昨日の反省…

昨夜のブログで「金沢では冬に稲妻が光る」と書いたら、その直後のニュースで「金沢でテレビ塔に落雷があり、放送が中断した」ということを聞いて本当に驚きました。

.

去年の冬に、青森の雪の大変さを知らなかった自分の無知を恥ずかしく思う、という内容のブログを書きました。

今回はまた北陸の冬の落雷の恐ろしさを知り、その後おそらく夜を徹して命懸けで修復にあたられたであろう関係者の御苦労を思い、「冬の稲妻が見てみたい」などと書いた己の無知を反省いたしました。

復旧作業が無事終わるよう祈っております。

.

.

全く別の話題になってしまうのですが、今日の江古田稽古の終わりに母親から嬉しいニュースを聞きました。

何と日本女子大の母親の謡曲仕舞教室に、本日午後に学生が2人も入会したとのことなのです。

.

早速「羽衣キリ」の仕舞を稽古したそうです。

とは言え、実はお2人とも四年生らしく、すぐに卒業してしまうということです。

.

しかし彼女たちは3月2、3日の郁雲会も観に来てくれるそうなので、京大宝生会と日本女子大の学生との邂逅という楽しみが増えました。

.

とても良い流れが来ているのは間違いないので、この春の新歓で三年生以下の学生が入ってくれる可能性は充分にあります。

.

また今後の経過をご報告させていただきます。

.

今日はまとまりが無くて恐縮ですが、これにて失礼いたします。

木の間に光る稲妻は…

今日は冬型の気圧配置で寒い中、香里能楽堂にて今週土曜日開催の七宝会新春公演の申合がありました。

.

能「葛城 神楽」の地謡を謡ったのですが、この葛城のクセに、「葛城や 木の間に光る 稲妻は」という歌が引用されています。

.

稲妻というと、太平洋側で育った私は夏だけ見られるものだとずっと思っておりました。

.

ところがある時、金沢出身の京大宝生会の後輩T君から、「金沢辺りでは、冬には雪が降る時に稲妻が光るので、葛城クセの内容は非常に良くわかります。」と聞いたのです。

.

それはもう10年程前に、そのT君がシテを勤めて、京大宝生会が能「葛城」を出した時の話でした。あれは思い出深い演能でした。

.

その年の秋。

京大宝生会は、葛城山上の国民宿舎で「葛城 能合宿」を敢行しました。

.

夜に皆で外に出て、すすきが靡く山頂でT君が「葛城キリ」を舞った時のこと。

丁度地謡が「月白く雪白く…」という文句に差し掛かった所で、夜空を覆っていた雲が一瞬途切れて、雲間から一筋の月光がT君を目掛けてサッと射し込んできたのです。

.

居合わせた全員が、鳥肌が立つような何とも言えない気分になりました。

「葛城の神様」という存在を強く感じたのです。

.

この能合宿ではその後も、いくつも不思議なことがありました。

.

そして11月半ばの本番の朝。

京都市内に季節外れの雪がぱらついたのです。

「葛城の神様がやって来たのだ」と皆で言い合いました。

.

最後まで神がかっていたこの時の能「葛城」。

舞台が終わって数年後には、シテT君と地頭のWさんが結婚するという後日談まで付きました。

葛城の女神は縁結びの神様でもあられたのでしょうか。

.

私はその後も現在に至るまで、稲妻と共に降る雪を見ることが叶わずにいます。

いつの日か見てみたいと願っております。

.

.

.

因みに今度の七宝会新春公演での能「葛城」は、「神楽」の小書が付くので、通常の葛城をご存知の方は「おお!」と驚くような変化があると思います。

.

香里能楽堂にて13日土曜日13時半始曲の七宝会新春公演に、皆さま是非お越しくださいませ。

今年も動く若手OB達

1年前の1月終わりに、金沢にて京大宝生会若手OB OGと、その仲間達約30人が集まっての「大稽古会」を開催して、大きな成果がありました。

.

皆それぞれ仕事や学業が一番忙しい年回りのメンバーです。

.

大稽古会では奇跡的に大勢が集まりましたが、その後はやはりなかなか大人数で集まる機会がありませんでした。

.

.

しかし、その忙しさの中でも若手OB OG達は着実に活動しています。

.

一昨日の日曜日の夜に、若手OBの一人からメールが来ました。

「明日の京都稽古に若手OB OGが集まるので、稽古よろしくお願いします」との事。

.

そして昨日、紫明荘に代わる新しい京都稽古場のひとつ、「北文化会館」に6人の若手OB OGが来てくれました。

.

稽古はとりあえず郁雲会に参加してくれる人の為の謡「大会」と、同じく郁雲会で出る能「巻絹」のツレ、そして仕舞「半蔀クセ」「野守」「歌占キリ」などが中心でした。

.

しかし実は今年の後半に再び「大稽古会」を関西で開催する計画があり、その舞台に繋がる「邯鄲」の謡の稽古もいたしました。

.

また昨日聞いた話では、昨年の大稽古会の中心だったドイツ在住の若手OBが、今月下旬に一時帰国して、関西OBの重鎮の方の謡稽古を受ける計画などもあるとのこと。

.

.

京大宝生会若手OB OG達は、去年と同様に色々自主的に企画して動いてくれています。

頼もしい人達です。

.

私は企画段階ではあまり役に立たないのですが、とにかく稽古を頑張って、その企画が成功する後押しを今年もして参りたいと思います。

成人式の頃

今日は成人の日だったのですね。

しかし私は終日京都の稽古だったので、新成人らしい格好の人を見ること無く終わりました。

.

.

私の成人式は遠い昔の話ですが、かすかに覚えております。

.

練馬区民だった私は、「豊島園」という遊園地での成人式でした。

江古田駅から豊島園行きの西武池袋線に乗ると、如何にも新成人らしい若者たちが沢山乗っています。

.

不意に「澤田くん!」と声をかけられて振り向くと、全然知らないキラキラした女性がいました。

こんなキラキラした知り合いがいたかな?と一瞬怪訝な顔をすると、女性は「開三中の○○です。覚えてる?」

なんと、振袖姿の中学校の同級生だったのです。

.

同級生の女子はそれから豊島園でも何人か見かけましたが、ほぼ例外無く一目ではわからない程に綺麗に着飾っていました。

.

一方で男子は、「おお!お前全っ然変わらんなあ。ちょっとは成長しろよ!」と声を掛け合う程に、代わり映えのしない奴らばかりでした。。無論私も含めて。

.

.

成人式の頃は、私は大学一回生でした。

京大宝生会にもまだそこまでハマっておらず、将来は森や自然に関わる仕事がしたいと漠然と考えておりました。

.

椎名誠さんや、カヌーイストの野田知佑さんの本を読んでは、1人で山を歩いたりキャンプをすることに最大の喜びを感じていました。

あれから色々な事があって、思えば遠くへ来たものです。

.

.

.

今日成人式を迎えた皆さん、本当におめでとうございます。

人生を強引に京大宝生会四年間に例えてみると、新成人の皆さんはまだ一回生が終わった辺りですかね。

これまで稽古したのは基礎的な型や謡で、これからいよいよ自分のやりたい曲を、どんなに難しくても頑張って稽古していくのでしょう。

.

…そう考えると、私は現在三回生の半ばくらいに相当します。

良い最上級生になれるかどうかは、今頃の稽古にかかっている訳ですね。

新成人の皆さんに負けないように、頑張らなくては。

1件のコメント

七草の日

今日1月7日は五節句のひとつ「人日の節句」にあたる日で、「七草粥」を食べる慣わしがあります。

.

考えてみれば、私はもう長いこと「七草粥」を食べておりません。。

しかし京大宝生会現役の頃は、毎年1月7日に小川芳先生のお供をして亀岡の大本本部に「七草粥」をいただきに伺っておりました。

.

お正月前後は普段にも増して不摂生をしていましたので、7日に食べる七草粥は如何にも胃に優しく感じられて、また数々の掛け軸や焼き物やお花などを拝見して、心身共に健康になっていく気分になったものです。

.

.

能には「七草粥」は出て来ませんが、「七草」という言葉が出て来る曲はあります。

.

少々意外な曲「求塚」です。

.

曲の冒頭、早春の野原に可憐な菜摘乙女が4人登場して、華やかに「春の七草の若菜を摘みましょう」と謡うのです。

.

そこから暫くの間は、乙女達が旅の僧と会話をしたり、菜摘み唄を歌ったりと、一見長閑なシーンが続きます。

.

ところがこの曲は前半のロンギという部分を過ぎた途端に、3人の男女の哀しく凄惨な悲劇へとガラリと変貌してしまうのです。

.

爽やかな七草摘みの光景を、その後の地獄の有様との対比として使ってしまうとは、随分思い切った演出だと思います。

.

「求塚」は非常に難しく、大切に扱われる奥伝の曲ですので、私のような若輩者があまり長く話すのは憚られます。

しかしひとつ思い出した話があります。

.

以前に読んだ、森田流笛方で京大宝生会OBでもある故帆足正規先生の文章に、ご自身が能楽に惹かれたきっかけについて書かれていました。

それは終戦直後の高校時代に、名人野口兼資師の能「求塚」を観たことだそうなのです。

.

映画や舞台などを片端から観る毎日を過ごしていた帆足青年は、ある日殆ど予備知識も無く、初めての能「求塚」を観に行きます。

そして後シテが地獄へと真っ逆様に落ちていくシーンの野口師の型を見て「大地に引きずり込まれていくような力に圧倒され」、そこから正に能楽の世界へと惹き込まれてしまったということです。

.

.

「求塚」は特別な舞台でしか出ない大曲ですが、もしチャンスがあれば是非一度ご覧くださいませ。

帆足先生のように、人生が変わる程の経験が出来るかもしれません。

.

今日は「七草」に纏わることを、思い出すままにつらつらと書かせていただきました。

信長が名付けた「岐阜」

今日は岐阜県庁のすぐ横にある「サラマンカホール」で舞台がありました。

.

昨年の「織田信長の岐阜入城450年」に関連した催しでした。

.

そもそも「岐阜」という名前はその450年前の入城の時に織田信長が付けたという事を、恥ずかしながら今日初めて知ったのです。

.

岐阜県というのは、東海道新幹線で頻繁に通過はするものの、これまであまり御縁の無い県でした。

.

しかし今日色々お話を伺うと、

・稲葉山の山上にある岐阜城の御朱印が大人気であるということ。

・その稲葉山の麓を流れる長良川で行われる鵜飼の鵜匠は実は宮内庁職員であること。

・長良川の少し上流ではお盆に3日間夜を徹して踊り続ける郡上おどりがあり、誰でも参加可能だということ。

などなど、沢山の魅力と驚きが溢れる地域だとわかりました。

.

.

舞台の後はその岐阜城を見上げる長良川沿いのお座敷で晩御飯をいただき、信長と岐阜に浸った一日を過ごしました。

非常にわかりづらいですが、晩御飯を食べたお店の前を流れる長良川と、背後のシルエットは金華山とも呼ばれる稲葉山、更にその山上の中央やや右手の灯がライトアップされている岐阜城です。

寒い松本・熱い稽古

今日は今年初めて松本に稽古に行って参りました。

.

松本稽古場としての稽古始めは今月21日なのですが、松本からも郁雲会に能と舞囃子が出るので、その2番の為の稽古だったのです。

.

新宿からの特急あずさは今日も新型車両だったのですが、もう昨年末が嘘のように空いていました。

快適な2時間半を過ごして特急が松本平に差し掛かると、遠くに真っ白になった北アルプスが美しく望めました。

松本駅2階から見ると更に大きなアルプスのパノラマが広がっているのですが、天気が良く空気が澄んでいる日には、常念岳という印象的な山の左肩に「槍ヶ岳」がちょこんと見えるのです。

そして今日は…

見えました!

中央が常念岳で、画面左端の近くに、小さな黒い三角形が先端だけのぞいています。

常念岳と槍ヶ岳、いつか登ってみたい山なのです。

.

.

さて外に出ると、13時前なのに気温3℃。

身が引き締まる寒さの中、稽古場の「エムウイング」という綺麗な公民館に向かいました。

.

実は2年前の澤風会10周年記念大会の時にも松本から能「竹生島」が出て、やはりエムウイングで稽古をしました。

.

広々としたダンススタジオに、椅子を沢山並べて能舞台を作ります。

.

本番2ヶ月前というのは、ある意味で最も大変な時期です。

.

あらかた出来上がった謡と舞を、今度は細かく修正してより良いものに仕上げていく為の稽古です。

普段は一曲の途中で極力止めないようにしている私が、何度も途中で止めて注意する時期が今なのです。

.

外は最高気温3℃という寒さでしたが、広いスタジオに暖房が必要無いくらいの熱のこもった稽古をさせていただきました。

.

今回も良い舞台になるように、私も本番までフル稼働で稽古して参りたいと思います。

今年の稽古始め

今日は江古田稽古場にて、1週間前と同様に郁雲会の能と舞囃子を中心とした稽古をしました。

.

私の今年の稽古始めです。

.

1週間前と同じ稽古なのに、年が改まっただけで何となく清々しく厳かな気分になってしまいます。

.

.

交代でいらっしゃる皆さんと、先ずは新年のご挨拶をして、それから今年初めての稽古にかかりました。

.

.

思い返すと、去年の1月5日にこのホームページを開設しましたので、今日のこのブログでぴったり1年が経過したわけです。

.

明日からは開設2年目に突入するので、同じ内容にならないように去年のブログをちょっと読み返してみようかと思っております。

.

それでも「あれ?この内容去年読んだような…」と思われた方は、突っ込みのコメントをお送りくださいませ。。

.

.

2年目も当ホームページをどうかよろしくお願いいたします。

万歩計アプリによると…

普段から皆様に「健康には気をつけて」と言われているのですが、とりあえず「歩くこと」と「階段を使うこと」くらいしか健康に繋がる事をやっていない私です。

.

「歩く」というのは運動とも言えないような単純なことですが、歩くことにも色々利点があります。

・体調が整えられる。

・足腰や心肺機能が鍛えられる。

・渋滞や遅延に関係ないので、精神的ストレスも無い。

・街中で面白い出来事に出会う可能性が高い。

などなど、私のような「散歩が好きな能楽師」にとっては、歩くことは正に良い事ずくめなのです。

.

.

更に私の携帯には「万歩計アプリ」が付いており、これがまた丁度良い達成感を与えてくれます。

.

因みに昨年1年間で私は、

・一日平均8003歩歩いて、

・一日平均17階分の階段を登り、

・一年で約2200㎞移動して、

・最高で1日23278歩歩いた

ことになるそうです。

.

これが多いのか少ないのかは判然としないのですが、自分の足で約2200㎞程歩いた中で、昨年の色々な経験があったと思うと感慨深いものがあります。

.

この「歩くこと」に関しては、出来れば去年の記録を更新することを今年の目標にしようと思っております。

結果は来年のお正月のブログにて。

初夢と初詣

今年の初詣は、年末にブログに書かせていただいたご縁で素戔嗚神社に行こうと思い立ちました。

.

神社に近づくと、軽快なお神楽の音が聞こえて来ました。

しかし境内から道路にまではみ出す長い参拝客の列が出来ています。。

.

普段行列に並ぶのが本当に苦手な私は、ここであえなく挫折しそうになりました。

.

しかしその時、境内に「獅子舞」の姿が見えたのです。

.

参拝客は頭を噛んでもらい、子供たちは怖がって泣いたりしています。

.

これは並んででも是非近くで獅子舞を見て、頭を噛んでもらいたい!と思い、行列に並びました。

.

しかし、行列が暫し進んだところでお神楽が止んで、獅子も何処かに行ってしまいました。。

周りの人たちも「獅子舞は勤務時間終了かしらね〜」とちょっと残念そうです。

.

写真を撮る間もなかったので、私もとても残念に思いましたが、拝殿までもう少しです。

日本晴れの空の下、柏手を打って参拝するのは大変清々しい気分でした。

.

.

ところで、昨夜から今朝にかけて見る夢が「初夢」になるそうです。

.

能「邯鄲」のシテ盧生のように五十年分のリアルな夢を見る程では無いにしろ、私も普段結構現実感のある夢を見ることがあります。

例えば食べ物の夢など見ても、ちゃんと夢の中で美味しく味わって食べ終えることが出来たりするので、そんな嬉しい夢が見られないかと期待して眠りました。

.

そして見た初夢は…

.

どこかの稽古場で稽古しているのですが、絶対に終わりそうにない人数の会員さんがいらして、「どうしよう終わらん…」と焦りながら稽古している夢でした…。

.

思えばこういう「夢の無い夢」もよく見る私なのでした。

皆様はどんな初夢をご覧になりましたか?

今日はこれにて。