダラが蜜を吸う植物は何種類かに限られます。

このうちのひとつが「フジバカマ」なのです。

私は昨年のちょうど今頃の亀岡稽古の時、フジバカマに飛来した沢山のアサギマダラと出会うことが出来て感動いたしました。

今年も出来れば、長い長い「渡り」の途中に亀岡に立ち寄った彼らと会いたいと、密かに願っていた訳です。

ところが、月曜日は本降りの雨。

フジバカマにはアサギマダラどころか、虫の影さえ一匹も見当たりません。

「今年は会えなかったか。また来年だな…」

と残念に思いながら稽古を終えて、帰りがけにお弟子さんにその話をした所、なんと「昨日フジバカマにアサギマダラが来ていて、写真を撮っていた方がいますよ」とのこと。

更に帰りの新幹線でその写真がメールで送られて来たのです。

この先遥か南西諸島を目指す長い旅の途中で、今年も亀岡のフジバカマに立ち寄ってくれたアサギマダラです。

直接は会えませんでしたが、今も飛び続けている筈の彼らの旅の無事を祈りながら、しみじみと写真に見入ったのでした。

来年はどうか顔を見られますように。

澤風会京都散策2

第12回澤風会翌日の恒例京都謡蹟散策。

北野天満宮御旅所の「ずいき神輿」を見学した後、今度は星の神様で方位の吉凶を司るという「大将軍八神社」へと歩きました。

大将軍八神社の前の道は「一条通り」です。

京大正門前の道が「東一条」なので、このままずっと東に行けば京大に辿り着くのですね。

この「一条通り」、大将軍八神社の辺りでは「妖怪ストリート」とも呼ばれるそうで、「百鬼夜行」の通り道と言われたちょっと怖い道なのを逆手にとって、「妖怪」で地域おこしをしている面白い商店街なのです。

例えば商店街の店先にはこんなモノが…


手作り感満載の妖怪人形です。

「鞍馬天狗」は伊達男なのか?と思ってよくよく見れば、「龍馬天狗」なのでした。。

今ちょっとしたブームの「飛び出し坊や」も、ここではこんな感じ。


青鬼くんや…


ろくろ首ちゃん。

こんなのが飛び出して来たら、運転手さん動転してしまいますね。かえって危ないかも…

毎年秋には「百鬼夜行」を再現した妖怪仮装行列も行われるそうで、今年は10月14日の土曜日らしいです。


沿道では「妖怪アートフリマ・もののけ市」なるものも開催されるということで、こちらも今年は無理ですが日程が合う年に是非行って、面白写真を撮りまくりたいと思います。

…「謡蹟巡りはどうした」と言われそうですが、ちゃんと「右近の馬場」や「土蜘塚」、「式子内親王の墓」などを見て回りました。

しかしこれらは有名な場所なので、改めてここで紹介することはないかな、と…。

合間に食べた、太いうどんが一本だけ長〜く繋がっている「たわらや」の「一本うどん」や、上七軒の入口にある「やきもち」が素朴で美味しかったです。

舞台も散策も無事に終わって、今日からまた通常モードです。

次の舞台に向けて、また稽古頑張って参ります。

皆様どうかよろしくお願いいたします。

澤風会京都散策1

昨日はおかげさまで第12回澤風会が無事に終了いたしました。

京都の澤風会の翌日は、大山崎稽古場の会員で、「大山崎ふるさとガイドの会」のメンバーでもある木村さんのガイドによる京都謡蹟散策が恒例になっております。

今日も朝から散策をして参りました。

今回の目玉は、北野天満宮の「ずいき祭」で使用される特殊な御神輿、「ずいき神輿」の見学です。

何でも全体が野菜で作られているとか。

なんとなく、外国の市場によくあるような野菜満載のワゴンを想像してしまいました。

京都駅からJR山陰線で円町へ。そこから徒歩で「北野天満宮御旅所」へ。

境内に「ずいき神輿」はありました。


想像した「野菜満載ワゴン」とは全然異なり、もっと精緻な装飾が施されています。


説明によると、野菜の他に海苔なども使われており、金色に見える部分も「麦わら」を割いて平らにのばした物を貼り付けてあるそうです。

気の遠くなるような繊細な作業です。

また神輿の四方には、野菜や乾物を使った「美女と野獣」や「土俵入り」と言った「作品」が飾られて、なんともユーモラスな雰囲気を醸しています。

境内には「子供神輿」もあって、こちらの装飾はまた子供が喜びそうな現代的なものでした。


なんと「ミニオン」。


パンダも。

この「ずいき神輿」の原型はすでに平安時代からあったようです。

説明してくださったずいき神輿保存会の方は、「本業は農家で、代々ずいき神輿の為の野菜を育てて来た」と仰いました。

この御神輿もまた能楽と同様に、「五穀豊穣への祈り」という遥か先人の思いが、現代まで大切に伝えられた物でした。

「ずいき神輿」は10月5日まで北野天満宮御旅所で見ることが出来ます。

その後は、解体されて元の畑の土に返されるとか。

京都にいらっしゃる方は、このチャンスに是非御覧になる事をお薦めいたします。

散策はまだ続きますので、この先はまた明日に。

澤風会御礼

おかげさまで第12回澤風会大会は無事に終了いたしました。

朝から終了まで私はただ地謡を謡い続けて、舞台上では何も大きな問題は起こりませんでした。

稽古の成果の発揮ということにおいて、これ以上は望めない程の舞台であったと思います。

初舞台や嘱託披露や、様々な状況の中で舞台を無事に勤められた皆様、本当にありがとうございました。

また次の舞台をどうかよろしくお願いいたします。

本日はこれにて失礼いたします。

明日は第12回澤風会です

明日はいよいよ第12回澤風会大会が、京都大江能楽堂にて開催されます。

今日は朝から最後の仕上げの稽古をして、先ほど無事に終わりました。

今回も良い準備が出来たと思います。

きちんと稽古をされた方にとっては、本番はご褒美のようなものだと思います。

あまり緊張したり心配したりせずに、舞台を楽しんでいただけたら良いと思います。

私は澤風会の本番では基本的に、舞台上で多少間違いがあっても何も反応しないことにしています。

「稽古を積んでいれば、自然に正しい型や謡に戻る」というのが私の経験則なのです。

また、度々申し上げることですが、「稽古を積んだ上での間違いと、稽古が足りない為の間違いは、すぐに見分けられる」というのも経験則です。

能楽は勝敗がつくものではないので、努力してきた成果は、たとえ完璧な結果ではなくても、見所のお客様に必ずわかっていただけるのです。

直前稽古が出来なかった方も、型や謡は既に出来上がっているので、あとは可能な限り良いコンディションで切戸の前にいらしていただければと思います。

明日はどうかよろしくお願いいたします。

小鼓の独調会

今日は新橋の料亭で催された、小鼓の「独調の会」に出演して参りました。

8月初めの京都での太鼓の会、8月終わりの軽井沢での大鼓の会に続いて、今度は「小鼓」だけに合わせて1人(または2人)で謡う舞台でした。

澤風会、郁雲会からも5人の方々が出演され、高級料亭に似つかわしい華やかなお着物姿で、稽古の成果を存分に発揮されました。

小鼓という楽器は、能や舞囃子においては大鼓とペアになって、ひとくさりの内の前半を主に大鼓が、後半を主に小鼓が主導して囃します。

太鼓、大鼓、小鼓とそれぞれの独調を謡ってみて感じたのは、「小鼓の独調が一番難しい」ということでした。

前半を支配する大鼓がいない中で、どんな位でひとくさりを謡い始めるかは完全に「謡い手」に任されます。

謡の途中から入ってくる小鼓の手を聴いて、次のくさりの謡の位を決めていく、というのを何と例えたら良いでしょうか。

何か目をつぶって高い所から水に飛び込むような、水面に到達するまでの間に感じるであろう心許なさのような、そんな感覚を謡いながら繰り返し味わっていました。

しかしその難しさの分、また大変に勉強になりました。

料亭という普段縁遠い場所で、緋毛氈の上で金屏風を背にして謡うというのも、また新鮮な経験でした。

本日の会は、幸流小鼓方の曽和正博先生の古希の御祝の会でした。

曽和先生御目出度うございます。またお招きいただきどうもありがとうございました。

声の高さ

今日の江古田稽古に、ホームページを御覧になった方が見学に来られて、そのまま謡の稽古を少し始めてくださいました。

また新しいお仲間が増えて、嬉しい限りです。

その方は歌をうたうお仕事の女性なのですが、それでもやはり私の謡う声と高さを合わせるのが難しいと仰いました。

女性と男性は元々の声のトーンが違いますが、私の稽古に於いては、お弟子さんが一番出しやすい高さを私が探して、その高さで謡うように努めております。

その方ももう少し慣れてくれば、適切な高さが見つかると思います。

実は私は、東京芸大に入るまでは「自分の声の高さ」というものに意外に無頓着でした。

その日の体調や気分によって、日々声の調子が変わるような気もして、しかしそれでも謡は相対的な音程が合っていれば良いのかな、と思っていました。

その意識が変わったのは、芸大の「ソルフェージュ」という西洋音楽の授業でのことです。

ソルフェージュの先生が「ちょっと謡を謡ってみて」と仰られて、私が「鶴亀」の弱吟を謡ってみた所、それを瞬時にピアノで演奏されたのです。

また、高さを色々変えて、同じ鶴亀のメロディを弾いてみてくださいました。

「1オクターブの範囲で謡の高さを自在に変化させられれば、理論的にはどんな声の人とも合わせて謡うことが出来る!」ということにそこで気付きました。

それから色々試行錯誤を繰り返して、一音単位で高さを微調整出来るように努力しております。

しかしまだ上手くいかないこともあり、稽古中に気がつくとお弟子さんがすごく高い声でヒイヒイ言いながら謡っておられたりして、慌てて調子を低く直したりしております。。

お弟子さんが気持ち良く謡える高さを見極めて、瞬時にその高さで謡えるように、今後も努力を続けていきたいと思っております。

半年間待つこと

田町稽古場では、今日から新しい謡「花筺」を稽古します。

能「花筺」のシテ「照日の前」は、子方「男大跡辺皇子(おおあとべのおおじ)」の寵愛を受けて幸せに暮らしていました。

ところがある春の日に突然皇子は、一通の手紙と花籠を残して、天皇になるために都へと旅立ってしまいます。

手紙には「少しの間離れ離れになるけれど、必ずまた会える日を信じて、待っていてほしい」と書かれていました。

しかし、次に二人が再会するのは秋のことです。その間半年、照日の前は皇子に会うことも、連絡をとることさえも出来ずに待たされ続けた訳です。

その半年もの長い空白を経て再会した二人が、また元のように幸せになれたのは、現代人の私からすると驚くべきことです。

現在であれば、メールやラインで常に連絡を取り合い、半年間メールもラインも全然来ない場合、まあ途中で怒るか諦めるかしてしまいそうな気がします。

現代に於いては「花筺」のような物語は起こり得ないな…と思ったら、ちょっと設定は違いますがあるエピソードを思い出しました。

奇人変人揃いの京大宝生会OBの中でもとりわけユニークなI君。

ある日同じ京大OBで京都在住のK君の元に、I君から連絡がありました。

「原付バイクで神奈川を出発して、京都方面に旅行します。4月頃にそちらに行くので、泊めてもらえませんか?」

もちろん快諾したK君ですが、待てど暮らせどI君はやって来ません。4月が過ぎ、夏が来て、夏も終わり、秋になってようやくI君はやって来たそうです。

何故か紀伊半島先端の串本などを経由していて、遅くなったとか。

半年遅れても平然と現れるI君と、それをそれほど驚きも起こりもせずに迎えたK君。

京大宝生会に於いては、平安時代と同じように時間が緩やかに流れているのですね。

しかしこちらの話は二人とも男子なので、花筺のようにロマンチックなことは全く無いのが残念なのでした。。

面白写真  9月

久々の面白写真です。何回目か忘れてしまいました。。

最初は自宅近所で撮影したこちら。


以前見つけた「熊谷直実」さんに続き、ご近所にこんなビッグネームが住んでいたとは驚きです。

そっと覗くと、普通のおじさんの姿が見えましたが…。

続いてこちら。西荻窪のバス通りにて。

森見登美彦の「宵山万華鏡」に「超金魚」という化け物じみた巨大な金魚が出て来ますが、「25才、42cm」ならば「リアル超金魚」と言えるでしょう。

こちらは笑える訳ではないのですが…京大の近くにて。

最初に「ペットの絵書きます」を貼って、反応が無くて下のを書き足したのかな…などと色々想像すると、何かジワリと来るポスターです。

実は色んな職業に応用出来ます。

「仕舞  舞います。または舞いませんか?」

などなど。

続いて、最近はなかなか面白い曲名看板がみつからず、新シリーズ「惜しい所でちょっとだけ違う曲名看板」です。


 
あだか、ぐず…わかりますかね…。

次は、「2枚で一曲」です。



この2件、結構近くにあるのですが、何の関係も無いようです。。



「IN」はちょっと強引ですかね…。



個人的には「ハイツ やま」のネーミングセンスがしみじみ良いと思います。

最後に読者投稿編です。

青森のTさんより、先日紹介した「アフロリレーマラソン」の実況写真です。

確かにアフロで溢れています。

大トリはこちら。


松本からいつも面白写真をお送りいただくKさん、ありがとうございます。
しかし一体何のお店なのでしょうか…。

今回はこの辺で失礼いたします。

皆様からの面白写真お待ちしております。