五番立
昨日の五雲会では沢山の皆様にいらしていただきまして、誠にありがとうございました。改めて心より御礼申し上げます。
半蔀の後にロビーである方に、「半蔀は三番目なのです」というお話をしたところ、「三番目とは何でしょう?」と質問されました。
能の演目数は流儀によって異なりますが、及そ200曲前後です。
これをシテの属性や、曲の持つ特性によって5種類に区分したものを「五番立」と言います。
「神、男、女、狂、鬼」の5種類で、能の番組を組む時にもこの順番に沿って組んでいきます。
例えば昨日の五雲会では、
・初番目(神)-氷室
・二番目(男)-経政
・三番目(女)-半蔀
・五番目(鬼)-土蜘
の順で演じられました。
五番立をより詳しく例示する為に、私がこれまで舞った能を五番立で区分してみました。
①初番目(神)
「脇能」とも言われ、神様がシテです。鶴亀のシテ玄宗皇帝も神様として扱われているのですね。私が舞った脇能は…
嵐山、右近、加茂、高砂(後のみ)、竹生島、鶴亀、養老。
②二番目(男)
「修羅物」とも言われ、武将がシテです。勝者がシテの「勝修羅」は箙、田村、八島の3番のみで、あとは敗者がシテの「負修羅」です。負修羅が圧倒的に多いのも、能らしいことだと思います。私が舞った修羅物は…
生田敦盛、箙、兼平、俊成忠度、忠度、田村(前のみ)、巴。
③三番目(女)
「鬘物」とも言われ、優美な女性がシテです。能楽の幽玄性を最も強く深く表現します。
昨日の五雲会で私が舞った半蔀は、この三番目に入ります。これまで舞った鬘物は…
葛城、胡蝶、半蔀。
④四番目(狂)
「雑能物」とも言われ、ドラマチックなストーリー展開の演目が多いです。
私が舞った雑能物は…
花月、須磨源氏、忠信、道成寺、百万、富士太鼓、放下僧、巻絹。
⑤五番目(鬼)
「切能物」とも言われ、鬼や怨霊、天狗などがシテの、派手な動きが多い豪快な演目です。私が舞った切能物は…
春日龍神、黒塚、石橋、乱、是界、鵺、野守、船弁慶、紅葉狩、来殿。
こうして数えてみると、これまでに35番を勤めていたとわかりました。
生涯にあと何番勤められるかは神のみぞ知るところですが、これからも一番一番大切に舞わせていただきたいと思います。