殺生石の”KP”と”HP”
今日は水道橋宝生能楽堂で開催された「夜能」にて、能「殺生石」の地謡を勤めました。
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「殺生石」は、最初の地謡である”初同”を謡い始めると、その後”クリ”→”サシ”→”クセ”とずっと続けて謡うことになります。
それぞれの箇所で強さ、早さを微妙に変化させて適切な雰囲気を作り出すのが難しいところです。
“クセ”の中だけでも緩急や強弱が変化します。
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“クセ”まで無事に謡い終えて一度扇を置いて、ふと昔の出来事を思い出しました。
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10年程前に京大宝生会の現役部員から、「謡の稽古の時に”KP”と”HP”という言葉を使うのです。」と聞いたのです。
「ここは”KP”だから気をつけるように」
とか、
「この辺りは”HP”を使って!」
という風に使う言葉のようでした。
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私「へえ〜、それはどういう意味?」
現役「”KP”というのは”気合いポイント”のことです。そこでは特に気合いを入れて謡わなければなりません。」
私「成る程。じゃあ”HP”は何のポイントなの?」
現役「いえ、そっちはポイントではなく、”腹パワー”の略です。謡本に”HP”と書いてある箇所は、とにかく腹に力を入れて謡うのです。」
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今日の「殺生石」だと、”KP”はおそらく「クセ留」の「玉藻 化生を元の身に」の辺りと、「中入地」の「石に隠れ失せにけりや」の辺りでしょうか。
“HP”は勿論最後の「キリ」の部分で、今日も渾身の”腹パワー”で頑張って謡ったのでした。
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“KP”と”HP”、緩急強弱を表すのにとても適した面白い表現だと思います。
今の京大宝生会の現役も、試しに使ってみたら良いかもしれません。