吉備津神社の鳴釜神事
今日は3回目の岡山子供能楽教室の日でした。
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いつものように吉備津神社に到着すると、吉備津造りの本殿の前には無数の赤蜻蛉が飛び交っています。
先週は大粒の雨が降る社殿の写真を載せましたが、今週は強烈な残暑の日差しと赤蜻蛉の群舞です。
吉備津神社は来る度に違う顔を見せてくれる所なのです。
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今回私は、「鳴釜神事」を体験しようと思っておりました。
御釜殿の中にある大きな釜を焚いた時に鳴る音で、吉凶を占うという神事です。
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事前に聞いた情報として、
「この鳴釜神事は必ず当たるので、心して願い事を考えていくべし」とか、
「団体で行っても、全員同じように聴こえるとは限らず、1人だけ聴こえない場合もある」
とか、他にもかなりリアルな体験談があり、
「全然鳴らなかったらどうしよう…」と心配になってしまいました。。
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しかし折角吉備津神社に何度も訪れるこの機会に、やはり鳴釜神事を体験しない手はないと腹をくくり、社務所で祈祷料を払ってまずは「祈祷殿」で御祈祷を受けました。
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私の他に、母娘とおぼしき2人が御祈祷を受けていました。
彼女達は毎年のように鳴釜神事を訪れているベテランで、御祈祷の後に「御釜殿」まで道案内をしてくれました。
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長い長い回廊を通って御釜殿に向かいます。
母娘は、「来る度に違う音に聴こえるのです。」「前から聴こえたり後ろから聴こえたり、床から湧き上がるように聴こえることもあります。」などなど、色々体験談を話してくれました。
「でも、全然鳴らないことは一度も無かったので、きっと今日も鳴りますよ。」と心配そうな私を励ましてくれました。
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ドキドキしながら御釜殿に入り、暫し釜が焚かれるのを見て時間を過ごします。
10分程して、「阿曽女」と呼ばれる巫女さんと、祝詞を奏上する神職の方がいらっしゃいました。
阿曽女さんが鳴釜神事の簡単な説明をしてくださいます。
「天気の具合などで、どうしてか幾らやっても鳴らないことがあります。」と聞き、またまた心配になってしまいました。。
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いよいよ祝詞が始まり、同時に阿曽女さんが大釜に載った蒸籠の上で、玄米の入った笊を振り始めました。
ここからどのくらいで釜が鳴り出すのだろうか…
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と思った瞬間。
玄米の笊はまだ僅か3回程しか振られていなかったと思います。
出し抜けに「ボォーッ!」というような太く大きな音が聴こえてきたのです。
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私の横にいた母娘も思わずビクッと顔を起こしてしまう程の、腹に響くような大迫力の音が長く長く鳴り続けました。
ややして音は少し落ち着いた調子になり、祝詞も終わって鳴釜神事は無事終了しました。
阿曽女さんは釜から離れて、「直会です」と言って我々の所に来て玄米の粒をいくつかくださいました。
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そしてそれを食べようとした瞬間。
もう阿曽女さんがいない釜から、控えめながら再び「ボォーッ」という音が!
また母娘と一緒にビクッとしてしまいました。
「あら、今日はよく鳴りますわね。」と阿曽女さんは平然とされているので、まあ普通にあることのようです。
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しかし、正直ここまで大きくはっきり聴こえるとは驚きました。
何を祈願したのかは言わぬが花ですが、ちゃんと聴こえて安堵いたしました。
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御祈祷の効果か、子供能楽教室もとても順調に進みました。
仕舞も謡も前回より格段に良くなっていて、これは各々がこの1週間でちゃんとおさらいをして来てくれたのだと嬉しくなりました。
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いよいよ来週は、拝殿で神様に向けて謡と仕舞を奉納する本番があります。
今年吉備津神社に参るのもあと1回になりました。
なんだか既に少し寂しい気分なのです。
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いつもの松並木を通って、吉備津駅へと向かいました。
松の影が、青海波ならぬ緑の海に映ってそよいでいました。