兼平稽古2  前シテ

いよいよ七宝会での能兼平が目前に近づいて参りました。

以前にも書きましたが、兼平という能は修羅物にもかかわらず動きが非常に制限されていて、全体の8割を一箇所にとどまって演技します。

前シテの場合、幕から出ると先ず常座(見所から見て舞台左奥)に置かれた船に乗ります。

後は、中入までそこから一歩も踏み出さずに演技をするのです。

動きらしい動きは、足を「掛ける」「捻る」「一足出」「一足引」のみ。

後はわずかに顔を上下左右に動かすだけです。

こうなると、やはり謡が重要な役割を担います。

しかし謡もやはり究極には「早い」「遅い」「高い」「低い」しか無いとも言われます。
これらの組み合わせだけで、矢橋の渡しから粟津ヶ原までの僅かな旅路のあいだに、いかに兼平らしさを表現するのか。

この辺りに兼平前シテの難しさの胆がある気がします。

本番まであと僅かな時間ですが、少しでも兼平の心情に迫れるように、ギリギリまで稽古していきたいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です