百万と百万遍

能百万の事を色々調べていたら、百万というシテのモデルとして「百万遍念仏」の音頭を取っていた女性だという説があるようです。

あくまで諸説ある中の一説ではあります。

しかしこの「百万遍念仏」という名を聞いて、私はハッといたしました。

京都大学本部キャンパスに面した大きな交差点の名前が「百万遍」と言うのです。

居酒屋、喫茶店、古本屋、カラオケ屋、定食屋、等々およそ学生街にありそうな店をすべて詰め込んだような交差点です。

京大生の青春時代はこの「百万遍」交差点を抜きには語れません。

この変わった地名は西暦1330年頃に、この交差点近くにある「知恩寺」というお寺で百万遍念仏が行われ、見事成就して疫病が治まった為に名付けられた名前だそうです。

ごく低い可能性ですが、知恩寺の百万遍念仏の音頭取の1人が百万のような女性だった可能性はあります。

そして能百万の原型は観阿弥が作ったとされ、その存命期と知恩寺の百万遍念仏の時期は重なるのです。

あの百万遍交差点の知恩寺で、700年前に百万が念仏を唱えていたかも知れない。

それをモデルに観阿弥世阿弥が作った能が「百万」だとしたら…。

そう考えると、捉える手掛かりが無かった百万という人物が、急に身近に感じられて来ました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です