先輩も後輩も同様に

今日は午前中に水道橋宝生能楽堂にて月並能申合があり、私は能「雨月」の地謡を勤めました。

その後昼からやはり水道橋にて五雲会稽古があって私は能「舎利」を舞い、更にその後京都に移動して夕方から22時まで京大稽古をしました。

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京大稽古では、何故か最初の人に注意した点がその後の人でも気になってしまうことがあります。

今日で言うと、「構えの左手の親指が曲がっている」という点と、「足拍子の音にムラがある」という点を何人かに注意しました。

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1回生だけでなく、先輩であっても気がついたら全く同様に注意するようにしています。

これは、先輩の型をきちんと直さないと結局後輩に良くない型が伝わってしまうことがあるからです。

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また、先輩達には卒業してもなるべく続けてほしいので、長期的な視点で型や謡を良くしていってもらいたいという気持ちもあります。

なので、明日金沢である「琥珀の会」のメンバーのようなOBOGであってもやはり同様に気がついたことは直していきたいと思います。

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この方針には勿論自戒の心もあって、京大BOXや江古田稽古場などの鏡がある稽古場では、誰かの注意をしながら自分の型も見て、おかしいと思った箇所は修正するように心掛けています。

「琥珀の会」が近づいて参りました

来たる12月8日の土曜日に、石川県立能楽堂にて稽古会「琥珀の会」が催されます。

非公開の稽古会で、何度かこのブログでも書きましたように京大能楽部の若手OBOG及び一昨年ドイツに行った「ブレーメン能楽隊」のメンバーが中心となっています。

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宝生流舞囃子「箙」「紅葉狩」「龍田」「雲雀山」「邯鄲」

宝生流仕舞「兼平」

観世流仕舞「天鼓」「鵺」

独調「井筒」「杜若」

狂言「寝音曲」「文山立」

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というなかなかに盛りだくさんの内容です。

そして上記の番組には、実は私は一番も参加いたしません。

私はあくまで監督の立場で、シテも地謡も囃子も全て京大能楽部現役と若手OBOG、ブレーメン能楽隊などの”琥珀の会メンバー”が勤めるのです。

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メンバーの年齢は20〜40代と若いのですが、中にはもう20年程もお囃子の稽古を続けているベテランもいます。

そして一方で、稽古を始めて2〜3年の若手もいます。

京大宝生会ではここ最近お囃子の稽古を始める学生が激増しており、「琥珀の会」のような機会にベテランの先輩達と交流してどんどん経験値を上げてもらいたいものです。

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5番の舞囃子は先週土曜日の稽古の数時間でほぼ仕上がりに近い状態になりました。

あとは当日の午前中に申合をして、午後から本番になります。

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週間天気予報では土曜日の金沢は雪マークです。

私は朝一番のサンダーバードで京都から向かうので若干心配ではありますが、雪の寒さに負けないような熱い稽古会にしたいと思います。

もうひと仕事

今日は「琥珀の会」稽古→「宝門会」申合→京大の能「経政」申合という1日でした。

先ほど京大申合まで何とか無事に終えることが出来ました。

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どれを取ってもブログに書きたい出来事がてんこ盛りだったのですが、実は今日はまだこれから明日の「宝門会」の素謡や仕舞の地謡をお浚いするという仕事が残っております。。

今日の諸々はまた後日ぼちぼちと書かせていただきます。

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ひと仕事終える度に、一曲を謡い終える毎に肩が段々と軽くなっていくという、正に「肩の荷が降りる」という言葉を現実の感覚として味わった1日でした。

あともうひと仕事、頑張ります。

殺生石の”KP”と”HP”

今日は水道橋宝生能楽堂で開催された「夜能」にて、能「殺生石」の地謡を勤めました。

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「殺生石」は、最初の地謡である”初同”を謡い始めると、その後”クリ”→”サシ”→”クセ”とずっと続けて謡うことになります。

それぞれの箇所で強さ、早さを微妙に変化させて適切な雰囲気を作り出すのが難しいところです。

“クセ”の中だけでも緩急や強弱が変化します。

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“クセ”まで無事に謡い終えて一度扇を置いて、ふと昔の出来事を思い出しました。

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10年程前に京大宝生会の現役部員から、「謡の稽古の時に”KP”と”HP”という言葉を使うのです。」と聞いたのです。

「ここは”KP”だから気をつけるように」

とか、

「この辺りは”HP”を使って!」

という風に使う言葉のようでした。

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私「へえ〜、それはどういう意味?」

現役「”KP”というのは”気合いポイント”のことです。そこでは特に気合いを入れて謡わなければなりません。」

私「成る程。じゃあ”HP”は何のポイントなの?」

現役「いえ、そっちはポイントではなく、”腹パワー”の略です。謡本に”HP”と書いてある箇所は、とにかく腹に力を入れて謡うのです。」

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今日の「殺生石」だと、”KP”はおそらく「クセ留」の「玉藻 化生を元の身に」の辺りと、「中入地」の「石に隠れ失せにけりや」の辺りでしょうか。

“HP”は勿論最後の「キリ」の部分で、今日も渾身の”腹パワー”で頑張って謡ったのでした。

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“KP”と”HP”、緩急強弱を表すのにとても適した面白い表現だと思います。

今の京大宝生会の現役も、試しに使ってみたら良いかもしれません。

船場能「経政」に出演して参りました

今日は大阪船場にある「坐摩神社」にて「第2回船場能」に出演して参りました。

番組は辰巳満次郎師による能「経政」でした。

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「坐摩神社」と書いて、何と読むかすぐにわかる人は余程の大阪通だと思われます。

これで「いかすりじんじゃ」と読むのです。

“摂津国一宮”で、とても古い歴史を持つ神社だそうです。

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船場は大阪町人文化の中心地であり、おそらく江戸時代には能楽も多く演じられたに違いありません。

その頃御屋敷や御座敷の中では、燭台の灯りで能を演じることが多かっただろうということで、今日は舞台の四隅に4本の燭台を置いて、”蝋燭能”の形式で「経政」が演じられました。

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そもそも「経政」では、燭台の灯火の中で管絃講が行われている所に経政の霊が現れるわけで、今日の演出はストーリーにぴったり合っていたわけです。

見所のお客様達は、ひと時タイムスリップして、当時の旦那衆が楽しんだのと同じ感覚で能を体感していただけたのではないでしょうか。

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「船場能」が終わると私はすぐに京大稽古に移動しました。

来月12月16日に香里能楽堂にて開催される関西宝連の稽古をしたのですが、最後には能「経政」を稽古して終えました。

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今日は経政に始まって経政で終わる1日だったのです。

2018能と狂言の会、無事に終了しました

今朝から開催された京大能楽部「能と狂言の会」はおかげさまで無事に終了致しました。

心に残ったことをいくつか。

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最初の方に宝生会の全体素謡「経政」があり、金剛会の仕舞1番を挟んですぐに宝生会の1、2回生素謡「土蜘」がありました。

この2曲はどちらも無本でした。

「経政」は能地そのままなので、さすがの安定感でしたが、1、2回生はそのすぐ後の「土蜘」を良く頑張ったと思います。

地頭の声によく合わせて、役もそれぞれ大きな声で、とても好感の持てる謡でした。

長時間の正座も問題無く、皆無事に立って帰っていました。

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途中大阪大学喜多会と、京大観世会の招待仕舞がありました。

宝生流、金剛流と合わせて4流の仕舞を比較して見られたのは中々面白かったです。

作法なども、流儀によって主張が微妙に違うのがわかりました。

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宝生会の仕舞では、やはり自分に合った大きさの紋付袴で舞うのが良いと改めて思いました。

前回の舞台で長い袴だった部員が、丁度良い丈の袴で舞っているのを見ると、実力も数段上に見えました。

部員全員が、自分に合った紋付袴を何とか見つけてもらいたいものです。

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宝生会最後の演目は舞囃子「花月」でした。

辰巳家から拝借した”羯鼓”をシテに付ける時、紐を結ぼうと袴の背板を少しめくったところ、背板に「芳」というネームが入っていました。

この袴は小川芳先生からいただいたものだったのですね。

そして”羯鼓”の箱には、「平成8年倉本雅」と書いてありました。

小川先生の袴をはいて、倉本先生が寄贈された羯鼓を付けて、シテ4回生Nさんは現役生活の集大成である舞囃子「花月」を小気味よく元気一杯に舞ってくれました。

小川先生や倉本先生もきっと喜んでくださったと思います。

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他にも印象に残る仕舞がいくつもあったのですが、全部は書ききれないので、これから信州料理屋”お狩場”で始まる後席で直接彼らに話そうと思います。

少しでも直すと…

今日の京大稽古は、来週月曜日の11月12日に迫った自演会「能と狂言の会」前の、最後の仕上げの稽古でした。

16時半過ぎにBOXに到着してから稽古を始めて、全て終わって時計を見ると23時をまわっていました。

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ずっと以前に、坪光松二先生の後を引き継いで現役の謡の稽古を始められた頃の米澤郁雄さんが仰られた言葉を今日思い出しました。

「現役達は、僕が少しでも謡を直すと本当に直したその通りに謡うので、ちょっと恐ろしくなりました。」

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つまり、教える側は僅かの間違いや曖昧さも許されないということで、これは中々のプレッシャーなのです。

そして私は今日現役達の仕舞の稽古で、米澤先輩と同じことを感じたのです。

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本番前の最後の稽古で、各人殆ど仕上がった状態の仕舞です。

おそらく急に修正しても直らないかもしれないと思い、「長期的に直れば良いので…」と前置きしてから直したことでも、現役達は即座に、驚くほど正確に修正してくれるのです。

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「この対応力は何なのだろう…」と内心半ば驚愕しながら、プレッシャーを感じつつ稽古をしました。

そして本番直前とは言え、もう直したいところは全部言ってしまおう!

と決意して稽古した結果、稽古終了時間が23時超えになった訳です。

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プレッシャーがかかる分、実に充実した稽古でもあり、彼らと稽古出来る喜びを今日も感じつつBOXを後にしたのでした。

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京大自演会「能と狂言の会」

11月12日朝9時始曲・金剛能楽堂

です。皆さま現役達の稽古の成果を是非ご覧くださいませ。

よろしくお願いいたします。

舞って謡って、謡って舞って

今日は朝から水道橋宝生能楽堂にて、辰巳満次郎師のお社中会「あまねく会」に出演して参りました。

大ベテランの方から初舞台の方まで、大変に熱気のある舞台でした。

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私の大先輩である、京大宝生東京OB会の皆様も大勢参加されていましたが、今日は驚くべきことがありました。

皆さん実に精力的に、1人で何度も舞台に出ておられたのです。

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それも「仕舞杜若クセシテ→直後の舞囃子梅枝地謡」とか、「舞囃子梅枝地謡→直後の舞囃子安宅シテ(!)」、また「能班女シテ→素謡善知鳥地謡→舞囃子藤戸地謡」など、ある意味で限界に挑戦するかのようなハードな出演のされ方です。

一番多い先輩では「舞囃子安宅地謡→素謡鵺地謡→素謡大原御幸シテ→舞囃子藤戸シテ」と4回も舞台に出られて、その全てが非常にレベルの高いものでした。

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また能「班女」は本当に見事な舞台で、謡も立ち居の姿も実に美しく、地謡で「良いなぁ」と思いながら拝見しておりました。

因みに「班女」の地謡の前列も全員京大OBの方々でした。

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現役時代から長い長い間稽古を積まれて、今なおその先を目指して厳しく研鑽されている京大宝生会の先輩達。

班女のシテを舞われた先輩は、後席でもう今後舞いたい能の候補のお話をされていました。

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OBの皆さんの底知れないパワーを再認識して、嬉しくなった本日の「あまねく会」でした。

京大「能と狂言の会」申合→京大稽古へ

今日は昼間に京大能楽部自演会「能と狂言の会」の申合がありました。

今回宝生会からは舞囃子「花月」が出ます。

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授業や実験、実習などで忙しい部員達がなんとか集まっての申合でしたが、苦心の甲斐あって有意義な申合になりました。

あとはこの申合で明らかになった問題点を微調整して、本番に臨むだけです。

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その後、夕方からは京大BOXに宝生会の稽古に行きました。

舞囃子以外にも、沢山の仕舞が出るのです。

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上回生は、学校や就活なども忙しい上に仕舞の難易度が高く、更に他の人の仕舞の地謡が大量にあるので非常に大変だと思います。

しかしその大変さを表に全く出さずに明るく稽古しているので、とても立派だといつも感心しています。

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そういえば先月の稽古で、急に上手になったと感じた部員がいて、「ちょっと見ない間に上達したねえ」と感じたままを近くの部員に言ったところ、その部員がしみじみと「彼女はすごく稽古してましたから…」と言ったのです。

私の知らないところで、皆それぞれ大変な日常を過ごしつつ、とても努力して稽古しているのでしょう。

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そして彼らは相変わらず、ちゃんと楽しいイベントもやっているようです。

一昨日のハロウィンには、4回生O君の下宿で「仮装無しのハロウィンパーティ」をやってアイルランド料理やお菓子などを大量に作ったそうです。

今日の稽古の帰りがけに、なんと私にもお裾分けがありました。

コウモリやカボチャや猫などの形に焼いたクッキーです。

新幹線で有り難くいただきたいと思います。

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とにかく何事においても頑張っている京大宝生会。

彼らの稽古における努力の成果が披露される自演会「能と狂言の会」は、京都金剛能楽堂にて11月12日(月)朝9時始曲です。

皆様どうかご来場くださいませ。

よろしくお願いいたします。

大山崎ウォーキングから京大稽古へ

昨日の第13回澤風会京都大会はおかげさまで無事に終了いたしました。

お世話になりました先生方、会員の皆様、またたくさんいらしていただいたお客様方に心より御礼申し上げます。

どうもありがとうございました。

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今朝は眠い目をこすりながら阪急電車に乗って、大山崎に向かうました。

普段は稽古で降りる大山崎駅から出発して、今日は大山崎の名所ウォーキングだったのです。

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千利休が建てた国宝の茶室「待庵」の精巧なレプリカや、様々な知恵と趣向を凝らした名建築である「聴竹居」などを、大山崎ふるさとガイドの会のメンバーでもある会員の方に案内していただき、非常に有意義な時間を過ごしました。

「聴竹居」のことはまた改めて書きたいと思います。

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その後夕方に京大宝生会の稽古に行き、21時まできっちり稽古して、これから最終新幹線で東京に戻ります。

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流石に少々眠いです。

明日から、働きながらぼちぼち疲れを取って参りたいと思います。