二重にうれしい日

今日は京大稽古でした。

4月から新歓を頑張っているのですが、今年は中々新入生が入ってくれません。

今日も何人か新入生が見学に来てくれると聞いており、なんとか今日1人でも入部してほしいと思いながら能楽部BOXに向かいました。

18時半頃に5限を終えた新入生が1人やって来ました。

そして自己紹介を終えた直後でした。

新入生「あの…僕宝生会に入部します」

…⁉️

あまりにサラッと言われたので私も現役達も皆一瞬固まって、次の瞬間に、

「おお〜‼️」

と喜びの声を上げました。

ついに今年も、新入生が入ってくれました!

その後、今度は数回見学に来てくれている新入生が、なんと高校生の妹さんと共に来てくれました。

そして稽古の後に入部を決めてくれたのです。

今日は京大宝生会にとって素晴らしい日になりました。

稽古を終えて「では新入生とご飯に…」

と言いかけると、現役の男子が「ちょっとお待ちください」

私「?」

現役男子「実は澤田先生の誕生日が近いということで作ったものがあるのです」

と言って、何やら大きなお皿を出してくれました。

これはなんでしょう…?

現役男子「これは炊飯器で作った”ハンバーグケーキ”です!」

なんと!直径20cm、厚さ5cmはある超特大ハンバーグでした!

誕生日ケーキをいただいた事はありますが、

「誕生日ハンバーグ」

は生まれて初めてです。しかも過去最大のハンバーグです。

そして人数分切り分けて、

「いただきます!」

皆で食べてみると、これが絶妙な柔らかさで大変美味しいのです。

このレベルならお店で出せるくらいです。これを作ったのが男子部員2名というのだから大したものです。

今日は”新入部員2名獲得”と”誕生日ハンバーグ”で二重にうれしい日になりました。

亀岡の花々〜花火のような花〜

今日は亀岡稽古でした。

例によって季節の花を探しに行くと、今回も初めて見る花が咲いていました。

ちょうど線香花火がパチパチと爆ぜているように見える純白の綺麗な花です。

初夏を迎えて緑が多くなった森の中で、遠目にも白く鮮やかに浮かび上がって本当に夜の花火のようでした。

しかし名前がわかりません…

今日はいつも花の名前を教えてくださる方も稽古お休みなのです。

頼りになるのはスマホの検索機能だけです。

「線香花火のような花」

とか、

「花火のような花 白」

と言ったワードで検索してみると…

似たような花はたくさんありますが葉っぱの形状から「カラマツソウ」という花と思われました。

ちなみに「カラマツソウ」の名前の由来は、「カラマツ」の葉っぱを見ると一目瞭然なので、是非調べてみてくださいませ。

名前がわかって満足して、さらに花を探してみました。

今回は先程も書いたように緑が多かったのですが、その中で、

「ガンゼキラン」

という絶滅危惧種の黄色い花が見られました。

また「ホタルブクロ」は蕾をたくさんつけていました。もうすぐ蛍が飛び始める頃に花を咲かせるのでしょう。

そして前々回は蕾だった「カノコソウ」は満開になっていました。

目まぐるしく移ろう季節とともに、花々も入れ替わっていきます。

秋に咲いて「アサギマダラ」という蝶の宿になる「フジバカマ」も、すくすくと茎を伸ばしていました。

加茂物狂のワキツレ

今日は国立能楽堂にて能「加茂物狂」の地謡に出演して参りました。

「加茂物狂」は宝生流の謡本では主な登場人物はシテ「狂女」とワキ「その夫」のみです。

しかし今日のワキ方の”福王流”ではその他にワキツレとして「賀茂明神の神主」も登場しました。

加茂物狂という曲は現在では一場ものですが、元々は前後に分かれていたようで、神主が出るのはその頃に近いやり方だそうです。

しかし神主が出ることで宝生流の謡本とはかなり違った構成になります。

謡が増える所があれば、ごっそり無くなる所もありました。

これだけ謡が変わるとシテや地謡にも影響しそうなのですが、驚いたことにシテ謡と地謡は全く変わらないのです。

我々シテ方は謡本通りの「加茂物狂」を謡って、ワキ方のみがガラリと変わるのです。

ワキ方の流儀によって微妙に謡が変わることは良くありますが、今日ほど大きく変化する曲はちょっと経験したことが無く、またひとつ勉強になりました。

時代も、国も飛び越えて

神保町稽古場の団体謡稽古では、曲が新しくなる度に、会員さんの一人が詳細な参考資料を作って解説してくださいます。

今は「昭君」を稽古していて、今日もその会員さんの解説を聞いてとても勉強になりました。

昭君は言わずと知れた中国のお話です。

しかし前シテツレの最初の謡

「散りかかる 花の木陰に立ち寄れば 空に知られぬ 雪ぞ降る」

は、実は紀貫之の歌

「桜散る 木の下風は寒からで 空に知られぬ 雪ぞ降りける」

が元になっているそうなのです。

また、クセの中の

「賢聖の障子に 似せ絵にこれをあらはし」

の”賢聖の障子”とは、なんと日本の御所の紫宸殿にある障子だそうです。

つまり能「昭君」の作者は、紀元前の中国のお話を、中世の日本人が理解しやすいように、巧みに日本の文物を取り入れて能に仕上げていたわけです。

現代でこれをやると、

「時代考証がなっていない!」

とクレームが来そうですが、能の作者は大胆に国や時代を飛び越えて曲を作っています。

それが結果的に「昭君」という曲のスケールを大きくしているように思えるのです。

やはり能は知れば知るほど新しい驚きと面白さがあると、今日の解説を聞いて再認識したのでした。

みかん色の街

昨日今日と「松山城二ノ丸薪能」に出演するために愛媛県の松山に行っておりました。

愛媛県と言えばなんと言っても「愛媛みかん」が有名ですが、松山市内はこの「みかん」の色で溢れていたのです。

バスも”みかん色”

路面電車も…

普通の電車も全て”みかん色”で統一されています。

ゆるキャラも、みかんと犬が合わさった「みきゃん」です。

最近は「こみきゃん」や「ダークこみきゃん」など、キャラが増えてきたようです。

そして食べ物では…

空港の売店で見た「みかんごはん」が衝撃的でした。

ちょっと怖くて買えませんでしたが…

しかし、「愛媛みかん」そのものはやはり美味しいです。

今朝空港で飲んだ100%オレンジジュースは本当に美味しくて、普段ほとんどオレンジジュースは飲まない私が思わずおかわりしてしまいました。

ここまで名産品のカラーにこだわる街も珍しい気がします。

松山もまた面白い街でした。

やはり「みかんごはん」買えば良かったか…

2024年松山城二ノ丸薪能

今日は「松山城二ノ丸薪能」に出演して参りました。

6年前の2018年5月10日のブログに前回の二ノ丸薪能の事を書いておりますので、あれから6年ぶりの松山という事になります。

薪能の舞台はやはり滴るような新緑と重厚な石垣を借景にした、非常に趣きのあるものでした。

舞台の前に天守閣も見に行きました。

司馬遼太郎が、四国最大の城でありながら辺りの風景が優美なために厳しく感じられない、と書いているように、何処となく安心感を与えてくれるような落ち着いた城構えでした。

お城周辺には何故か猫がたくさんいて、薪能の間にも「ニャア」という声が微かに聞こえてきて、それも何か優しい感じがしました。

3日ぶりに謡うと…

昨日までの3日間、つまり5月4〜6日は全く謡を謡わない3日間でした。

三重県の実家で能とは関係ない家の色々な用事で動いていたのです。

こんなに長い時間謡わない事は滅多にない事です。(覚え物のために謡本は開いていましたが…)

今日は終日リモート稽古の予定でしたので、3日ぶりに謡を謡いました。

3日喉を休めたので、喉の調子が良くなっているのか、或いは逆に謡わない事で感覚が鈍っているのか。

謡ってみるまでわかりませんでした。

そして最初の稽古で謡い始めてみると…

まあ全然普段と変わりませんでした。。

3日くらいでは良くも悪くもそんなに影響はないようです。

しかし思い返してみると、去年は今頃から喉の調子が悪くなり、夏頃まで3ヶ月ほど全く声が出なくなってしまったのでした。

今年は今のところ普段通りなので、気をつけてこのままの調子を保っていこうと思います。

実家にて

今日は三重県久居の実家に来ております。

今後ちょっとブログが休みがちになる可能性がありますが、私は全く変わらず元気にやっております。

遠く見える「布引山」。

布を引いたような平らな山は、今日も優しい表情で私を迎えてくれました。

裃の手伝い

“裃(かみしも)”を着るのは、特別な舞台の時です。

今日は綾部での会の最後に辰巳満次郎師の番外仕舞「三山」があり、そこで裃を着ました。

裃はひとりで着るのがちょっと難しいのです。

字の通り”上”と”下”に分かれています。

先ず”上”を羽織った後に”下”を普通の袴と同じように着るのですが、この時に”上”の背中部分が邪魔になり、誰かが背中部分の布を持ち上げてくれていると助かるのです。

内弟子時代にはこの裃を何とか自分一人で着られるように練習しました。

楽屋の人員が裃の補助で結構削がれてしまうのです。

その頃は補助に来る人を、

「あ、俺は大丈夫だから楽屋の仕事して!」

と断っていたのですが、最近は逆に断らずに手伝ってもらう事が多くなりました。

今日も若手に手伝ってもらいながら裃の着け方を教えたりして、そう言えば私も昔、先輩の裃の補助をしていた時に、

「君、そんなに引っ張ったら格好悪くなるから駄目だよ」

と、逆に邪魔になって怒られて反省したのを思い出しました。

裃を着用する舞台はとても華やかですが、楽屋ではその着付けでまた色々な学びと修練が必要なのです。

亀岡の花々〜杜若のイメージトレーニング〜

昨日亀岡稽古に行くと、つい先日満開だった「牡丹」が早くも葉っぱだけになっておりました。

入れ替わりに咲いていたのが、”顔佳花(かほよばな)”とも呼ばれるあの花…

「杜若」です。

今年もちょうどいい時期に再会することが出来ました。

毎年のように見るのですが、今年も亀山城跡のお堀に無数の紫色の点が散らばっているのを見ると、

「おおっ…!」

と思わず感嘆の声を上げてしまいました。

私にとって今年の杜若にはまた特別な意味がありました。

実は来年の澤風会で能「杜若」が出る予定なのです。

そしてこの亀山城跡の杜若は、三河の沢から移植されたもので、正に能「杜若」に出てくる花と遺伝子的にも同じものなのです。

来年に向けてこの「杜若」をじっくりと見て、「イメージトレーニング」をいたしました。

あまりに綺麗だったので、来年に能「杜若」のシテを勤める予定の方にも写真を送って

「イメージトレーニング」をしてもらうようにお願いしたのでした。