千歳一遇
宝生流の「翁」では、翁の他にもう1人シテ方が「千歳(せんざい)」という役を勤めて、若々しく颯爽と舞います。
私は20年ほど前に金森秀祥さんの翁の時に千歳を勤めました。
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今回の千歳は鶴田航己君。私が小さな頃から稽古をしている青年です。
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宝生流の定例会では翁も千歳も序列順に先輩から勤めるので、師弟や親子であっても翁と千歳を共演する事はまず無い事なのです。
今回も全くの偶然で、番組を見た時に驚きました。
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しかし私が翁で鶴田航己君が千歳という組み合わせは、稽古においては非常に有益でした。
「翁」の冒頭では、翁は左足から出て左足で止まり、千歳は右足から出て右足で止まるなどの非常に細かい決まり事があります。
歩数も決まっている所があり、2人でピッタリ歩みを合わせるのは中々困難なのです。
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それが今回は、翁稽古の時に毎回のように鶴田航己君と合わせる事が出来たので、本番では何の心配も無く幕から舞台まで歩む事が出来ました。
天から与えられた偶然に心から感謝したのでした。
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私が千歳を勤めた20年ほど前には、鶴田航己君はまだ小さな子供でした。
その鶴田航己君が翁を勤める時には、おそらく今は小さな赤ん坊が立派な青年に成長して、千歳を颯爽と舞う事でしょう。
(ちなみに「千載一遇」は「千歳一遇」とも書くそうです。今回初めて知りました)