20年後の飛翔
今日は水道橋で五雲会がありました。
無事終わって帰って参りましたが、今頃日本中は羽生選手の金メダルで沸き立っている事でしょう。
私も勿論すごい事だと感動しましたが、今日はもうひとつ、とても気になる競技があるのです。
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スキージャンプ・ラージヒル決勝に、葛西紀明選手が出場します。
葛西選手は今から20年前、長野五輪のスキージャンプ団体のメンバー入りが確実視されながら、土壇場の前日練習でメンバーから外れてしまったのです。
そのスキージャンプ団体で原田雅彦選手らの日本チームは、吹雪の中の本当に劇的な戦いの末に優勝しました。
優勝の同じ時刻に、葛西選手は宿舎で失意のどん底にいたそうです。
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しかし葛西選手はそこで折れませんでした。
それから現在までの20年という気の遠くなる時間をずっと、世界の第一線で戦い続けて来たのです。
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そして今日2月17日、まさにあの長野五輪ジャンプ団体金メダルからぴったり20年目のこの日に、葛西選手は自身の金メダルを目指してラージヒル決勝に臨むのです。
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20年前にもし団体メンバーに順当に選ばれて、金メダルに輝いていたとしたら、今日の彼はいたのでしょうか。
「このままでは絶対終わらない、終われない」という強烈な悔しさがもし無かったとしたら、おそらくこの20年の間に引退されていたのではと私は想像します。
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夢が叶って美しく完結する物語があれば、夢が破れた失意の底から始まる物語もあると思います。
そして能楽においては、後者の物語の主人公にスポットが当たることが多いのです。
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葛西選手の出場はまだこれからなので、結果はわかりません。
しかし悔しかった長野五輪から、その悔しさを原動力にして飛び続けた葛西選手の20年に、私は深く敬意を表したいと思います。