二枚の鏡板の話 最終話
・鏡板の未来
京大宝生会OBで建築士の吉本先輩の御尽力により、練馬の渡雲会舞台から移送した鏡板は京大能楽部新BOXの壁にしっかりと取り付けられました。
渡雲会舞台で55年間渡辺先生の稽古を見守って来た鏡板が、今度はこの先50年ほど学生の稽古を見守ってくれるのです。
また江古田では同じ構図の鏡板の前で、私の澤風会と母親の郁雲会の稽古がこれからも続いて行きます。
個人的な話で恐縮なのですが、私はこの鏡板の前で人生最初の稽古をして、おそらく生涯最後かそれに近い稽古も、この松の前で終えることになる筈です。これもまた不思議な縁です。
そして私がいつか居なくなったその先も、願わくば沢山の人がこれら二枚の鏡板の前で稽古をしていってくれたらと思っています。
最後に鏡板の移送と取り付けに関わった全ての方々に感謝してこの稿を終えたいと思います。どうもありがとうございました。(了)