2019年大山崎新年会

今日は大山崎稽古場の初稽古と新年会でした。

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大山崎の宝寺稽古場は、私が一番最初に稽古を始めた場所でもう15年目になります。

そして毎年新年会は宝寺のお座敷で鍋を食べることになっており、その鍋も15年来全く同じレシピで作られているのです。

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鍋に入れる具材は、

①レタス

②豚肉

これだけ。

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大きめの取り分け用の器には、

①ネギ

②大根おろし

③ポン酢

以上。

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あとは鍋にお湯と日本酒を1:1の割合で沸かして具材を投入すると出来上がりです。

あ、最後に薬味として辛味調味料「かんずり」を取り分け容器に入れるのが大切なのでした。

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10時〜11時まで謡を謡って、それから10人ほどで鍋の準備を始めて11時半には下のように全ての準備が終わっていました。

そして、食べている写真を撮るつもりがあまりの美味しさにうっかり忘れており、ふと気がつくと…

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締めのうどんしか残っておりませんでした。。

この鍋は自宅でも簡単に出来るのですが、何故か宝寺で食べると一層美味しく、いくらでも食べられてしまうのです。

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今日は紫明荘組からも3人来てくださり、そのうちお2人は初めての大山崎新年会参加で、大山崎鍋を美味しそうに食べておられました。

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そしてまた今日は、このホームページのお問合せフォームからご連絡いただいた方が見学に来られたという嬉しい出来事もありました。

新しいメンバーも加えて、今年の大山崎稽古場も変わらず頑張って稽古して参りたいと思います。

大山崎の皆様どうか本年もよろしくお願いいたします。

今年もお鍋ご馳走様でした。

正法寺での能楽教室

今日は岩手県の「正法寺」というお寺で能楽教室をして参りました。

東北新幹線の水沢江刺駅から車で20分程の山あいにある、とても大きなお寺です。

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境内に入ると、まず目に入ったのが巨大な本堂です。

なんと茅葺屋根で、面積は720坪に及び、日本一の茅葺屋根として国の重要文化財に指定されているそうです。

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この「正法寺」は曹洞宗のお寺で、建物や廊下の様子が昨年夏に拝観した永平寺に似ていると思いました。

そしてやはり沢山の修行僧の方々がいらして、その点でも何となく永平寺を思い出して、懐かしくなりました。

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能楽教室の会場はあの巨大な本堂の中にあるということで、長い廊下を本堂へ案内していただきました。

真冬の東北はもっと寒いかと覚悟して行ったのですが、今日は比較的穏やかな天気でした。

しかし、案内してくださった僧侶の方に「今日は暖かいでしょう」と言われた時は、「そうですね!」と答えながら内心「さすがに暖かくはないなあ…」と思ってしまいました。

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本堂はやはり中も広々として天井が高く、能楽教室には贅沢なスペースです。

元々は小学生向けの能楽教室でしたが、実際に始まってみると保護者の方々や飛び込みの拝観者の方、そしてたくさんの僧侶の皆さんにも参加していただいてとても賑やかになりました。

加えて、なんと御住職様までご参加いただき、俄かに緊張感のある能楽教室になりました。

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型の体験や、高砂の「四海波」謡の稽古、また能面の解説などを全て無事に終えて、控え室に戻ったところで御住職がいらっしゃいました。

御住職「能面の表情が”無表情”ではなく、あらゆる表情に対応出来るようになっている、というのは禅の思想に通じます。

“無”ではなく、分数で言う”分母が零”の状態ならば、上にどんな”分子”が来ても対応出来る、という考え方です」

…といった非常に高尚なお話を色々と伺いました。

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未熟者の私は完全に理解出来てはいないと思うのですが、深いところで共感を覚えるお話でした。

いつものことなのですが、能楽教室をすると私自身が勉強させていただくことが多いのです。

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今回の御縁をきっかけに、正法寺さんでは今後能楽教室やより本格的な公演を計画して参りたいと思っております。

また途中経過をご報告したいと思います。

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御住職を始め正法寺の皆様、また岩手未来機構の皆様本日はどうもありがとうございました。

冬の奥州市へ

今日は水道橋での「五雲会」の後に、東北新幹線で岩手に移動しております。

明日は「岩手未来機構」さんの主催による小学生能楽教室があるのです。

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場所は「水沢江刺駅」から近い山の中のお寺とのことです。

水沢江刺といえば、私には去年の初夏のことが思い出されます。

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去年5月終わりの夜能「夜討曽我」シテの後に俄かに喉が枯れてしまい、暫くの間掠れ声が治りませんでした。

その時に松本の「クチーナにし村」さんから蜂蜜をいただいたのです。

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蜂蜜は喉に良いということで、毎日スプーン一杯舐めながら喉を治しました。

その蜂蜜の産地が「水沢江刺駅」のある奥州市の近辺だったのです。

(詳しくは去年6月4日のブログに書いてあります)

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今はおそらく雪に閉ざされている奥州市の森林や草原。

去年の春にそこから蜜蜂達が集めてきてくれた蜂蜜は、喉を癒やす効果を越えて「蜂蜜はこんなに豊穣な味がするのか」と、驚くほどの美味しさでした。

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今回初めて降り立つ「水沢江刺」。

周りの森や山や、今は活動していない蜜蜂達に感謝しながら、明日の能楽教室を頑張りたいと思います。

明日はセンター試験

大学入試センター試験がいよいよ明日になりました。

今年はよく見知った高校生達が何人か受験するので、私も例年よりドキドキしています。

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先ずは良い体調で、予定通りに試験会場に到着できますように。

東京は穏やかな天気になるようですが、全国的には厳しい気候の所もあるでしょう。

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能の舞台とセンター試験には全く接点がありませんが、「とにかく冷静に、稽古(模試)のつもりで普段通りに臨むのが一番良い」という点は似ているかもしれません。

…とは言いながら私の場合、昔受験した時には試験会場で本当に直前までジタバタと暗記をしていた記憶があるので、実は全く冷静ではありませんでした。。

しかし、とりあえず解答用紙に名前と受験番号を確実に記入したところで「ああ、模試と同じ感覚になってきた」とちょっと落ち着いた記憶があります。

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また去年の試験では”ムーミン”の問題が話題になりました。ムーミン好きの受験生は問題を見て、内心ちょっとニヤリとしたのではないでしょうか。

私の時のセンター試験の国語では、馬場あき子さんの能に関係する文章からの出題があって、私は思わずニヤリとしてそこから少しリラックスできました。

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明日明後日のセンター試験、近しい高校生達、そしてこの春に京大宝生会に入るかもしれない受験生の皆さんが、頑張ってきた勉強の成果を発揮できるように、心よりお祈りしております。

風邪予防のために

今日は朝から水道橋宝生能楽堂にて「五雲会」の申合があり、私は能「小鍛冶」の地謡を勤めました。

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私の周りではそろそろ風邪やインフルエンザが流行りだしており、今日も体調不良でお休みの楽師がいました。

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私は能楽堂や稽古への行き帰りはマスクで風邪予防しています。

しかし、舞台の上は勿論のこと、楽屋や稽古場でもマスクは外さなくてはなりません。

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これらの場所でもなんとか予防する方法は無いものかと思っていたら、「エアーマスク」というものがあるのを教えてもらいました。

ネームホルダー型の「エアーマスク」を首から下げておくと、屋内の閉じた空間内で自分の周囲を除菌してくれるらしいのです。

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効果の程度は未知数ですが、早速購入してみました。

今シーズンはこれまで全く風邪の気配も無く健康体を維持しているので、何とか「エアーマスク」の力も借りて、このまま乗り切りたいと思っております。

3件のコメント

リンボウ先生の和歌の講義

今日のニュースで「歌会始」が皇居にて催されたと知りました。

歌会始で歌を読み上げる時の独特の抑揚は、一度聴いたら耳に残ります。

「変わった読み方をするなあ」と思う人も多いでしょうが、私にとってはあの抑揚はそれ程違和感を感じないものなのです。

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というのは、謡の中で和歌を詠むシーンは割と頻繁に出てきて、その時には和歌に”節”をつけて、歌会始風にゆっくりと読み上げるからです。

私は澤風会稽古の時など、逆に「和歌を読み上げる謡は、”歌会始”のような心持ちで謡うと良いです」と会員さん達に言っているくらいです。

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そういえば、東京芸大時代に和歌に関する林望先生の講義を受講した時のことを思い出しました。

試験はレポート形式で、和歌に関する事ならなんでも可、というゆるい条件のレポートでした。

ちょっと考えて、「百人一首」の何首かの歌に謡の節を付けて、それを私が歌会始風に読み上げた音源を提出したら単位を貰えたのです。

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その講義では、「1人一首の和歌を詠む」という回もあり、15分ほど時間を与えられて参加者全員で「う〜ん」と唸りながら和歌を考えたものです。

私は結局、京大能楽部の旧BOXでのことを詠みました。

「謡ひ終へ 窓辺に寄りて 涼み居れば

北山の上を 行く夏の雲」

夏の旧BOXは本当に暑くて、エアコンなど無いので大きな窓をとにかく全開にして稽古したのでした。

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いつか時間が出来たら、和歌を詠む勉強もしてみたいものです。

何もない一日

今日は予定の用事がキャンセルになり、何も仕事が無い一日になりました。

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ブログを毎日更新していると、よく「忙しい毎日を過ごしていて大変ですね」と言われるのですが、実は本当になんにもない日もあるのです。

というわけで、今日は特に何もせずにゆっくり過ごしてしまいました。

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昔京大にいた頃に、サカキナナオという詩人の詩に感動したことがありました。

「すばらしい一日」という題名で、

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水を汲み

薪を運び

隣で喋り

日が沈む

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という内容だったと覚えています。

私も今日はほんのすこしだけこの詩の気持ちで過ごしました。

短いですがこれにて。

2019年松本新年会

昨日の月並能から、私の2019年の舞台が本格的に始まりました。

とはいえまだ新年会のシーズンでもあり、今日は松本稽古場の初稽古と新年会でした。

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稽古後の新年会は例年通り「クチーナにし村」さんで美味しいイタリアンをいただきました。

なんと今日初めて稽古見学に来られたご夫婦が新年会まで参加してくださり、また稽古場が賑やかになりそうです。

ご夫婦は安曇野北部のアルプスの麓にお住まいで、森の中に御宅があって御主人は山登りが大好きだとか。色々面白そうなお2人で、これから稽古しながら色々お話しを伺うのが楽しみです。

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この1年ほどで松本稽古場に新人さんが増えてきたので、稽古の形態を少し変えることにしました。

謡を曲を”初級者向け”と”上級者向け”に分けて、仕舞→”上級者向け謡”→仕舞→”初級者向け謡”→仕舞というように交互に稽古するようにします。

江古田もそうですが、今年は先を見据えて稽古形態を整え直す年になりそうです。

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新人さんへの紹介を兼ねて、会員さんそれぞれ改めて稽古を始めたきっかけからの自己紹介をしていただいたりして、約10年間の歩みを振り返るような新年会になりました。

今日来られなかった方や、事故で怪我をしてしまった方などもおられたのですが、それらの皆さまもまた稽古場で元気にお会いしたいです。

松本の皆さま本年もどうぞよろしくお願いいたします。

新春の月並能

今日は水道橋宝生能楽堂にて「月並能」が開催されました。

私は能「国栖白頭」の地謡を勤めました。

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能の地謡は昨年12月の月並能以来なので、約1カ月ぶりになります。

期間が長めにあいたのと年が改まったのとで、なんだかとても新鮮な気持ちで地謡座に座らせていただきました。

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以前にも書きましたが、1月の月並能では地謡が”裃”を着用します。

そして舞台の四方の柱の上の方には注連が張り巡らしてあり、いかにも新春らしい清浄な雰囲気でした。

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この先は五雲会や名古屋宝生会、新作能や国立能楽堂公演などが立て続けに控えており、いよいよエンジン全開モードになって参ります。

春を待つ”花の兄”

今日もまた”今年初めて”の亀岡稽古でした。

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朝に四条木屋町近くの宿を出ると、鉛色の空の下に寒風が吹きすさんでいて、思わずぶるっと震えました。

道行く人もポケットに手を突っ込んでマフラーを厳重に巻いて「寒っ!」という表情で歩いています。

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しかし携帯のニュースを見ると、東京は今朝初雪が降ったのですね。

むしろ雨雪が降らなかった分、京都の方がましな気候だったのかもしれません。

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亀岡稽古場は新年の様々な行事も終わっていて、静かな冬の佇まいでした。

華やかな花などは咲いていませんでしたが、梅の枝にはたくさんの蕾がついていました。

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もちろんまだまだ蕾は硬く閉じられていましたが、「春を迎える準備は今年もちゃんとしていますよ。」と主張しているように感じられました。

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春になると他の花に先立って咲くので、梅は別称「花の兄」とも呼ばれるそうです。

これは能「難波」の謡にも出て来ます。

今日の亀岡の梅は、「準備を怠らないしっかり者のお兄さん」というところでしょうか。

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もちろん、冬の寒さはこれからがむしろ本番です。

しかしその厳しい寒さに耐えてあとひと月半もすると、早春の訪れとともに梅だけでなく、「花の弟」や「花の妹」にあたる花々も咲き始めることでしょう。

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なんだか受験生の皆さんのことも思ってしまいました。

風邪などひかずにこの冬の受験を乗り越えて、どうか暖かい春を迎えられるように祈っております。