亀岡の花々〜春遠からじ〜

今日は亀岡稽古だったので、久しぶりに「亀岡の花」を見られるかと思っていました。

しかし、京都から山陰線で亀岡に向かうと途中の保津峡駅あたりから…

なんと雪が降り始めました。

亀岡に到着する頃には本降りになり、非常な寒さです。

この雪と寒さでは花どころでは無いな…と思いながらも、この季節に見られるはずの植物を一応探してみました。

すると…

ありました!蕗の薹が今年も顔を出してくれていました。

他の春の花はどうでしょうか…

ユキワリイチゲ(雪割一華)はこの天気のせいか花を固く閉じた状態でした。晴天ならさぞかし綺麗な群落が見られることでしょう。

ちなみにこのユキワリイチゲ、学名を調べるとAnemone keiskeana

というらしいです。アネモネの仲間だったのですね。

keiskeana 」は明治時代の医師伊藤圭介から取られており、この人は「おしべ」「めしべ」「花粉」などの用語を考えた人らしいです。この人がいなかったら、「花粉症」は別の呼び名だったのかも…

またよく見るアネモネは和名「ボタンイチゲ」という地中海沿岸原産の植物だそうです。

さらに…

トサミズキ(土佐水木)が芽吹いていました。

育つとちょっと奇怪な見た目になりますが、今は可愛らしい感じに見えます。

そして…

牡丹も力強く芽を出していました。

この時点でも満開の花を想起させる、とても強いパワーを感じます。

今日初めて見つけた花は…

「ケクロモジ(毛黒文字)」です。

新芽を包み込むように小さな黄色の花がたくさん咲いています。

新芽が開く前の今の状態が、いかにも早春という感じで良いと思いました。

この頃には雪が止んで、陽が射してきました。

その陽射しの中で…

福寿草が花を開いていました。

来る時は雪でどうなるかと思いましたが、やはり色々な植物を見て、春はすぐそこまで来ていると実感できました。

これからまた春から初夏の花々をご紹介できればと思います。

1か月が経ちました

1月16日にこのブログを再開してから1か月が経ちました。

なんとか途切れずに書き続けております。

今回ブログ再開の告知などは全くしていないにも関わらず、何人かの方に、

「ブログ再開されたのですね、いつも読んでいます」

と温かいお言葉をいただきました。

何よりの励みになります。ありがとうございます。

今後も私の小さな日常の出来事をポツポツと書いて参りたいと思います。

またいくつかあった”シリーズ”もぼちぼち再開するつもりです。

「亀岡の花々」シリーズは、間もなく春の花が咲き始めたら再開します。

「隙間花壇」は実はコロナ禍の間に雰囲気が大分変わって、洋風のお洒落な花壇になっております。私としては以前の自然な感じが良かったのですが、こちらも一度今の姿をご紹介したいと思います。

「読んだ本の話」も書いていきたいです。

相変わらず”遅読”で”並行読み”です。

今は、

①戸川幸夫(イリオモテヤマネコを発見した動物文学作家)著のシートンの伝記

②新田次郎著「孤高の人」

③椎名誠の「怪しい雑魚釣り隊シリーズ」

などを読んでおります。

中でも新田次郎「孤高の人」は久しぶりに本にグイグイと引き込まれていく感覚を味わっております。

このように、能楽には全然関わらない内容も多いブログではありますが、頑張って書いて参りますのでどうか今後ともよろしくお願いいたします。

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亀岡の花々〜アサギマダラと三七草〜

先週金曜日、午前中に大山崎で「鶯、桜、松」のマンホールを見つけて驚いたその後に、久しぶりの亀岡稽古に向かいました。

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10月上旬の亀岡稽古では、毎年「藤袴」の花と「アサギマダラ」という蝶に出会うのを楽しみにしております。

去年はその時期に稽古が中断されていたので、今年こそは会いたいものです。

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亀岡稽古場に早めに到着して、早速「藤袴」のところに行ってみると…

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いました!アサギマダラです。

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最初の写真は偶々止まっていますが、今年のアサギマダラは非常に元気良く飛び回っていました。

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私にぶつかりそうになるほど近くを飛んだりして、何か2年ぶりの亀岡での再会を喜んでくれているようで嬉しくなりました。

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再会に満足して、まだ稽古まで時間があったので他の植物も見に行ってみました。

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「紫式部」の実が今年も鮮やかな紫に実っていました。

今年は能「源氏供養」を舞ったので、この紫の実が成っている京都北山の”紫式部墓所”にお礼参りに行きたいと思いました。

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更に歩いていくと、またしても驚く光景に出会いました。

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初めて見る黄色い花が咲いていました。

綺麗だなと思い、近寄って写真を撮ろうとしてハッとしました。

なんとその黄色い花にアサギマダラが止まって吸蜜していたのです。

藤袴以外の花で吸蜜しているのを私は初めて見ました。

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この花は「サンシチソウ(三七草)」という外来種だそうです。

調べると藤袴と同じキク科で、このサンシチソウの仲間もアサギマダラが蜜を吸う対象になっているようでした。

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「充分に栄養をとって、はるか遠くの南の国への旅に備えてくれよ」と思いながら、満足して稽古に向かったのでした。

サクラサク

今月から亀岡稽古がようやく再開されて、昨日行ってまいりました。

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亀岡稽古場の亀山城址には、「このはなざくら」という珍しい桜があります。(2018年4月10日のブログに詳しく書きました)

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昨日の稽古の合間に、その「このはなざくら」の原木を見に行ってみると…

幸運な事にちょうど満開を迎えていました。

これまで私は毎年のように「このはなざくら」を見てきましたが、その中でも今年の花が一番美しく感じられました。

ソメイヨシノほどの派手さはありませんが、自然に逆らっていない「やさしい美しさ」とでも言える上品な咲き姿なのです。

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昨日は他にも…

カタクリが咲いていたり…

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シャクナゲがもう咲き始めていたり、”春爛漫”という風情でした。

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そして一夜明けて今日は、京大宝生会の稽古に行ってまいりました。

こちらもようやくBOX舞台の使用が解禁されたのです。

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そしてBOXに到着すると、なんと去年見学に来て一度だけ体験稽古をした学生の姿が。

学生「入部することにしました。どうかよろしくお願いします」

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おお…!

京大宝生会にとってはほぼ2年ぶりの新入部員です!

新しい春の訪れとともに、京大宝生会もまた新たな歴史を刻んでいくことになりました。

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現役達は早速新入部員に構えや運びを教えたり、「4回生の○○です。よろしくお願いします」と挨拶したり、何となく気恥ずかしそうで、しかし嬉しそうな様子です。

昨日の満開の「このはなざくら」のように、新入部員を迎えてパッと華やいだ春の京大宝生会の風景なのでした。

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桜島、御楼門、そしてアサギマダラ

昨日今日と「皓月会50周年記念大会」と「かごしま能」に出演するために鹿児島に来ております。

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せっかく鹿児島に来たので、桜島を見て帰りたいと思って朝早くに路面電車に乗って港の方に行ってみました。

終点の「鹿児島駅前」で降りて少し歩くともう港で、目前には桜島が堂々たる姿を見せていました。

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港からフェリーで20分で桜島に渡れるということで、渡し船好きの私としては「渡ってみたい…」と一瞬思いましたが、流石にそれは我慢して港から出て行くフェリーを見送るだけにしました。

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港を後にして皓月会会場の「県民交流センター」へ。

そして午前中に「皓月会」が無事に終わった後、会場近くの「鶴丸城御楼門」を見学に行きました。

明治期に焼失したこの御楼門ですが、県民の皆さんの願い叶って今年復元されたそうです。

門と言っても見上げるように巨大で立派な建造物でした。

そして御楼門から遠く見晴るかす桜島からは、先程は見られなかった噴煙が上がっているのが見えて「おお…!」と何か感動してしまいました。

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“日本の歴史”と”地球の息吹”が、現代のリアルタイムに共存しているのです。

鹿児島は不思議で、非常に魅力的な街でした。

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実は今日はもうひとつ感動したことがありました。

朝に港から県民交流センターに向かう途中、私の目の前を一匹の「アサギマダラ」がヒラヒラと横切って飛んでいったのです。

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秋になると南の島へ”渡り”をする蝶「アサギマダラ」。

毎年10月初めに京都亀岡稽古場の「藤袴」という花に立ち寄るのを見ていたのですが、今年はコロナ禍でその時期に亀岡稽古に行けず、アサギマダラにも会えずに残念な思いをしていたのです。

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そのアサギマダラに10月最後の日に、まさかこの鹿児島で会えるとは。

なんとか撮影しようと追いかけたのですが、アサギマダラは強い風に乗ってあっという間に空高く飛び去っていきました。

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舞台のことを書きませんでしたが、2日間とも晴天に恵まれて、会員の皆様の温かさと熱意に満ち溢れた素晴らしい舞台になりました。

今の時期にこれだけの大きな催しを成功させるために、石黒実都師はじめ関係者の皆様のご苦労は並々ならぬものだったと拝察いたします。

2日間お世話になりまして、誠にありがとうございました。

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亀岡の花々〜ようやくの再開〜

今日はおよそ3ヶ月ぶりに亀岡稽古に行って参りました。

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亀岡稽古場はすっかり秋の装いです。

毎年会うのを楽しみにしている旅をする蝶「アサギマダラ」が立ち寄る藤袴の花も、既に終わりかけでした。

アサギマダラ達は、ほんの数日前まではこの藤袴に戯れていたそうですが、今はもう南国への旅に出てしまった後でした。

来年はまた会えると良いです。

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女郎花の花も、かろうじて少しだけ咲き残っていました。

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今回初めて気がついたのは、「カラタチ」でした。

鉄条網を拡大したような極太の刺に武装された枝に、ピンポン球をひと回り程大きくしたサイズの美味しそうな橙色の実が成っています。

しかしこの実は酸味が強くて食べられないそうです。。

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かなりインパクトの強い見た目のカラタチでしたが、不思議に今回初めて気がつきました。

やはりまだまだ亀岡稽古場の植物には驚かされる事が多いようです。

ようやく稽古再開できましたので、これからまた亀岡の花木をご紹介していけたらと思います。

光秀公ゆかりの稽古場

今日は大山崎稽古のために早朝に東京を出ました。

新幹線はかつて無いほどがら空きで、私の乗った車両には10人ほどしか乗客の姿がありません。

新型肺炎の影響は徐々に大きくなっているように感じます。。

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しかしJR山崎まで来ると、全く普段と変わらない様子でホッとしました。

いや、厳密にはちょっと普段と違っていました。

まず下のようなポスターが駅などに何枚も貼ってあります。

そう、今年の大河ドラマは”明智光秀公”が主人公です。

そして山崎や隣の長岡京はその光秀公や、娘の細川ガラシャゆかりの地なのです。

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稽古場の「宝積寺」も天王山の中腹にあるので、境内には上のような「いざ!天王山」という幟がたくさんはためいていました。

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そして午前中の大山崎稽古を終えて、私が午後に移動した先は…

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亀岡です。

こちらには光秀公が築城した「亀山城址」があり、やはり大河ドラマで盛り上がっているようでした。

稽古場もその亀山城址の中にあるのです。

亀岡駅には明智光秀グッズがたくさん並び…

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城址のお堀端には新しく作られた”明智光秀公像”が立っていました。

亀岡には新しいサッカースタジアムも完成して、今年は色々と賑やかになるのでしょう。

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しかし稽古場に到着すると、城址の中は普段と変わらない静謐な雰囲気でした。

そして今年も梅の花が音も無く開花していました。

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世間は色々大変ですが、変わらず静かに咲く梅を見て、また何かホッとしたのでした。

数十年ぶりの”牛若丸”

今日は亀岡での新年会に参加して参りました。

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最後の満次郎師の番外仕舞が「橋弁慶」で、私は”牛若丸”の役を仰せつかりました。

この橋弁慶の牛若丸は、実は私にとっての初役(生まれて初めて演じる役)でした。

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本来なら”牛若丸”は子方が演じる役です。

私はまだ小学生の時に、能「船弁慶」と能「鞍馬天狗」の子方を勤めたことがあります。

ちなみに船弁慶の子方は義経、鞍馬天狗の子方は牛若丸の役でした。

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そして今回、数十年ぶりの”子方”がやはり牛若丸。

これもひとつの御縁なのかと思い、なにか新鮮な気持ちで勤めさせていただきました。

動きは「十二、三ばかりなる小男」に見えたかどうか定かではありませんが。。

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子方は中学生の頃に卒業するものですが、今後もこうした珍しい機会があればまた頑張って勤めてみたいものだと思います。

虹の力

松本稽古始めから一夜明けて、今日は午後から亀岡稽古でした。

朝に宿を出て松本駅に向かったのですが、北アルプスの山々は雪雲に覆われてほとんど姿が見えません。

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特急しなのに乗って、木曽路を名古屋方面に向かいました。

すると途中でその雪雲が段々と下に降りてくるように見えました。

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やがてついに雪雲の中に入ったようで、外は雪が降りしきっています。

視界も悪くなり、実に寒々とした風景です。

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しかし、それから少しうたた寝をして目覚めると、特急はもう名古屋の市街地に出ていて、空はすっかり晴れていました。

なんとなくホッとして、新幹線に乗りかえて京都方面へ。

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ところが今度は米原あたりで再び怪しい天気になって、雨が降って来ました。

琵琶湖の向かいの比良山系や比叡山は、先ほどの北アルプスのように厚い雲に隠れています。

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京都に到着しても雨は止んでおらず、山陰線で亀岡に向かう間も先頭車両のワイパーはずっと動いていました。

困ったことに今日私は傘を持っていません。

「亀岡駅から稽古場まで、走るしかないかな…」

と覚悟を決めて電車に揺られていました。

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保津峡のトンネル地帯を抜けて亀岡盆地に入ると、驚くことに空の様子が全く変わっていました。

青空がのぞいており、どうやら雨も降っていないようなのです。

そして馬堀駅を過ぎて終点の亀岡駅に近づくにつれて、青空の範囲が見る見る広がっていきます。

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その時車内で、

「うわー、虹!」

という声が聞こえました。

「こんなに近くで見るの初めて…」

という声も。

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ハッとして外を見ると、新しく出来たサッカースタジアムのすぐ横の、手が届きそうなところに見事な虹がかかっていたのです。

画面からはみ出す程の大きな虹でした。

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能「石橋」クセの中で「虹」という言葉が出て来ます。

千丈に及ぶ深い谷に架かる”石橋”の有り様が、

「たとえば夕陽の雨の後に 虹をなせる姿」

のようだ、という内容です。

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そしてこの「虹をなせる姿」という部分を、何故かひときわ強い気迫を込めて謡うことになっているのです。

“虹”という自然現象には、人の心を高揚させる力がある気がします。

その”虹の力”が謡にも反映されたのでしょうか。

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今日の私は雨が上がった有り難さと虹を見た高揚感で、とても気分良く亀岡稽古場に向かうことが出来たのでした。

冬到来のサイン

今日は先週土曜日に引き続いて亀岡稽古でした。

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土曜日には実に鮮やかな紅葉が見られました。

今日同じ木の下に行ってみたのですが、早くも盛りは過ぎて、僅かですが色褪せて見えました。

季節は足早に移ろっていきます。

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稽古場のすぐ横には、見上げるような大銀杏が立っています。

昼過ぎに襖を閉めて稽古をしていると、襖の向こうで雨のように頻りに何かが降り落ちるシルエットが見えました。

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稽古の切れ目に襖を開けてみると…

辺り一面には、降り落ちた銀杏の葉が絨毯のように敷き詰められていたのです。

木々達も急ぎ足で冬支度をしているようでした。

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そういえば、昨日の深更に京大稽古を終えて百万遍から四条河原町の宿に歩く途中、冴えた冬の夜空に高く昇ったオリオン座と冬の大三角形を今シーズン初めて見ました。

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そして時間は更に戻って昨日夕方。

宿から京大稽古へと歩く途中、疎水の夷川発電所辺りでは…

冬空の下で水鳥達が羽を休めていました。

向こうに見える山は嵐山です。

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昨日と今日で、様々な”冬のサイン”を見つけました。

またあの京都の寒い冬がやって来たのだな…

と、しみじみ実感したのでした。