小川芳先生のこと
今日は今月初めての京大宝生会の仕舞稽古でした。
冬の寒い日に京大稽古に行く時には、私が京大時代に稽古を受けた小川芳先生のことを必ず思い出します。
当時小川先生は、同志社大、京都女子大、京大宝生会で、普段の仕舞稽古を一人で指導されていました。
身寄りは遠くに住む親戚だけで、京阪藤森駅前の団地に一人で住んでおられました。
小柄な先生でしたが、品のある端正な舞姿で、稽古もきちんと正確な型を熱心に教えてくださり、時には厳しく指導されることもありました。
また稽古以外でも、食べることとお喋りがとてもお好きで、我々現役部員やOBを事ある毎に食事やお茶に連れて行ってくださいました。
私の京大宝生会時代は小川先生を抜きには語れず、あの熱心な稽古が無ければ能楽師を目指す事も出来なかったかもしれません。
小川先生はもう20年近く前の1月の終わりに亡くなられました。
告別式は今日のような雪まじりの寒い日に、藤森の団地の小さな集会所でありました。
驚いたのは小さなその集会所から、藤森駅に向かって弔問客の長蛇の列が出来た事です。
大部分が小川先生に稽古を受けた学生とOBで、その数は雪の屋外にも関わらず、200人を越えていました。
何よりも我々学生の事を考えてくださり、学生の指導に捧げられたような先生の人生。
その事実がその時改めて、私の中に本当に強烈に印象付けられました。
京大宝生会ではまだまだお世話になった先生方がいらっしゃるので、また改めて思い出を書いて参ります。