「ずく」とは如何に…?

今日は芦屋稽古で、謡の稽古曲は「加茂」でした。

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シテ謡で「あざあざしくは申さねども…」

という文句があり、「あざあざしい」とはどういう意味だろうと思って調べてみました。

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するとあっさり「鮮鮮しい。はっきりしている様」

と出てきて、拍子抜けしました。

「鮮やか」の「あざ」だったのですね。

知らない言葉はまだまだ沢山あるものです。

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そう言えば先日の松本稽古の時に、面白い言葉を知りました。

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稽古が終わって何人かで食事をしている時のことです。

そのお店の御主人がわざわざ能登半島に出かけて釣ってきたという「黒鯛の刺身」と、同じくお店の女将さんがわざわざ木曽の山奥で採ってきたという大量の「山菜の天ぷら」が出てきました。

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どちらも大変美味しかったのですが、それを食べた地元松本在住の会員さんが、

「美味しいけど、これを採りにいく’ずく’が無いなあ」

と。

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私「’ずく’ってなんでしょう?」

会員さん「う〜ん、”めんどくさい事を苦にせずやる為のエネルギー”ですかね…」

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また別の会員さんは「そうそう。”あの人は意外と小ずくがあるよね〜”とかも言いますね」

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なるほど。

ずく。

微妙なニュアンスを僅か2文字で表現していて、大変興味深い言葉です。

また、自分で使ってみたくなる言葉でもあります。

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私は本来’ずく’の全く無い人間なのですが、内弟子の頃には’ずく’を全開に出していた気がします。

しかし今はまたせいぜい’小ずく’があるくらいに戻ってしまいました。。

明日からも’小ずく’エネルギーを何とか絞り出して、頑張って参りたいと思います。

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…なんだかちっとも上手く使えていませんね。。

もっと良い文例を考えたいのですが、’ずく’が無くなったので今日はこれにて…。

涼しげなお坊さん

今日は昼から江古田稽古でした。

三ノ輪の自宅を出ると、外は完全に夏の暑さです。

暑さの苦手な私にとって辛い季節が、早くもやってきてしまったようです。。

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上野で山手線のホームに上がったところで、1人の若いお坊さんが電車を待っていました。

紗のような薄手の夏用の僧衣を纏っていて、頭は当然ながら丸坊主です。

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これが私には実に涼しそうに見えて、

「坊主頭羨ましいなあ…」

などと不謹慎にも思ってしまいました。

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江古田稽古が終わって、帰りの電車で携帯のニュースを見ると、週末の京都はなんと35℃まで上がる予報です。

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土曜日には大江能楽堂にて「第120回京宝連」にあたる関西宝連が開催されます。

学生達はさぞかし暑い思いをすることでしょう。

我々能楽師も最後に番外仕舞を舞うことになっております。

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「いっそのこと丸刈にしていこうかな…それは無理か。でもせめて着物はもう夏用の絽にしたいなあ。。」

とは思えども、5月ではまだ絽にするわけにもいきません。

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昼間の涼しげな若いお坊さんを思い出して、「やっぱり羨ましいなあ…」と溜息をついた帰り道でした。

僅か2ヶ月足らずで…!

今日は田町稽古でした。

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栃木の大学から、授業を終えて2時間かけて田町に駆けつけてくれる青年がいます。

今日約1ヶ月ぶりに顔を見せてくれました。

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彼はこの3月までは京大宝生会で稽古していて、4月から心機一転新しい大学に行くことにしたのです。

そろそろ新天地の生活にも慣れてきた頃だろうか…と思っていると、彼から驚くべき話を聞いたのです。

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「実は大学で能楽部を立ち上げました!」

え?

まだ入学して2ヶ月にもならないのに、どういうこと…⁉︎

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「知り合いを数人集めて、顧問の先生も見つけて、今大学に申請しているところなのです!」

なんと!一体どんな知り合いが集まったのでしょうか?

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「えーと、1人は”大和絵”が好きな人、あとは着物が好きな人、歌舞伎が好きな人、狂言を少し体験したことがある人などなどです」

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なんとなんと、それぞれ一癖ありそうな、面白い人達ではないですか。

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今後の活躍形態はこれから模索していくとのことですが、とりあえず6月15日の五雲会に何人か観に来てくれるそうです。

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京大宝生会からいなくなってしまうと聞いた時は寂しく思いましたが、彼の行動力はむしろ新しい大学で大きく発揮されたようなのです。

私の想像の斜め上を行く展開で、非常に嬉しい驚きでした。

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彼の大学の能楽部と、京大宝生会が今後交流していってくれると、また色々と面白いことが出来そうです。

私も出来る限りサポートしていきたいと思います。

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復活への一歩を踏み出した日本女子大宝生会と並んで、令和元年に新しく歩き出したこの能楽部が、末永く続いていくことを願ってやみません。

鶴亀稽古で気づいたこと

昨日の松本稽古では、また新しい見学の方が来られました。

最近松本では新しい会員さんが次々と増えて、昨年暮れから昨日迄に大人6人、小学生1人が増えたことになります。

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新しく設けた「初級者向け謡」の参加者も多くなり嬉しく限りです。

曲は、昨日から「鶴亀」になりました。

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ベテランの会員さんでも、途中から入会して「鶴亀」はまだ習っていないという人は一緒に稽古しました。

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初心者向けなので、”アタリ”や”マワシ”などの記号も一から説明して、ゆっくりと稽古を進めていきます。

ベテラン組には少々退屈な稽古になるかもしれないな、と心配しながら冒頭から初同までの2ページほどを30分かけて稽古しました。

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終わってベテランの人に「すみません、ちょっと物足りなかったのでは…?」

と聞いてみると、

「いえいえ、初めて聞くことがあって良かったです」

との答えが。

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ベテラン組の謡稽古では、説明する内容を少しずつ省略して、稽古スピードを徐々に上げていく方針をとっています。

しかし、偶に振り返って細かな説明をするのも大切だと、昨日の「鶴亀」稽古で気がつくことが出来ました。

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短期間で沢山の新人さん達を迎えた松本稽古場。

今後ベテラン組と上手く融合して稽古場全体が活性化していくように、私も色々工夫して頑張って参りたいと思います。

緑の木曽路

土日の薪能が終わって、今日からしばらくは通常の澤風会稽古が続きます。

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今日は早朝に京都に移動して大山崎稽古、その後午後に松本に移動しての稽古でした。

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大山崎から普通電車で京都へ。そして新幹線で名古屋に行き、最後に特急しなのに乗り換えて松本に向かいます。

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雨が近づいて空には雲がかかっていますが、その天気の中でも車窓から見える新緑が実に綺麗でした。

瑞々しい新芽の薄緑、常緑樹の濃い緑、杉や檜の深緑…

毎年5月頃の山の景色を見ると、同じ”緑色”にこれほどまでたくさんの種類があるという事を思い出します。

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走っている特急からは、やはり上手く撮れませんでした。。

しかし実際にはこの百倍も鮮やかな初夏の彩りだったのです。

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慌ただしかった週末を終えて、木曽路の緑にちょっと癒された月曜日の電車移動でした。

充実した誕生日

今日は午後から江古田稽古、その後に田町に移動して18時半から稽古という日程でした。

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江古田で余裕を持って17時過ぎに稽古を終えて、順調に池袋まで出て山手線ホームに上がりました。

あとは山手線に乗れば田町まで一本で行ける、と思ったところで、品川で人身事故があったとかで山手線が止まってしまいました。。

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仕方なく地下鉄丸の内線に乗り換えて、大手町でぐるぐると結構な距離を歩いて地下鉄三田線に乗り、何とか18時半ギリギリに田町に到着出来ました。

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田町では、久々に稽古に来てくれた元気な韓国人留学生さんや、芸大1年生男子なども加えて賑やかな稽古になりました。

最後の芸大生の稽古を終えて、地拍子の質問に答えていると、なんと稽古場の勤労福祉会館が21時半で終了するというアナウンスが流れて来ました。

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田町でもこれまで長く稽古して来ましたが、終了アナウンスまでみっちり稽古したのはおそらく初めてです。

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という訳で、今日も昼から夜まで密度の濃い稽古をした1日でした。

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実は誕生日だったのですが、バリバリと稽古をする誕生日というのも充実して良いものだと思いました。

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また新たな気持ちで頑張って参りますので、皆様どうかこの1年もよろしくお願いいたします。

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復活への第一歩

私の母親は2年半ほど前から、母校の日本女子大学構内にある和室を借りて、「日本女子大学宝生会」の復活に向けての新歓活動をコツコツとしておりました。

チラシを作成したり、先ずは職員など大人の稽古を始めて、学生に見学を呼びかけたり。

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何度か学生も見に来てくれたそうなのですが、卒業間近の4年生だったりしてなかなか定着まではしてくれませんでした。

20数年間も途絶えていたクラブの復活は、やはり相当に難しいと思われました。

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それが今春、大きな動きがあったのです。

京大宝生会の大先輩のお孫さんが、この春にめでたく日本女子大学に入学されたのです。

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4月の終わりには母親から、そのお孫さんが友達を連れて、合計3人で稽古見学に来てくれたと聞きました。

復活に向けて、大きな第一歩だと嬉しく思っておりました。

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そして昨日。

私は澤風会江古田稽古日で、普段通りに昼から江古田舞台で稽古をしておりました。

母親は例によって日本女子大に新歓活動に行っています。

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夕方になって、いつも元気なボーカリストの方の稽古をしていると、母親が帰って来ました。

横目で見ると、母親はなにやら非常にそわそわしている様子です。

するとなんと母親の後ろから、緊張した面持ちの3人の女学生さんが稽古場に入って来るではありませんか!

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母「見学に来てもらったの!」

聞くと3人の女学生さん達は、今日既に日本女子大で「羽衣キリ」の仕舞と謡を稽古して来たとのこと。

稽古の後に、「都営バス一本ですぐ江古田に行けるから!」と母親が強引に連れて来たようです。

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折良く稽古場には、日本女子大宝生会のOGの澤風会会員さんもいらして、大学の建物や授業の話などで盛り上がっていました。

3人は足袋も扇も持っていて、「稽古を続けるつもりです!」と言ってくれました。

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母親が新歓活動を始めて3年目、ついに「日本女子大学宝生会」が復活することになりそうです。

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とは言え、まだクラブとして安定するまでには時間がかかるでしょう。

復活組の先輩である神戸大学宝生会の歩みなどを参考にさせていただき、なんとか人数を増やして継続していけるように、私も出来る限り手伝って参りたいと思います。

皆さまもどこかで「日本女子大学宝生会」の姿を見かけたら、どうか応援をよろしくお願いいたします。

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連休明けの松本稽古

今日は昼から松本稽古でした。

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世の中よりも1日早い”連休明け”です。

久々の澤風会稽古だったので、私自身の調子が狂っていないか少々心配でした。

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しかし始めてみるとそれほど違和感なくスムーズに稽古出来た気がします。

10人程来られた会員の皆さんも、よくお浚いをしてから来てくださいました。

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仕舞「鶴亀」を今日でひと通り最後まで稽古出来た方。

仕舞「雲雀山」が今回で完成して、次から新しい仕舞に移行することになった方。

「女郎花」の稽古を昨年クセの仕舞から始めて、”翔”の舞を経て今日ようやくキリの最後まで稽古し終えた方。

難しい「笹之段」の仕舞を2ヶ月でほぼマスターされた方。

などなど…

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連休中も仕事や家の用事をしていた、という方が結構多く、連休の影響は意外に少ないように感じました。

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そして先日書いた「善知鳥峠」に関する興味深い話もいくつか出て、また資料もたくさん頂きました。

楽しみに読ませていただき、頭の中で整理してから続報を書いてみたいと思います。

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そんな訳で、長い連休は明けましたが、色々充実した松本稽古が出来てひと安心いたしました。

“五月病”になることもなく、すんなりと通常運転に入っていけそうです。

松本の皆様今日もありがとうございました。

令和最初の新入部員は…?

昨日は亀岡の「大本みろく能」の後に京大宝生会稽古に向かいました。

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連休中なので帰省している部員もいるだろうと思いました。

しかし来週には「関西宝連」の舞囃子「船弁慶」と「春日龍神」の申合もあるので、何とかいる部員だけでも稽古したいと思ったのです。

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蓋を開けてみると、なんとほぼ全員参加でした。

半数は「大本みろく能」に新入生を誘って観に来てくれて、終わってすぐに京大に戻って来た部員達です。

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稽古を始めたところで、今度はゲストの方々がやって来られました。

松本稽古場で今年から稽古を始めたばかりのご夫婦です。

かねてより「京大宝生会の稽古を是非見学したい」と仰られており、今回はご夫婦での京都旅行の1日を、やはり「大本みろく能」の鑑能と「京大稽古見学」に充ててくださったのです。

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にこやかにご覧になっておられるご夫婦の前で稽古を再開しました。

するとまた驚きの事態が。

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「今日は授業は無いけれど、一応新歓に行って来ます」と言って時計台の方に向かった部員が、新入生見学者を連れて戻って来たのです。

京大は連休など全く関係無いようでした。

その後さらに自分からBOXを探して来てくれた新入生見学者も1人加えて、むしろ普段より賑やかな稽古になったのでした。

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今年は京大能楽部全体的に新入生の入りが少ない状態です。

宝生会も5月にも様々な新歓イベントを用意して、新入生の入部を待っているのです。

自分の稽古や勉強などもある中で、現役達は本当に頑張っています。

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昨日は見学者2人に「熊野」と「船弁慶」の仕舞を少し稽古して、稽古後には2人も連れて部員達と晩御飯に行きました。

料理を注文して、「僕は来週も稽古に来るので是非また稽古の続きをしましょう!」と話したところで最終新幹線のリミットが来てしまいました。

あとは部員達に任せて、車に飛び乗って京都駅に向かったのです。

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次に入部する人は「令和最初の新入部員」ということになります。

来週の稽古でその記念すべき部員が誕生することを、心から祈っています。

「歌占クセ」の巻き物

今日は江古田稽古でした。

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ジパング倶楽部のメンバー中心の団体謡稽古は、今「歌占」を稽古しております。

この「歌占」のクセは非常に難しく、宝生流では「山姥クセ」「花筐クセ」と共に「三難クセ」などと呼ばれています。

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そしてこの「歌占クセ」は、節使いの難しさもさることながら、その内容の凄絶さ、難解さが殆ど異様なほど際立っています。

人間の生命の儚さと、地獄巡りの苦しみを”これでもか!これでもか!”というほど微に入り細にわたって延々と描写しているのです。

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昔の人は何故こんな物凄い内容のクセを作ったのか、何か特別な由来があるのかと思って少し調べてみたのですが、残念ながらまだ手掛かりは掴めておりません。

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「歌占クセ」で思い出すエピソードがひとつあります。

京大宝生会に入って少し経った大学一回生の頃、渡辺三郎先生のあるお弟子さんから”巻き物”を頂戴しました。

広げてみると、半紙を繋げた細長い紙に、達筆で何やら沢山の文字が書いてあります。

よくよく読んでみると…

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なんと「歌占」のクセだったのです。

当時はまだ大学生になったばかりで、一応それなりに希望に満ちていた私は、その歌占クセの文句を読んで「なんじゃこりゃ」とその内容のあまりの重さに衝撃を受けたのでした。。

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その渡雲会のお弟子さんに、「何故これを、今私にくださったのですか…?」と聞いてみたかったのですが、残念ながらその機会はありませんでした。

私が宝生流を稽古し始めたのを知って「この歌占クセを稽古出来るほどになってください」というお気持ちだったのでしょうか。

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あるいは「大学に入って浮かれているかもしれんが、人生は本当はこのように厳しいのだぞ!」

と戒めてくださったのかもしれません。

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あれから幾星霜を経て、この歌占クセの文句も少しずつ身にしみるようになりました。

しかし一方で「やはりこれは大学一回生にはちょっと早い内容だよなあ…」とも思ってしまうのでした。。