合宿謡納
京大合宿のお話が続きますが、やはり合宿の「謡納」のことは書いておきたいと思います。
「謡納」とは通常は年末に、その年最後の謡を謡う時に使われる言葉です。
しかし京大宝生会においては、合宿最終日に合宿中稽古した5曲を通して謡って終わることも「謡納」と呼ぶのです。
朝から全員が民宿離れの大広間に集合します。
今回の5曲は「氷室」「敦盛」「葛城」「咸陽宮」「紅葉狩」。
役は公平に籤引きで決めます。
ということは、1回生がシテになったりもするのです。
最初の「氷室」は、前シテ4回生、後シテ1回生、ワキ1回生、ツレ2回生、地頭3回生という布陣。
ワキ1回生は、なかなか正確に謡っています。
他の部員達は、広間の端の方で足を伸ばして聴いています。
行儀悪いと思われるでしょうが、これは彼らの足が正座をし過ぎて限界に達している為に、仕方ないことなのです。
初同(最初の地謡)が近づくと、皆どっこらしょという感じで立ち上がり、役の後ろに座っていきます。
座布団をたたんで座椅子にする部員もいます。
座るまでは辛そうですが、謡が始まると雰囲気はガラリと変わります。
17人が合宿最後の力を振り絞って謡う声には、ある種の凄味や、また一種の爽快感などが混ざった独特な雰囲気があって、聴いていると感慨深いものがあります。
彼らは本当に全力で謡うので、空調が効いた部屋にもかかわらず、「氷室」が終わると皆汗だくで戻って来ました。
私はその後「敦盛」「葛城」と聴いて、彼らの昼食に合わせて民宿を後にしました。
午後の2曲もきっと無事に終わったことでしょう。
今年の夏合宿も良いものになりました。
彼らは能漬けの日々の中でも、色々面白いことを考えてくれます。
例えば、合宿所の民宿離れには2階に部屋が4つありますが、「先生、2階の部屋に名前が付きました。手前からヤの間、ヤアの間、ヤヲの間、ヤヲハの間で、先生の部屋はヤヲハです」などなど。
また、何とダッチオーブンを持ってきた部員もいて、昨夜の打ち上げではケーキや燻製を作ってくれたりもしました。
「最近の若い者は…」とは批判的に使われる言い回しですが、京大宝生会に関しては「最近の若い者は大したものだなあ」と、自らの学生時代と比較してしみじみ感じます。
合宿お疲れ様でした。よく頑張りました。
こんにちは。いつも楽しく読ませていただいているのですが、今日はとくにとっても謡が謡いたくなるブログでした。
そしてさらに。猛烈にヤヲの間に泊まりたくなりました(笑)。ヤの間、ヤアの間、ヤヲの間、ヤヲハの間、なんと素晴らしいネーミング!!!ヤヲハの間に泊まった先生が羨ましいです。
先生、京大宝生会のみなさん、合宿おつかれさまでした!
河内様 いつもお読みいただきありがとうございます。ヤヲハの間の意味がわかる方に反応してもらえて有り難いです。是非一度京大合宿にもいらしてくださいませ。澤田