杜若の物着
今日は水道橋宝生能楽堂にて「宝生会定期公演」に出演してまいりました。
私は能「杜若」の地謡を勤めました。
・
・
杜若はもう何度も謡っているのですが、この曲には他の曲には無いある特異な点があると思います。”物着”の後に、
「3人がひとつの身体に同居している」
という時間帯があるのです。
・
・
能には「物着」という演出がわりあい頻繁に出てきます。
舞台上で後見がシテの装束を着替えさせるのです。
・
よくあるパターンは、「亡くなった人の形見を身につけて舞う」
というもので、杜若の物着もそれにあたります。
・
しかし他の曲の物着で着るのは、
「1人の人間の形見」
です。
それが杜若に限っては、
「2人の人間の形見」を身につけるのです。
・
・
つまり頭にかぶる冠は「在原業平」の形見、
羽織っている衣は「藤原高子」の形見、
そしてそれらを身につけるのは「杜若の精」。
・
この姿を演じるシテは、「業平」「高子の妃」「杜若の精」という3つの”人格”を無理なく融合させて美しさを出さなければいけない訳で、非常に難しい役だと思います。
・
・
私はまだこの「杜若」を舞ったことは無く、いつか舞ってみたい曲のひとつです。
舞う機会が来たら、この”三位一体”の姿を色々考えながら表現したいと思います。