必死の鸚鵡返し

昔私が京大宝生会に入部してから約2ヶ月後の6月に、全宝連東京大会が開催されました。

一回生は仕舞は舞えず、私は素謡だけに参加しました。

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その素謡は「巴」の後半、ワキの待謡から最後まで。

もちろん無本でした。

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4月に入部して、まだ鶴亀しか稽古していない私が、5月に京宝連が終わってからの約1カ月だけの稽古で「巴」を無本で謡わなければならないのです。

稽古は困難を極めましたが、むしろ教える先輩が本当に大変だったと思います。

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結局、記号などは曖昧なまま、丸暗記して何とか謡った記憶があります。

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時は流れて、現代の京大宝生会。

5月に関西宝連が終わった後、私が稽古に行くとBOXの中は新入生と先輩の鸚鵡返しペアで溢れていました。

やはり時代が変わっても、やる事は変わらないのです。

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私「仕舞の稽古の間に、空いている人は外で鸚鵡返ししても良いよ」

現役達「すみません、御言葉に甘えさせていただきます…!」そして新入生を連れてわらわらとBOXを出て行き、やがて外から鸚鵡返しの声がたくさん聴こえてきました。

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今回の素謡は「三山」。

稽古を積んだ人にとっても中々手強い難曲です。

遠くで聞こえる鸚鵡返しも、悪戦苦闘しているのが明らかにわかりました。

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そして今日は、明日に迫った全宝連名古屋大会前の最後の稽古です。

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私は舞囃子だけ稽古しに行ったのですが、帰ろうかと思ったところで「これから三山を合わせて、解散します!」との部長の声が。

それなら聴いてから帰ろうと思いました。

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一回生を含めた今回のフルメンバーが舞台にずらりと並んで、「三山」が始まりました。

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約20分間の無本の素謡。

結論から言うと、声が良く揃っていて一回生の声量も大きく、相当な努力をしたことがわかりました。

あの悪戦苦闘していた鸚鵡返しの成果が、ちゃんと出ていたのです。

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あとは明日の本番を待つばかりです。

舞囃子も仕舞も含めて、今回もまた良い準備が出来たと思います。

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明日は名古屋能楽堂の見所で、皆の努力の結果を目に焼き付けたいと思っております。

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