稽古の栄養補給

私は稽古中には、可能な限り飲食はしないのが好みです。

食べ物は食べた後に思考力が低下して、身体も重くなって、舞や謡がしんどくなるような気がするのです。

飲み物はほぼコーヒーだけです。コーヒーは少しずつ飲むとその度に頭が冴える気がします。

しかし稀に稽古中に栄養補給したくなる時もあります。

今日は昼過ぎの12時半頃から夜の21時まで、延べ40人以上の仕舞、舞囃子、謡の稽古をぶっ通しでしました。

夕方頃に燃料切れの感じになり、出されていた食べ物の中から「ゼリー状の栄養補給飲料」をいただきました。

色々と強烈な栄養素が入っていたようで、しばらくすると身体が燃焼している感じがして、残りの稽古を乗り切る事が出来ました。

しかし、私が稽古中にあまり食べないのは、「稽古が終わって帰宅してから食べるご飯を美味しくいただくため」という理由もあるのです。

今日も稽古を終えて三ノ輪の自宅に帰ると、ゼリー飲料の燃料もちょうど切れていて、晩御飯をしみじみと美味しくいただく事が出来ました。

特に先日松本稽古でいただいた小田原の「金目鯛の揚蒲鉾」が最高の美味しさでした。

明日の舞台を頑張るための万全の栄養補給になりました。

明日も頑張ります!

昭君の偽似顔絵

今何ヶ所かの稽古場で「昭君」の謡を稽古しております。

王昭君は似顔絵師に賄賂を渡さなかったために酷い顔に描かれてしまい、匈奴の国に送られる事になります。

しかし本当の昭君は中国4大美人(西施、貂蝉、楊貴妃、王昭君)のひとりとされる絶世の美女です。

私は非常に無粋なことなのですが、この昭君が酷い顔に描かれたという「偽の似顔絵」が見たいと思い、色々と探してみました。

昭君の謡の中に「今頃は昭君は、あの”偽の似顔絵”のように憔悴した面持ちになっているだろう」という文句があり、その”憔悴した面持ち”がどのようなものか確認してみたかったのです。

…結果的には、昭君の”憔悴した似顔絵”は全く見つかりませんでした。

昭君は例外なく超絶美人に描かれていたのです。

これは昭君が人々に愛されていたという事なのでしょう。

しかし、やはり”偽の似顔絵”も、できる事ならば見てみたいものです。

もしそれらしい絵をご存じの方は教えてくださいませ。

どうかよろしくお願いいたします。

採れたてアスパラガスと老舗お味噌

昨日は松本稽古でした。

北アルプスの麓でハーブ作りなどをされている松本澤風会会員さんご夫婦が、今回は「アスパラガス」を持って来てくださいました。

大人の指程の太さのとても立派なアスパラガスが10本ほど。

私「これはどちらで採れたものですか?」

会員さん「うちで採れたものですよ。少し茹でてそのまま食べてください」

なんと、自家栽培の採れたてアスパラガスとは大変美味しそうです。

東京に帰ってから早速食べてみることにしました。

シンプルにアスパラガス、味噌、マヨネーズです。

実はちょっと調べたら、「アスパラガスは茹でても良いけれど、電子レンジ500Wで2〜3分チンすれば栄養素が逃げずに全部食べられる」とあったのでその通りにしてみました。

そして写真右手の”味噌”。

これはただのお味噌ではないのです。

やはり松本澤風会の会員さんに、松本城下で天保3年(1832年)創業の老舗味噌屋「萬年屋」の若おかみさんがいらっしゃいます。

この「萬年屋」のお味噌は、現代では省略されている「味噌玉造り」という工程を守り続けており、それが深い味わいを出しているという大変美味しいお味噌なのです。

この製法はなんと1300年前から続くものだそうです。

能楽がまだ黎明期だった頃から、現代まで綿々と受け継がれた製法。何かとても親近感を覚えます。

私も一度食べたらその深い味に他のお味噌が物足りなくなり、定期的に購入しております。

採れたての自家製アスパラガスと、昔から変わらない伝統製法で作られた老舗のお味噌の組み合わせです。

もちろん最高の味わいで、大地の恵みを余すところ無くいただいて大満足でした。

昨日はまた「小田原の蒲鉾」も頂戴して、こちらは今夜のお楽しみにしたいと思います。

稽古曲の記録手帳

一昨日の亀岡稽古の時のことです。

亀岡稽古場では、今月初めに大きな舞台が無事に終わりました。

なので一昨日は皆さん新しい仕舞を考える回でした。

まだ初めて年数が少ない方はすぐに曲を思い付くのですが、ベテランの方は曲選びが難しいのです。。

長く稽古されている方の前で、

「うーん、何にしましょうか。もう大抵の仕舞はやったことがあるのでは…」

と困った声で言ってみたところ、その方が

「あの、私これまで稽古した曲は全部手帳に書いてあるのですがご覧になりますか?」

おお、それは大変ありがたいです!

是非、と言って手帳を見せていただきました。

手帳の2ページにわたって几帳面な字で最初に稽古した曲から最新の曲までが網羅されています。

その方とのこれまでの稽古の記憶も蘇って来て、とても懐かしい気持ちになりました。

ザッと見てみると、意外に稽古していなかった曲があることがすぐにわかりました。

「”井筒”はまだ稽古されていないのですね?」

「はい!」

「それは意外でした。では井筒にしましょう!」

とすぐに曲を決めることができました。

私自身が全く几帳面で無いのでお願いできた義理では無いのですが、このようにご自分の稽古曲を記録しておいてくださると大変有り難いとしみじみ思ったのでした。

二重にうれしい日

今日は京大稽古でした。

4月から新歓を頑張っているのですが、今年は中々新入生が入ってくれません。

今日も何人か新入生が見学に来てくれると聞いており、なんとか今日1人でも入部してほしいと思いながら能楽部BOXに向かいました。

18時半頃に5限を終えた新入生が1人やって来ました。

そして自己紹介を終えた直後でした。

新入生「あの…僕宝生会に入部します」

…⁉️

あまりにサラッと言われたので私も現役達も皆一瞬固まって、次の瞬間に、

「おお〜‼️」

と喜びの声を上げました。

ついに今年も、新入生が入ってくれました!

その後、今度は数回見学に来てくれている新入生が、なんと高校生の妹さんと共に来てくれました。

そして稽古の後に入部を決めてくれたのです。

今日は京大宝生会にとって素晴らしい日になりました。

稽古を終えて「では新入生とご飯に…」

と言いかけると、現役の男子が「ちょっとお待ちください」

私「?」

現役男子「実は澤田先生の誕生日が近いということで作ったものがあるのです」

と言って、何やら大きなお皿を出してくれました。

これはなんでしょう…?

現役男子「これは炊飯器で作った”ハンバーグケーキ”です!」

なんと!直径20cm、厚さ5cmはある超特大ハンバーグでした!

誕生日ケーキをいただいた事はありますが、

「誕生日ハンバーグ」

は生まれて初めてです。しかも過去最大のハンバーグです。

そして人数分切り分けて、

「いただきます!」

皆で食べてみると、これが絶妙な柔らかさで大変美味しいのです。

このレベルならお店で出せるくらいです。これを作ったのが男子部員2名というのだから大したものです。

今日は”新入部員2名獲得”と”誕生日ハンバーグ”で二重にうれしい日になりました。

亀岡の花々〜花火のような花〜

今日は亀岡稽古でした。

例によって季節の花を探しに行くと、今回も初めて見る花が咲いていました。

ちょうど線香花火がパチパチと爆ぜているように見える純白の綺麗な花です。

初夏を迎えて緑が多くなった森の中で、遠目にも白く鮮やかに浮かび上がって本当に夜の花火のようでした。

しかし名前がわかりません…

今日はいつも花の名前を教えてくださる方も稽古お休みなのです。

頼りになるのはスマホの検索機能だけです。

「線香花火のような花」

とか、

「花火のような花 白」

と言ったワードで検索してみると…

似たような花はたくさんありますが葉っぱの形状から「カラマツソウ」という花と思われました。

ちなみに「カラマツソウ」の名前の由来は、「カラマツ」の葉っぱを見ると一目瞭然なので、是非調べてみてくださいませ。

名前がわかって満足して、さらに花を探してみました。

今回は先程も書いたように緑が多かったのですが、その中で、

「ガンゼキラン」

という絶滅危惧種の黄色い花が見られました。

また「ホタルブクロ」は蕾をたくさんつけていました。もうすぐ蛍が飛び始める頃に花を咲かせるのでしょう。

そして前々回は蕾だった「カノコソウ」は満開になっていました。

目まぐるしく移ろう季節とともに、花々も入れ替わっていきます。

秋に咲いて「アサギマダラ」という蝶の宿になる「フジバカマ」も、すくすくと茎を伸ばしていました。

加茂物狂のワキツレ

今日は国立能楽堂にて能「加茂物狂」の地謡に出演して参りました。

「加茂物狂」は宝生流の謡本では主な登場人物はシテ「狂女」とワキ「その夫」のみです。

しかし今日のワキ方の”福王流”ではその他にワキツレとして「賀茂明神の神主」も登場しました。

加茂物狂という曲は現在では一場ものですが、元々は前後に分かれていたようで、神主が出るのはその頃に近いやり方だそうです。

しかし神主が出ることで宝生流の謡本とはかなり違った構成になります。

謡が増える所があれば、ごっそり無くなる所もありました。

これだけ謡が変わるとシテや地謡にも影響しそうなのですが、驚いたことにシテ謡と地謡は全く変わらないのです。

我々シテ方は謡本通りの「加茂物狂」を謡って、ワキ方のみがガラリと変わるのです。

ワキ方の流儀によって微妙に謡が変わることは良くありますが、今日ほど大きく変化する曲はちょっと経験したことが無く、またひとつ勉強になりました。

時代も、国も飛び越えて

神保町稽古場の団体謡稽古では、曲が新しくなる度に、会員さんの一人が詳細な参考資料を作って解説してくださいます。

今は「昭君」を稽古していて、今日もその会員さんの解説を聞いてとても勉強になりました。

昭君は言わずと知れた中国のお話です。

しかし前シテツレの最初の謡

「散りかかる 花の木陰に立ち寄れば 空に知られぬ 雪ぞ降る」

は、実は紀貫之の歌

「桜散る 木の下風は寒からで 空に知られぬ 雪ぞ降りける」

が元になっているそうなのです。

また、クセの中の

「賢聖の障子に 似せ絵にこれをあらはし」

の”賢聖の障子”とは、なんと日本の御所の紫宸殿にある障子だそうです。

つまり能「昭君」の作者は、紀元前の中国のお話を、中世の日本人が理解しやすいように、巧みに日本の文物を取り入れて能に仕上げていたわけです。

現代でこれをやると、

「時代考証がなっていない!」

とクレームが来そうですが、能の作者は大胆に国や時代を飛び越えて曲を作っています。

それが結果的に「昭君」という曲のスケールを大きくしているように思えるのです。

やはり能は知れば知るほど新しい驚きと面白さがあると、今日の解説を聞いて再認識したのでした。

みかん色の街

昨日今日と「松山城二ノ丸薪能」に出演するために愛媛県の松山に行っておりました。

愛媛県と言えばなんと言っても「愛媛みかん」が有名ですが、松山市内はこの「みかん」の色で溢れていたのです。

バスも”みかん色”

路面電車も…

普通の電車も全て”みかん色”で統一されています。

ゆるキャラも、みかんと犬が合わさった「みきゃん」です。

最近は「こみきゃん」や「ダークこみきゃん」など、キャラが増えてきたようです。

そして食べ物では…

空港の売店で見た「みかんごはん」が衝撃的でした。

ちょっと怖くて買えませんでしたが…

しかし、「愛媛みかん」そのものはやはり美味しいです。

今朝空港で飲んだ100%オレンジジュースは本当に美味しくて、普段ほとんどオレンジジュースは飲まない私が思わずおかわりしてしまいました。

ここまで名産品のカラーにこだわる街も珍しい気がします。

松山もまた面白い街でした。

やはり「みかんごはん」買えば良かったか…

2024年松山城二ノ丸薪能

今日は「松山城二ノ丸薪能」に出演して参りました。

6年前の2018年5月10日のブログに前回の二ノ丸薪能の事を書いておりますので、あれから6年ぶりの松山という事になります。

薪能の舞台はやはり滴るような新緑と重厚な石垣を借景にした、非常に趣きのあるものでした。

舞台の前に天守閣も見に行きました。

司馬遼太郎が、四国最大の城でありながら辺りの風景が優美なために厳しく感じられない、と書いているように、何処となく安心感を与えてくれるような落ち着いた城構えでした。

お城周辺には何故か猫がたくさんいて、薪能の間にも「ニャア」という声が微かに聞こえてきて、それも何か優しい感じがしました。