1㎞を30分かけて歩くこと
東京に33年振りの低温注意報が発令されたと携帯ニュースで読みました。
33年前というと私が中学生の頃で、実はその年の寒かった冬には思い出があるのです。
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確かその冬の東京には今年どころではない大雪が降って、積雪が40㎝くらいになったことがありました。
道路一面が厚い雪で覆われて、車はチェーン、自転車は走行不能です。
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私の中学校の校庭も勿論一面の銀世界になりました。
毎日昼休みには校庭で遊ぶのが楽しみだったのですが、その日の4時間目が終わると校内放送がありました。
「今日は東京地方では珍しい大雪で、校庭に40㎝ほど積もっています。」
声は、理科の菊地先生の声でした。私の所属する科学部の顧問の先生でもあります。
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私はそこまで放送を聞いて、当然「今日は昼休みに校庭に出るのは禁止します。」と続くと思いました。
ところが続けて菊地先生は、「このような機会は滅多にありません。皆さん是非校庭に出て遊びましょう!」と仰ったのです。
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一瞬教室が静まりました。皆私と同様に、言葉の意味を咀嚼するのに少し時間がかかったのです。
やがて皆一斉に「おお〜‼︎」と歓声を上げて、校庭に飛び出して雪合戦や雪だるま作りを始めました。
後にも先にも、都内であれ程の雪遊びをした経験はありません。
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菊地先生には、色々な大切なことを教えていただきました。
毎年夏に本栖湖畔であった合宿では、我々科学部は昆虫採集や山野草の標本作り、野鳥観察などをする為に毎日野原を歩きました。
その時に菊地先生は「1㎞30分のペースで歩こう」と指示されたのです。
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これは相当にゆっくりしたペースです。
しかし、辺りの自然を観察して何か目についたものを皆に知らせ、一緒に観察するには丁度良い速さだったのです。
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私が今でも道を歩く時に、つい辺りを見回して面白い物事を探してしまうのは、この頃に身についた習慣だと思われます。
1㎞を30分かけてのんびり歩くことは、めっきり少なくなりましたが…。
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今日は全く能楽に関係無いお話でした。
偶にはこんな日もあると御容赦くださいませ。