皆さんの力が集まって
昨日の郁雲会澤風会申合で能を舞われた会員さんが、その申合の舞台に立つまでにどんな風に過ごされたかを、半分は私の想像を加えてシミュレーションしてみました。
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①能楽堂に到着。最初に会った能楽師が今日の楽屋の場所を教えてくれます。(申合と本番で楽屋の配置が違うのです)
②楽屋に荷物を置いてとりあえずひと息。胴着を持っていない人は、内弟子さんなどの若手の能楽師が胴着と胴帯を渡してくれます。
胴着を持っている人はやはり若手能楽師が「何時までに着替えて、何時から装束をつけるか」を指示してくれます。
③胴着に着替える前後に、一度装束をつける部屋に行き、「面」の「あてもの」を色々付け替えて、シテの顔に合うように調整してもらいます。
④胴着に着替えて楽屋で待機。昨日の郁雲会申合ではシテは全員女性だったので、女性楽屋ではやはり若手の女性能楽師が色々と世話をしてくれたことでしょう。
⑤いよいよ装束をつけます。装束つけのベテランの能楽師達が、「帯の締まり具合はきつく無いですか?」などと細かく質問しながら、シテの負担が少なくて、かつ綺麗に見えるように装束をつけてくれます。
緊張感をほぐすように、軽い冗談なども交えながら装束つけをしてくれる能楽師もいます。
⑥装束をつけ終わると「鏡の間」に移動。内弟子さんがシテの背格好を見て、丁度良い高さの楽屋床几に座らせてくれます。大きな鏡の前に座って、しばし精神を静める時間です。
ここで一度立ち上がり、袖を返す型や、作り物を使った型を稽古することも。その時には周りにいる能楽師が色々とアドバイスをしてくれます。
⑦舞台が近くなり、いよいよ面を掛けます。周りには4〜5人くらいの能楽師がいて、出来るだけ前が見えやすいように微調整しながら面を掛けてくれます。
面を掛ける前にお茶など飲みたくなったら、若手能楽師が即座に持って来て、お湯呑みの下に扇をあてがって飲ませてくれます。扇は装束に飲み物がこぼれない為の配慮です。
⑧幕の前に移動。装束をつけてくれた能楽師がシテの姿を最終確認して、最も綺麗な姿になるように装束を微調整してくれます。
⑨幕が上がります。歩む方向や早さが適切でなければ、ここで後見などが小声で指摘してくれます。「もう少し左向きで、気持ち早く運んでください」などと。
⑩舞台上では、シテ方、ワキ方、囃子方、狂言方の能楽師が勢揃いして、シテの舞や謡を細かくチェックしながら、本番同様に演じてくださいます。
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私は昨日は、殆ど⑩の舞台上にしかおりませんでした。
つまり①〜⑨までは、シテやツレは私以外の沢山の能楽師の方々に、上に書いたようにお世話になった訳です。
昨日の長丁場の申合を何とか滞りなく終えることが出来たのは、ご宗家をはじめとする素晴らしい先輩方、後輩の皆さん、また同世代の仲間達のお力添えのおかげなのです。
この素晴らしい皆さんの力をお借りして郁雲会澤風会を開催出来るのは、本当に幸せなことだと感謝しております。