舞台の作法
今日は月並能にて能「藤」の地謡を謡って参りました。
能における地謡と言うと、バックコーラスを謡うだけで、動きは無いと思われがちです。
しかし実は地謡も、舞台に一歩足を踏み出してから再び切戸に帰って来る迄に、様々な決められた動きがあるのです。
「作法」と我々は呼んでいます。
地謡座のどこに座るか、扇をどこに置いて、どのタイミングでどこに動かすか、何時扇を持って、それを何時下に置くのか、と言った作法は、全て細かく決められているのです。
ある意味で、自分の動きだけに集中出来るシテよりもむしろ気をつかう役割だと思います。
能の場合、8人の地謡がぴたりと作法を決めて動くと、それだけで舞台に良い緊張感が漲ります。
きちんと作法をして一曲を無事に謡い終えて、切戸に帰る時に見所からいただく拍手は、正座の足の痛みを忘れさせてくれる心地よい響きなのです。