「荒い」と「柔らかい」
「荒い」と「柔らかい」。
能では何に使う形容詞だと思いますか?
これは仕舞を形容する時に使うのです。
「荒い」仕舞とは、修羅や鬼神などがシテの動きの激しいものを指します。
「柔らかい」仕舞は、美しい女性や女神、或いは高貴な男性などがシテの、優美でゆったりした動きのものです。
私自身の考えは、最初のうちはこれらを交互に稽古すると、「荒い」型と「柔らかい」型がバランス良く上達出来ると思っています。
しかしこれも好みがあるので、例えば「天狗が好きなので、天狗がシテの曲をとりあえず全部稽古したい」という人もいます。
これはこれで有りだと思います。天狗物を究めた後に、全然違うジャンルの曲を稽古すると、芸の幅がそこで広がることもあります。
ちなみに今日の京都下鴨稽古場では、昨年船弁慶キリという荒い曲を舞われた方が、今度は柔らかい半蔀クセを稽古されました。
今回はこの選曲が良くハマって、船弁慶とは別の方が舞っているようなお淑やかな雰囲気になりました。
その旨をお伝えしたら、「いえいえ内面が伴ってないから〜」と謙遜されましたが、寧ろ内面的には変わらずに、演技で別人格を表現出来るのがすごい事なのだと思います。
お弟子さんが芸の幅を広げていくのを見ると、私は自分の事のように「おお!嬉しい!」と思ってしまいます。
明日もまた別の場所で稽古です。
「おお!嬉しい!」という瞬間が、明日もあると良いです。