七葉会の話 〜能「羽衣」のこと〜
昨日一昨日と2日間にわたって開催された七葉会。
おかげさまで今年も無事に終えることが出来ました。
先生方、また出演された各会の会員の皆様、そして見所で応援してくださった多くの方々に心より御礼申し上げます。
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今回も本当に盛り沢山の番組で、全てを書くと膨大な量になってしまいます。
とりあえず心に浮かんだことから、何回かに分けて書いてみたいと思います。
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まずは澤風会の話ではないのですが、内藤飛能さんの飛雲会から出た能「羽衣」について。
先週金曜の申合の時に、「85歳で初シテなのです」と伺って驚いたのですが、昨日がいよいよその本番の舞台だったのです。
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シテの方に装束の着付けをしながら、少しだけお話しをしました。
10年前にジパング倶楽部の謡曲教室で謡を始めたこと。
女学校の頃に「羽衣」を国語の授業で勉強したこと。
「能のシテを舞う」ということに昔から憧れていたこと…。
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そして装束を着付け終わって、「鏡の間」に移動しました。
シテの方は、大きな鏡に映る天人の姿を見て「はぁ〜綺麗…。自分じゃないみたいです。」と目をキラキラさせて仰いました。
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色んなことに素直に感動される姿に、私もすっかり感情移入してしまい、「この方の”羽衣”は、何としても成功して良い舞台になってほしいものだ…!」と心から願いました。
申合では長絹の袖が上手く返らなかったり、何点か修正点があったのです。本番は果たして上手く修正されているのか…。
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しかし本番が始まると、私の心配は杞憂に過ぎなかったことがわかりました。
やはり1年をかけて稽古されただけあって、とても落ち着いて品のある素晴らしい「羽衣」の舞台でした。
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無事に舞い終えて楽屋に戻って、装束を脱いだシテの方が嬉し涙を流しておられるのを見て、「良かったなあ…」と心から嬉しく思ったのでした。
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75歳から始めて、85歳で能のシテを立派に舞うことも出来る。
これもまた「能楽」の懐の深さだと思います。
よく「私は始めたのが遅かったから…」というような言葉を会員さんから聞きますが、何歳から始めても決して遅くはないのだと、今回の能「羽衣」のシテの方に改めて教えていただいた気がいたします。
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見事な初シテ、本当におめでとうございました。