1件のコメント

大原から加古川へ

今日は朝に大原の京大宝生会合宿所を出て、加古川能に向かいました。

.

霧のような細かい雨に煙る大原の里は、それはそれで風情があるなあと思いながら、京都バスで国際会館駅へ。

そこから地下鉄で京都駅に出て、更に姫路行きのJR新快速に乗り換えました。

あとは加古川まで1時間半弱、謡を覚える時間です。

.

.

神戸を過ぎると、普段はあまり通ることのない地域に入っていきます。

私は新快速の進行方向右側の山手の席に座っていました。

.

謡本からふと目を上げて右手の車窓を見ると、松の木が立ち並ぶ公園の景色が目に入りました。

そして何故かその景色には見覚えがありました。

ずっと昔に来たような…

.

思い出しました。

あれは京大宝生会で能「箙」が出た時のことです。もう10数年前になります。

「箙ツアー」を企画して、何人かの部員で”一ノ谷”を訪れたことがありました。

.

確かその時に「須磨浦公園」という所にも行って、それがこの車窓の景色だと思われ…

と、そこでハッと気づいて私は左側の車窓を振り返りました。

.

窓の外には、須磨の浦がゆったりと広がっていたのです。

海は東海道新幹線で熱海の辺りを通る度に見ている筈なのに、何故かとても久しぶりに海というものを見る心地がして、静かに感動しました。

.

.

更に新快速は進んでいきます。

今度は前方に巨大な橋が見えて来ました。

「明石海峡大橋」のようです。

.

能「草紙洗」で紀貫之が詠み上げる和歌

「ほのぼのと 明石の浦の 朝霧に 島隠れゆく 舟をしぞ思ふ」

が頭に浮かんできました。

.

しかし車窓には圧倒的な迫力の明石海峡大橋が、淡路島に向けて「ドドーン」という感じで伸びています。

和歌に詠まれた明石の浦の風情は、とうの昔に無くなってしまったようでした。

.

.

仕事とは言え、今日の大原から加古川への移動は何か”旅情”のようなものを感じてとても心地よいものでした。

海の良い写真が撮れたらもっと良かったのですが、天気もあって中々難しかったです。

本当はもっと青く、のたりのたりとした「春の海」でした。

1件のコメント

  1. 須磨浦公園駅近くはとても懐かしい場所で、高校時代を神戸で過ごした頃も、よく遊びに行きました。昨秋、厳島神社観月能を観た後に、新神戸から山陽電鉄で、久しぶりに須磨浦公園で下車。美しい海と桜の紅葉を吹き抜ける風が心地よく、敦盛塚、さらには、明石まで行って、忠度の墓所と腕塚を参拝してきました。すべてが懐かしく郷愁に満ちていて、忘れられない旅になりましたことを思い出しました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です