山々に守られて

今日は雨のパラつき出した東京を昼過ぎに出て、特急あずさで松本稽古に向かいました。

下諏訪あたりまでは降ったり止んだりだったのですが、トンネルをひとつ抜けて松本盆地に入ると雨は上がっていました。

水の入った田圃に空の薄青色が写って、瑞々しい初夏の風情があります。

松本は山に囲まれているので、雨も雪もその山々に遮られて、ひどくは降らないのです。

数年前の「松本城薪能」でも、台風の接近で舞台中止かと思いきや、ギリギリで天候が持って能「鵺」をなんとか舞えた記憶があります。

実は今年も8月8日に「松本城薪能」が開催予定です。

宝生和英御宗家がシテを勤められる能「紅葉狩」と、私がシテを勤めさせていただく能「経政」が出ます。

今回も天気だけが心配ですが、松本盆地を囲む山々に守ってもらい、なんとか舞いたいと思います。

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第17回関西宝生流学生能楽連盟自演会が開催されました

今日は香里能楽堂にて「第17回関西宝生流学生能楽連盟自演会」が開催されました。

各学校とも稽古の成果を存分に出し切った熱い舞台でした。

天候にも恵まれて、見所には関西宝連各校のOBOGの姿も多数見られて、一日中賑やかな雰囲気でした。

私が見て「これは素晴らしい…!」と感心する舞台がいくつもあり、やはり先生方の確かな稽古が根付いているのだと嬉しくなりました。

先日書かせていただきました京都女子大宝生会の久々の新入生は、「鶴亀」の仕舞を完璧に舞っていて、これまた嬉しい驚きでした。

明らかにセンスの良さが光っていて、今後がとても楽しみです。

京大宝生会の仕舞と謡も普段稽古で見ているよりも本番の方が出来が良く、この調子で全宝連も頑張ってほしいです。

後席の締めには「千秋楽」の謡を皆で謡い、今頃は二次会で盛り上がっている学校もあるかと思います。

次はいよいよ6月29.30日に京都金剛能楽堂にて開催の「全国宝生流学生能楽連盟自演会」です。

ホスト支部としてこれから色々とやる事が増えますが、全国の皆さんと京都で楽しく交流できるように学生も能楽師も一体となって準備を進めて行きたいと思います。

本物の松尾芭蕉はどれ…?

松尾芭蕉が「奥の細道」の旅へと出発したのは、元禄2年3月27日、新暦に直すと1689年5月16日のことです。

つまり今月は芭蕉が奥の細道へと旅立った月でもあるのです。

そしてその出発地点は私の東京三ノ輪の自宅から程近く、辺りの日光街道沿いには「松尾芭蕉」の像や絵が幾つも点在しています。

以前からそれらの像の横を通る度に思っていたのが、

「どれが本物の松尾芭蕉に一番似ているのだろうか」

ということでした。

何しろそれぞれの像が全く違う個性を持っているのです。

例えば、南千住駅前の銅像はこんな感じ。

そして北千住に近い旧日光街道沿いの木像は、

こんな感じです。

この2つはまだヒョロリと痩せている所など共通点が多いのですが、足立市場近くの石像は…

ふっくらして全然違うイメージです。

この石像が旅立ちの時点で、旅を続けていくうちに痩せていったとか…?

そして隅田川にかかる「千住大橋」の下には、芭蕉が船から上がっていよいよ奥の細道に出発する時の絵が描いてありました。

これまた先ほどの3体の像とはちょっと異なる風貌です。

しかしこの絵、実は松尾芭蕉を敬愛して奥の細道を実際に辿って旅をしたという「与謝蕪村」が描いた芭蕉の肖像なのです。

芭蕉と蕪村は時代も近いし、これはこの絵の「芭蕉」が一番本物に近いのかも…と思いました。

新作能「松尾芭蕉」ができたとしたら、どんな能面が似合うのでしょうかね…?

免許更新に行って参りました

今月は誕生月で、5年ぶりに免許更新に行って参りました。

内弟子を出てから運転することがめっきり減っております。

今では1年のうちで松本澤風会翌日の観光ドライブだけしか運転しない年があるくらいです。

以前は江東運転免許試験場に更新に行って、かなり時間がかかったと記憶しています。

しかし前回から近所の下谷警察署で更新できるようになり、また今回から事前予約制になったので待ち時間がほぼ無くなりました。

14時10分からの予約で、視力検査、写真撮影、講習など諸々終えて新しい免許を受け取るまでに1時間もかかりませんでした。

講習の時には講師の方から、

「5年後の講習はおそらくウェブ講習になるので、こうやって皆さんで映像をみるのは最後だと思います」

と言われて、こういう風に時間が短縮されていくのは大変良い事だと思いました。

運転回数は減りましたが、5年後もゴールド免許で更新できるように安全運転を心掛けて参ります。

大仁稽古場への坂道

今日は伊豆の大仁稽古でした。

大仁稽古場へは、伊豆箱根鉄道の「田京」という駅を降りて、東へ向かって山を登って行きます。

中々の急坂です。

途中で振り返ると…

伊豆長岡の「葛城山」が見えます。

ロープウェイもあるこの山は、御釈迦様が寝ているようにも見える事から「寝釈迦山」とも呼ばれるとか。

坂道自体は車道ですが、道の両側は緑に覆われており、鶯の囀りや蛙の合唱を聴きながら登っていくのは「放下僧クセ」のような風情でとても良い気分です。

遠くには薄っすらと富士山の影も見えます。

この急坂を10分程登ると稽古場の公民館があります。

急坂の先の稽古場と言えば「大山崎稽古場」の「宝寺」に向かう坂道が思い出されます。

(2017年2月20日のブログにこの坂道の事を詳しく書きました)

しかし実は宝寺は現在本堂などの改修工事中で、もう1年以上あの長くて急な坂道を登っていないのです。

何かちょっと寂しい気がして、早くまたあの急坂を登って大山崎稽古に行きたいと願っております。

第17回関西宝連のお知らせ

来る5月26日(日)13時より香里能楽堂にて、

「第17回関西宝生流学生能楽連盟自演会」

が開催されます。

これは「第17回阪神宝生流学生能楽連盟自演会」と、

「第129回京都宝生流学生能楽連盟自演会」

を合わせた催しです。

今年は各学校とも新入生が入ってくれたようで、新しい顔ぶれをたくさん見ることができそうです。

なにより大きなニュースがあります。

「京都女子大学宝生会」

が3年ぶりに新入生を迎えて復活したのです。

この4月の新歓イベントで石黒実都師とOGが力をあわせて仕舞を出した結果、その舞台に心を動かされた新入生が入部したいと言ってくれたそうなのです。

しかも聞けばとても真面目で稽古熱心な新入生だそうです。

過去に何度も能を出した事もあり、歴史ある「京都女子大学宝生会」を、何とかまた盛り上げていってほしいです。

京大宝生会も新入生がシテワキを勤める素謡「鶴亀」などが出るので、今週はきっと毎日空き時間に稽古している事でしょう。

もちろん上回生の舞台や、最後には指導する能楽師の番外仕舞もあります。

皆様香里能楽堂にて5月26日(日)13時開演の「関西宝連」に是非ご来場くださいませ。

よろしくお願いいたします。

外国人旅行者向けの古着物屋さん

昨日は午後に京都で時間があり、大きめのトートバッグが必要だったので探す事にしました。

寺町か新京極あたりにカバン屋さんがあるかと思い行ってみました。

するとカバン屋さんよりも先に目についたのが「古着物屋さん」でした。

以前は無かった場所に、男性用の着物もたくさん揃っているお店が何軒も出来ているのです。

男性用の古着物は意外に珍しいので、嬉しくなって覗いてみました。

3000円くらいの良いのがあれば、買ってみても…と思って安そうな着物の値札を見て仰天しました。

「10000円」

なんと、それは高過ぎるでしょう…

他の店でも、やはりいかにも安そうな古着物が

「3枚15000円」

とかで売られていました。

良くみれば、店の中にいるのは外国人ばかりです。

「そうか、インバウンドの外国人旅行者向けの古着物屋なのか」

と納得しました。

しかしこの高額な値段設定は驚きました。

心配になったのは、昔からある安い古着物屋さんまで、外国人向けに値上げしていないかという事です。

昨日は時間がありませんでしたが、今度は昔からのお店を覗いてみようかと思います。

ちょっと値札を見るのが怖いですが…

成長した2回生

今日は京大稽古でした。

次の日曜日26日に迫った「関西宝連」に向けての稽古です。

思えば昨年の今頃は、4回生1人と新入生6人という布陣でした。

OGさんの力を借りての地謡でしたが、仕舞も謡も初舞台が6人という大変な状況で、現役もOGさんも本当に良く頑張ってくれました。

あれから1年。

今年は現役2回生がそれぞれ力をつけて、仕舞地謡はお互いに地頭を交代して2回生だけで謡っていました。

入ってすぐの今年の新入生はこの関西宝連では素謡「鶴亀」だけで、仕舞の初舞台は6月末の「全宝連京都大会」になります。

現役が1、2回生だけという状況なので、今しばらくはできるだけ2回生に負担がかかり過ぎないように活動していってもらいたいと思います。

おそらく来年あたりには、また全盛期に近い部員数になっているでしょう。

その頃にはおそらく久しぶりの「能」も視野に入って来るだろうと期待しております。

薪御能の「附祝言」

昨日の興福寺薪御能は、金曜日土曜日と2日間開催の2日目で、我々宝生流の能「鉄輪」が最後の演目でした。

番組の最後に「附祝言」と書いてあります。

長い催しの最後には附祝言を謡うことがありますが、薪能で謡うのは割合に珍しい事です。

宝生流だけの催しでは無いので、一番メジャーな附祝言である高砂「千秋楽」を謡う事になりました。

しかしこのような玄人が舞う舞台での”附祝言”

にはちょっと難しい要素もあります。

終わったばかりの演能のせっかくの余韻が壊れてしまう恐れがあるのです。

なので、このような時の附祝言は、シテが幕に入りかけて、ワキが横板で幕に向いたくらいのタイミングで謡い始める事が多いです。

昨日は最後の演目が「鉄輪」だった事もあり、附祝言の「千秋楽」もあまり明るくなり過ぎないように、ちょっと控えめに、でも目出たく終わるように、加減して謡わせていただきました。

鉄輪の”負のエネルギー”…?

今日は午前中に水道橋宝生能楽堂にて定期公演の能「忠度」地謡を勤めて、その後すぐに奈良に移動して、夜に興福寺薪御能の能「鉄輪」地謡を勤めました。

この「鉄輪」はとても恐ろしく、シテからは強い「負のエネルギー」のようなモノが放射されているのを感じます。

その負のエネルギーはあまりに純度が高いので、それがかえって”美しさ”にまで昇華して、観る人を魅了するのだと思うのです。

この鉄輪の”負のエネルギー”がちょっと実感できる出来事がありました。

私は普段から「袖珍小謡本」という4分の1サイズの小さな謡本を持ち歩いています。

宝生流の全ての曲が一番ずつ分冊になっている本で、「和綴じ」です。

この「和綴じ」に使われている糸は非常に丈夫で、滅多な事では切れたりしません。

ところが何故か「鉄輪」の小本の糸が、購入して割と早い時期に切れてしまったのです。

ちなみにもう1冊、和綴じの糸が早くに切れてしまったのが「通小町」なのです。

こちらもやはり”負のエネルギー”が強い曲です。

私の小本はもう25年以上使っておりますが、そのうちで、糸が切れたのはこの「鉄輪」と「通小町」の2冊だけなのです。

単なる偶然なのでしょうけれど、私は「鉄輪」の小本の切れた糸を見るたびに、何となく”負のエネルギー”を感じて薄ら寒くなってしまうのです。