すごい記憶能力

ここ数日、謡をたくさん頭に入れては、舞台で謡い終わると消去して、また次の謡をインプットするということを繰り返しております。

私の記憶方法は前に書いたことがありますが、それは例えば受験生が英単語を覚えるやり方と同じ、つまり普通の人の記憶方法と何ら変わりの無いものだと思います。

しかし私が昔京大農学部林学科にいた頃に、非常に特殊で羨ましい記憶能力を持つ友人がいました。

彼は生まれてこの方、授業で「ノート」をとったことが無いというのです。

何故ならば彼は黒板に書かれた内容を暫く眺めると、まるで写真のようにその黒板の映像ごと脳内に記憶することが出来るということなのでした。

実際彼は成績も優秀で、大学院試にはトップで合格していました。

私が能の道に進んでからは連絡も取らなくなってしまいましたが、今能楽師として思うのは、彼の「映像記憶能力」があれば、謡を覚えるのは実に容易いだろうということです。

「遊行柳」の20ページ6行目にある節は「大のマワシ」だったな。などとすぐに思い出せれば。

いやもっと言えば、脳内に謡本の映像が見えれば、絶対に間違えずに謡うことが出来るはずなのです。

今から思えば彼にその「映像記憶能力」の事をもっと詳細に聞いておけば良かったです。何かコツがあるのか、など。

でも今となってはもう連絡手段がありません。。

…という訳で今日も、先ほど京阪神巽会で謡い終わった謡を脳内から消去して、新たに明日謡う謡を記憶するという作業を、苦しみながら進めるしか無い私なのでした。。

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