いつの間に…!
江古田稽古場で稽古している、今度小学五年生になる男の子。
これまで稽古した仕舞はすべて、いわゆる「荒い物」というジャンルでした。
元気よく、次から次へと派手な型が繰り出されるような仕舞です。
(私だけの呼び方で「ノンストップ仕舞」と言っております)
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先日の郁雲会澤風会では「歌占キリ」を舞ったその子が、今日江古田稽古場に来るなり「新しいノンストップ仕舞を考えよう!」と言って来ました。
しかし私は…
「うーん、今回はノンストップ仕舞じゃなくて、ゆっくりした仕舞にしようと思うんだよね」
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彼も相当な番数の仕舞を経験して来たので、そろそろ”新境地”を開拓してみようかと思ったのです。
「羽衣キリという仕舞にします!」
と厳かに宣言して、早速稽古を始めました。
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とは言ってみたものの、これまでとは全く違う雰囲気の仕舞です。はたしてついて来てくれるのか、不安でもありました。
しかし…
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「東遊びの数々に〜」と舞い始めると、ちゃんとゆっくりした速さで足を運んでくれます。
「一番前で、引分をします」と言ったら、これも「田村キリ」などと違う、ゆったりとした「引分」がしっかり出来ています。
つまり、「柔らかい物」の速さは他の人の舞台を見て何となく覚えていたのでしょう。
また、型の名前も正確に覚えているようです。
私の予想以上に、いつの間に成長してくれていたのですね。
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またその子のお姉ちゃんは、幼稚園から始めてもう10年以上稽古しており、最早「ベテラン」と言っても良いくらいです。
こちらも次の曲を何か…と言いかけたところ、
「先生、実はやりたい曲があるのです」
おお!これも初めてのパターンです。
「小学四年生の時に京都の舞台で○○さんが舞っているのを見て、いつかやりたいと思っていた曲なのです」
なんと、そんなに前からやりたいと思い続けた曲があるとは。
その曲は、本来なら難しい曲なのですが、そこまでの思い入れがあるのならばとOKしました。
夏の「七葉会」で披露されるはずです。
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今日はその姉弟それぞれがまた一段成長したのを実感して、嬉しい驚きを感じたのでした。