立春の舞台

今日は水道橋宝生能楽堂にて「立春能」に出演いたしました。

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能「巴」、「吉野静」、「加茂物狂」、「鵜飼」と4番出て、私は留の「鵜飼」の地謡を勤めました。

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「鵜飼」は、数ある能の中でも地謡の謡出しが最も遅い曲だと思われます。

正午から始まった「立春能」の舞台で、私が留の「鵜飼」の地謡を謡い始めたのは17時頃でした。

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長く待った分、気合が充填されています。

そして「鵜飼」の地謡は、始まるといきなり「鵜之段」なので、一気に高いテンションで謡に入りました。

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そして中入の後も、”早笛”で後シテの閻魔大王が出てきて、最後まで力強い型やシテ謡が続きます。

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今日はシテの気持ちが非常に入っており、それに伴いやはり地謡もハイテンションで終始して、謡った時間は短いながらも謡い終えると全力を使い果たした感がありました。

私にとって今月最初の舞台で、また「立春」の名に相応しい、どこか爽快感のある「鵜飼」だったと思います。

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明日からまたしばらくは稽古の日々になります。

新型肺炎の心配などもありますが、気をつけつつ頑張って参りたいと思います。

悪夢にうなされずに済む方法

今日は朝から水道橋宝生能楽堂にて、日曜日開催の「立春能」の申合がありました。

私は能「鵜飼」の地謡でした。

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立春能申合に行くために起床する、その直前の夢の中でのお話です。

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以前にも書きましたが、私がたまに見てうなされる悪夢があります。

「やったことの無い曲のシテを舞うことになっており、鏡の間で幕が上がるのを待っている」

というシチュエーションの夢です。

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知らない型や謡を舞台上でどうやって誤魔化そうかと必死で考えるうちに目が覚めて、ホッと安堵するのが常のパターンでした。

しかし今日はちょっと違う展開になったのです。

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シチュエーションは常と同じで、今回は”勝修羅”の格好で”平太”の面までかけて鏡の間に座っていました。

一度も稽古しておらず、謡も型も全く頭に入っておりません。

「ああ、いつも見る悪夢と同じ状況だなぁ。ついに悪夢が現実になってしまうのか…」

と嘆いていたのです。

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しかし今日の私はそこでハッと気付きました。

「待てよ、今の状況ももしかしたら夢なのでは…」

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そして良く考えてみると、確実に夢だということがわかったのです。

夢の中で、

「なんだ夢か。良かった良かった。」

と安心して舞台に出て行ったあたりでアラームが鳴って目が覚めました。

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…というわけで今後はこのパターンの悪夢を見ても、夢の中で夢かどうか確認する事で、うなされずに熟睡出来そうです。

トンネルを抜けるとそこは…

昨日松本から東京に戻って、国立能楽堂の稽古会にて袴半能「石橋」の地謡を勤めました。

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そして今日また別の仕事で松本にとんぼ返りしたのです。

ちなみに一昨日のブログに載せた写真がこちら。

塩尻の手前くらいの松本平です。

晴天でした。

北アルプスの上の方だけが雪を被っていますが、平地には全く雪は見られません。

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そして今日、諏訪からトンネルをくぐって松本平に出て、ほぼ同じ位置で撮った写真がこちらです。。

なんと1日で一面の雪景色になっておりました。

このような経験をすると、”自然の力の気まぐれさ”のようなものを改めて実感します。

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私の乗った特急あずさは雪による倒木の影響で15分遅れで松本に到着しました。

今日はまた一昨日とは別の方々に、能楽の魅力をお伝えして参ります。

松本能楽堂建設に向けたワークショップ

今日は松本稽古で、今特急あずさで松本に向かっております。

しかし今回は稽古の前にもうひとつ重要な仕事があります。

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「松本に能楽堂を!」

という悲願を達成するための一歩として、松本城近くの老舗ホテルにて能楽ワークショップを開催するのです。

地元の方を中心に60人ほどの方々が集まると伺っております。

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主催者側は、私以外に「琥珀の会」シテ方囃子方メンバーが地元松本、東京、京都、そして浜松から集合してくれます。

そして松本澤風会で稽古している開智小学校の子供達も、仕舞を舞ってくれるのです。

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仕舞と舞囃子の実演。

型や謡の体験。

それらを通じて能楽の魅力を発信するだけでなく、

「松本能楽堂建設」に向けたPRをすることが求められる重要なワークショップです。

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途中の山梨県内は一面の銀世界でしたが、幸いに松本市内は晴天に恵まれました。

60人のお客様の良い反応が得られるように、精一杯勤めたいと思います。

南海電車の混雑

今日は大阪の堺能楽会館にて開催の「羽衣学園能楽鑑賞会」に出演して参りました。

私は能「通小町」の地謡を勤めました。

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朝に東京を出て、電車を乗り継いで最後に「南海なんば駅」から堺に向かう南海電車に乗りました。

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その時に、南海なんば駅が意外に混んでいるなあと思いました。

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そして舞台が終わって、夕方に帰りの南海電車に乗ろうとして驚きました。

車内がとても混んでいて、ほとんど満員状態だったのです。

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よく見ると大半の人がアジア系観光客で、それぞれ大きなトランクを持っており、それも混雑に拍車をかけているようでした。

そこで、「ああ、今は”春節”の期間なのか」

と気がつきました。

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調べてみると正に今日1月25日が今年の”春節”にあたり、昨日から春節の連休が始まっていたようなのです。

大挙して関西空港に到着した中国からの観光客が、南海電車で大阪方面に移動するところに乗り合わせたということなのでしょう。

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この春節連休は来週木曜日まで続くようです。

新型肺炎の心配なニュースが流れていますが、特にこの連休期間中はマスクや手洗いなどの予防を徹底したいと思っております。

数十年ぶりの”牛若丸”

今日は亀岡での新年会に参加して参りました。

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最後の満次郎師の番外仕舞が「橋弁慶」で、私は”牛若丸”の役を仰せつかりました。

この橋弁慶の牛若丸は、実は私にとっての初役(生まれて初めて演じる役)でした。

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本来なら”牛若丸”は子方が演じる役です。

私はまだ小学生の時に、能「船弁慶」と能「鞍馬天狗」の子方を勤めたことがあります。

ちなみに船弁慶の子方は義経、鞍馬天狗の子方は牛若丸の役でした。

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そして今回、数十年ぶりの”子方”がやはり牛若丸。

これもひとつの御縁なのかと思い、なにか新鮮な気持ちで勤めさせていただきました。

動きは「十二、三ばかりなる小男」に見えたかどうか定かではありませんが。。

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子方は中学生の頃に卒業するものですが、今後もこうした珍しい機会があればまた頑張って勤めてみたいものだと思います。

雪の日の舞台

今日は東京も雪が舞う寒い一日になりました。

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センター試験の日には何故か雪が多い気がします。

今年も何人か知っている高校生達が受験しているはずなのです。天候以外にも色々予想外のことが起こるのが入試ですが、どうか取り乱さず落ち着いて乗り越えてほしいです。

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私は水道橋宝生能楽堂にて開催の「五雲会」で能「春日龍神」の地謡を勤めました。

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五雲会の雪には思い出があります。

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私は初シテを舞った翌年、つまり平成18年の1月の五雲会で、人生2回目の能「花月」を舞いました。

その日が全国的に大雪で、都心部でも積雪があるほどだったのです。

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能楽堂の見所に来てくださったのは100人程のお客様でした。

普段に比べるととても少ない人数でしたが、むしろこの大雪の中を100人もの方々が五雲会を見るためにいらしてくださったのか…と、大変有り難く思いました。

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今日もとても寒い悪天候の中、沢山のお客様が宝生能楽堂にいらしてくださいました。

「花月」の時もそうでしたが、こういう日の舞台こそ一際大事に勤めねばと思い、頑張って「春日龍神」を謡わせていただきました。

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今日いらしてくださった皆さま、誠にありがとうございました。

2020江古田での稽古始め

今日は午前中に水道橋宝生能楽堂にて五雲会申合があり、私は能「春日龍神」の地を謡いました。

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それから江古田に移動して、夜までノンストップで稽古いたしました。

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江古田での稽古始めの今日は、ほぼ全員勢揃いで、そのうえ江古田でも新年から新しく稽古を始められた方がいらっしゃいました。

全国的に新しい会員さんが増える傾向で、有り難い限りです。

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色々話題もあるのですが、今日は終日全力モードでしたので、ブログは短めで失礼いたします。

少林寺拳法の護身術体験

今日は港区スポーツセンターにて、「魅せるスポーツ・美せる能」という催しに出演して参りました。

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辰巳満次郎師と、ロサンゼルスオリンピック体操金メダリストの具志堅幸司さんとのコラボレーションという大変興味深い企画です。

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午前中のリハーサルでは”少林寺拳法”の演武を見たのですが、これが凄い迫力でした。

防具をつけた選手と攻撃する選手が2人1組で演武するのですが、攻撃側の蹴りは完全に本気で、防具に当たると「ボコーン!」と大きく重い音がアリーナに響きます。

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ちょっとだけやってみたいと思いましたが、私ではあっという間に重傷を負いそうです。。

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催しが始まって、満次郎師と具志堅幸司さんの対談、能楽ワークショップと能「船弁慶」の実演があり、そこで我々能楽師の出番は終わりでした。

しかしプログラムを見ると、その後に「体操と少林寺拳法ワークショップ」とあったのです。

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これは是非とも参加してみたいです。

でももし少林寺拳法ワークショップの内容が先ほどの「ボコーン!」みたいなことだったら、静かに退場しようと思っていました

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…始まってみると、

「いきなり誰かに腕を掴まれた時に、それを上手く外す方法」

というようないわゆる”護身術”の体験で安心いたしました。

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「自分の腕の捻りによって、相手の腕の力を抜く」

という方法論は、普段身についた能楽の動きとは全く別次元の考え方で、大変勉強になりました。

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これで私も、突然腕を強く掴まれても即座に対応することが出来るようになった筈なのですが、そもそもそんなシチュエーションには出会いたくないものです。。

“初めて”尽くしの待謡

今日は大阪の香里能楽堂にて「七宝会」に出演して参りました。

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今年第1回目の七宝会で、私にとっては2020年の一番最初の舞台でもありました。

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その七宝会の最初の番組は舞囃子「志賀」です。

私はその地謡でしたが、左端に座っていたために冒頭のワキの「待謡」を謡うことになりました。

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本年初めての舞台である第1回七宝会の、初めの舞囃子の謡初めの役を仰せつかった訳です。

なんだか”初めて”がたくさん重なって、大変目出度い感じです。

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しかし逆に、「これは絶対に間違えずにきちんと謡わなければ!」と思いました。

そしてこの「志賀」という曲はあまり頻繁には出ない曲であり、その「待謡」を謡うのもまた”初めて”でした。

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…というような諸々の”初めて”が重なった結果、私は大変に緊張してしまいました。。

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こういう時は、たとえ短い待謡であっても長い一曲を覚えるくらいの最大限の努力をするしか無いと考えています。

なので今週に入ってからはずっと「志賀」の小本を持ち歩き、時間があれば待謡を呟いておりました。

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その甲斐あってか、本番はなんとか無事に謡い終えることができました。

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今年最初の舞台を無事終えて、ここからは次々と舞台が控えております。

今日の待謡のような緊張感を維持しつつ、今年の舞台も頑張って勤めて参りたいと思います。