足の痛い話
昨日の「耳の痛い話」に続いて、今日もちょっと痛いお話です。
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昨日も書きましたが、「正座」、特に「長時間の正座」というのは実に辛いものであり、そして我々能楽師が生涯ずっと向き合わなければならない試練でもあります。
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正座の問題点はいくつかありますが、実は「痛い」「痺れる」といった事はさほど問題ではなく、最大の問題は「立てなくなる」という事です。
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正座で足が完全に痺れた状態になると、爪先が伸びたままで固まってしまいます。
そこで普通に立とうとすると、伸びた爪先に全体重がかかったまま転倒して、最悪骨折する怖れもあるのです。
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また経験上、正座にはいくつか不思議な点があります。
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「45分の能で痺れる時もあれば、120分の能であまり痺れない時もある。」
短い能だと思って舞台に出ると、最初の15分で完全に痺れたりします。
逆に120分かかると覚悟して座ると、最初の45分など全く痺れなかったりするのです。
正座の痺れには精神的なものも関係しているのでしょうか?
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「能楽堂によって痺れ具合が違う」
私にとっては、宝生能楽堂が一番痺れが少なく、某千駄ヶ谷や某大阪市内の舞台などはとても痛くて痺れる感じがします。
しかしこれも逆に宝生能楽堂が一番痺れる人もいるかもしれません。
正座の痺れには、その場所への慣れも影響するのでしょうか…。
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「時間帯が遅いほど痺れる」
これはやはり足のむくみが関係しているのでしょうか。
夕方から夜の舞台で座ると、すぐに痺れてしまう事が多いです。
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以上のように、「正座」と一口に言っても、様々な問題点や疑問点があります。
実はこの「正座」について、専門家の先生に色々お話を伺ってみようという企画があるのです。
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5月13日(日)12時〜13時、宝生能楽堂にて開催の「能プラスワン〜五感で楽しむ能〜」にて、京都大学薬学部教授で「生体機能解析学」を研究されている金子周司先生をお招きして、私と2人で学術的立場と能楽師の立場から「正座」について対談をいたします。
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「マウスを使った正座の研究」といった、ちょっと想像がつかない興味深いお話が沢山聞けそうです。
料金は1000円(自由席)で、当日月並能のチケットをお持ちの方は500円になります。
お問合せは宝生会事務局℡03-3811-4843まで。
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皆さまこの機会に是非ご一緒に「正座」の勉強をいたしましょう。
「痺れない方法」が分かる、かもしれません。
どうかよろしくお願いいたします。