三山と花筺

今日は愛知県の豊田で、能「花筺」の地謡に出演して参りました。

因みに昨日申合で地を謡って、明日本番なのが能「三山」です。

この2番の能を比べてみると、似通った部分と正反対な部分が混在していて面白いのです。

似た部分は、

・共に四番目の狂女物の能です。

・どちらも後半に、シテとツレが「唐織肩脱ぎ」という出で立ちで登場します。

・花筺の「狂い」という舞と、三山の最後の仕舞部分は位取りが近い舞だと思います。

一方正反対な所は、

・三山は春、花筺は秋の能です。

・片や三山は男女の三角関係に絡む鬱屈した執心がテーマで、此方花筺はハッピーエンドの幸せな恋愛を描いています。

そして私は昨日と今日にこの2番を謡って、「やはり花筺を謡うのは秋が良いなあ」「三山をあえて秋に謡うのもまた面白いなあ」というこれまた正反対の2つの感想を持ちました。

「ある季節の曲を、その季節に謡う」というのは本当に気持ちの良いことで、また一方で「違う季節の曲を謡うことで、その季節を感じる」というのも実にしみじみと感慨深いことなのです。

「三山」と「花筺」という2曲の、複雑な対比を体感して、能楽の良さをまた再認識した週末になりました。

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