般若か顰か
今日は宝生能楽堂にて五雲会に出演いたしました。
私は初番の能「小督」の地謡を勤めました。
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小督が無事に終わり、その後私は最後の能「紅葉狩」のツレの装束などをつけました。
そして紅葉狩が始まってシテとツレが舞台に出てしまうと、楽屋の仕事は一段落です。
「紅葉狩」は中入での装束の着替えを、舞台上の作り物の中で済ませるのです。
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なのでモニターで「紅葉狩」の舞台を見ながら、何人かの若手能楽師で話をしていました。
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「紅葉狩の後シテは、今日みたいに般若の面でやる時と、”顰(しかみ)”をかける時があるね」
「でも、”顰”は男の鬼だから、この場合おかしいんじゃない?」
「実はシテはオカマだったとか…」
「…」
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確かに、前シテは妖艶な女性なのに後シテで男の鬼に変身するのは違和感があります。
しかし「紅葉狩」の謡本には、何故か後シテが”顰”のバージョンの装束とイラストが載っているのです。
そちらが本来なのでしょうか…?
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答えは出ないままに、また別の楽師が話し始めました。
「そういえば、先月の月並の留(最後の能)が”葵上”、先月の五雲会の留が”鉄輪”、今月の月並の留が”黒塚”、今日の留が”紅葉狩”だから、ずっと鬼女で終わる能が続いてますね」
確かに。では来月の月並の留は…
「乱 和合」でした。面は当然”猩々”です。
そして来月五雲会の留は、私がシテの能「舎利」。面は”顰”です。
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私「こうなったら乱も舎利も、般若で出ちゃう…とか(笑)」
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などとつらつら話しているうちに能「紅葉狩」も無事に終わり、楽屋はまたバタバタと片付けの仕事に突入したのでした。