しどろもどろ
昨日の舞台で仕舞「鳥追」を謡いましたが、その中に「しどろもどろ」という言葉が出て来ました。
シテが特徴的な足拍子を踏む所です。
能は室町時代の言葉で構成されているので、現代には残っていない表現が多く、また単語の細部が微妙に異なることも多々あります。
その中で「しどろもどろ」のように今と全く同じ表現を見つけると、ちょっと嬉しくなってしまいます。
しかし、ふと違和感も覚えました。
現在の「しどろもどろ」は、何か喋ろうとする時に言葉が上手く出てこない、という場合に用いられます。
ところが「鳥追」では、「しどろもどろに鳴る鼓の」と鼓の鳴り方を表すために使われているのです。実際シテも足拍子で鼓の音を表現しています。
そう考えると、能「加茂」で雷神の鼓の音をやはり足拍子とともに「とどろとどろ」と言うのと近い気がします。
そう思って「しどろもどろ」の語源を調べてみたのですが、「鼓の音が元になっている」、と言っているテキストは全然無くて、「言葉に詰まった時の様子」という説明しかありませんでした。
「しどろもどろ」と鼓の音の関わりは、確かにありそうなので、これからまた調べて行きたいと思います。何方か御存知の方がいらしたらどうか教えてくださいませ。
謡をやっていると、日本語の奥深さ難しさを日々実感させられます。
正しく豊かな日本語表現の出来る日本人になりたいものです。