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ひとつ人より力持ち…

先週の軽井沢の佳広会からこの方、謡を覚えるのに苦労する日が続いております。

一曲の中に「サシ、クセ」という部分がセットで出て来る曲が多いのですが、この数日で同時進行でおさらいしたサシクセが以下の通りです。

水曜日の佳広会では「紅葉狩」「百万」「頼政」「生田敦盛」「歌占」のサシクセ。

昨日今日は「三山」「花筺」のサシクセ。

サシクセは微妙に似通った節と言葉使いなので、これを7曲同時に覚えると、脳内で大混乱が生じます。。

無論サシクセ以外にも覚える箇所は沢山あるので、ブツブツと呟きながら覚えていると段々精神が病んで来て、謡と違うあらぬ方向に言葉が変化していくことがあります。

今日は楽屋である先輩から、「三山の初同を覚えていたら、”ひとつ世に ふた道かけて 三山の”という言葉が、”ひとつ人より力持ち〜”になっちゃうんだよね…。」と言われました。

「ひとつ人より力持ち  ふたつ故郷後にして  …みっつ未来の大物だぁ!」最近の若い人は知らないでしょう。天童よしみ唄うアニメ「いなかっぺ大将」の主題歌です。

虚空を見つめながら小声で「いなかっぺ大将」を口ずさむ人は相当アブノーマルですが、能楽師が謡をさらっている時には、ままある光景なのです。

よくお弟子さんに、「先生方は謡を何でも覚えていてすごいです」などと言われますが、現実には日々追い詰められて、アニメや時代劇の主題歌などに迷走したりもしながら、謡と格闘しております。。

明日は七宝会申合で、能「井筒」の地謡を謡います。

今日までのサシクセを一旦リセットして、今度は「井筒」をサシクセ含めて全曲おさらいする作業にこれから取り掛かろうと思います。

2件のコメント

  1. 何でも覚えていらっしゃってすごい、としか思っていませんでしたが…、何度も笑いながら読ませていただきました。明日も頑張ってください!!!

  2. 今度、記憶術について書いていただきたいです。特に、どうしようもなく切羽詰まって、「そこまでやるの」的な面白い方法を試されたことなどがありましたら、教えていただきたいです。

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