能「安宅」の演出

今月22日にある宝生会別会にて、家元は能「安宅  延年之舞」という大曲を演じられます。

私もツレの同行山伏を勤めます。

この「安宅」は、シテ弁慶の他に子方義経、ツレ同行山伏8人、ワキ富樫、間狂言2人と、舞台上に合計13人の立方が登場します。

登場人物がシテ1人ワキ1人だけの能も多い中で、大変華やかな曲だと言えるでしょう。

これらの人々が混乱なく移動して、舞台や橋掛をフルに使って演技をします。

また持ち物や小道具も、「扇」、「数珠」、「笈(おい)」、「金剛杖」など沢山ありますが、これらを実に上手く入れ替えたり回収したり、また渡したりして効果的に使用します。

因みに私が務めるツレ同行山伏の持ち物は、「扇と数珠」→「数珠のみ」→「手ぶら」→「扇と数珠」と変化します。

実は先程、シテ方全員揃っての稽古があったのですが、一曲を通してやってみると改めて「舞台や小道具の使い方、入れ替え方の妙」を感じました。

これは偏に作者の技量なのでしょう。

見所から見るといたって円滑に進む「安宅」は、水面下では演出の細心の心配りによって成り立っている曲なのです。

別会にいらっしゃる方、また今後に能「安宅」を御覧になる方は、その辺りの「妙」もまた味わっていただければと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です