プラスチックと能楽
今日はまた新幹線で大阪に移動して、「プラスチック成形加工学会」という学会の特別講演をされる満次郎師の助手を勤めて参りました。
「プラスチック成形加工」と「能楽」。
一見何も接点が無いように思えます。
しかし満次郎師の実演を交えた講演の最中は、学会の皆さん大変熱心に見聞きしてくださいました。
終了後のレセプションでは、会長が「プラスチック素材が今後どのような分野に広がる可能性があるのか、模索して行くことが重要である。」という内容の事をお話されました。
そして全くの門外漢の私にも、大勢の学会の方々が話し掛けてくださり、例えば「扇の要」や、「紋付袴」などでは既にプラスチック素材や化学繊維が使われていることなどを話すと、大変興味深そうに扇の写真などを撮影しておられました。
「コルク」や「皮革」などは、少し前に比べると技術が進歩して、自然の物にとても近い素材が開発されているそうです。
ならば例えば小中学校のワークショップなどで使う「能面」を、木材に近い風合のプラスチックで大量に作れたら、低コストで多くの子供達に能面を掛ける体験をしてもらえるでしょう。
また薪能などで使う野外の舞台にプラスチック加工素材を用いることで、雨や湿気に強く、軽量で強い舞台が作れる可能性があります。
プラスチックというと失礼ながら何か「本物ではなく模造品である」というような先入観がありましたが、学会の方々は「本物を超える素材を作る」ということを目標に、研究開発を熱意を持って進めておられることを知りました。
普段は考えもしないことですが、我々のいる能楽業界も、急速に進化している様々な先端素材を如何に有効に使っていけるのかを、模索することが今後必要なのだろうと感じました。
大変勉強になった、学会参加の一日でした。
そんな分野にも関わっていらっしゃるなんて、本当に面白いですね。日本のモノづくりと能との共通点は、つねに新しい境地を切り開くことなのかな、と思ってみました。
plasticity(可塑性)という語は、適応性とか柔軟さという意味でも使われるのですけれど、何か象徴的ですよね。