戦さのような緊張感

今日は渋谷のセルリアン能楽堂にて、能「藤戸」の地謡を勤めて参りました。

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シテ高橋憲正さん、地頭和久荘太郎さん、ワキ野口能弘さん、間狂言山本則重さんは、いずれも私が東京芸大にいた頃の先輩と同輩です。

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芸大の頃はまだまだ修行が始まったばかりで、皆悩んだりもがいたりしていました。

それから20数年を経て、今日はその面々が中心となって、力を合わせて難曲「藤戸」に挑戦した訳です。

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長い長い道のりで、それぞれが弛まずに少しずつ積み重ねて来たものがあります。

例えば「声の質」「謡の位取り」「地拍子や囃子の知識」「型のキレ」と言ったものです。

今日の「藤戸」では、舞台上にいる楽師からそれらが一気に発散されて、ビリビリとぶつかり合っているように感じました。

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私は地頭の隣の位置におりましたが、何か大きな戦さに参加しているような心持ちでした。

少しでも気を抜くと最前線のせめぎ合いから弾き出されそうで、非常な緊張感を持って最後まで謡わせていただきました。

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若手能楽師が中心の今日のような催しは、先輩方の胸を借りるような舞台とはまた違った意味で、とても勉強になりました。

芸大の頃の仲間達とこの先も、今日のような緊張感を持って切磋琢磨していけたらと思います。

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