とうとうたらり…
今日は水道橋宝生能楽堂にて、日曜日開催の月並能の申合がありました。
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私は昨年に続いて、初番の能「翁」の地謡でした。
昨年も書いたのですが、やはり新年に「翁」を謡うのはとても気持ちが良いものです。
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この「翁」は最初の謡が、「とうとうたらりたらりら たらりあがり ららりどう」という謎めいた呪文のような言葉で始まります。
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この言葉が何を意味するのか、昔から様々な説があるようなのですが、実はまだ明快な回答は得られていないそうです。
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笛の音色や滝の音の「聞きなし」という説や、外国の言葉だという説などある中で、私が一票入れたい説があります。
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河口慧海師という明治から昭和にかけて生きた僧侶がいるのですが、この人が「翁の謡はチベットの古い言葉である」と言ったそうなのです。
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有名な説なので、聞いたことのある方も多いと思います。
因みにその後この説は日本の学者などによって完全に否定されているとか。
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それでも私がこの説の肩を持つのは、河口慧海師が僧侶でありながら「探検家」とも呼ばれる人だからです。
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明治時代には厳しい鎖国政策をとっていたチベットに、この人は完璧なチベット語を身に付けて、遥かヒマラヤ山脈を越える苦難の旅の末に、チベット人として潜入に成功するのです。
それはもう「探検」と呼ぶしかない偉業です。
目的はサンスクリット語とチベット語の仏典を入手することでした。
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そして日本人とバレることが無かったばかりか、チベット人医師として有名になり、なんとダライ・ラマ13世から直接お呼びがかかって侍従医のオファーを受けたというエピソードもあるそうなのです。
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そのような卓越した語学力を持つ人が、自ら命をかけて潜入した先のチベットに「とうとうたらり たらりら…」という言葉があったというのです。
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日本人と露見したら命が無いという極限状況で、彼が身体を張って獲得して来た情報には、特別な重みがあると私は感じます。
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…それに私はやはり夢のある話が好きなのです。
たとえ学者には全否定されているとしても、「チベットからどうにかして伝わって来たらしい」という説には想像力を掻き立てられる夢があると思うのです。
1000年程も昔に、チベットから伝わって来たかもしれない謎の言葉。
それを謡っていると思うだけで、私は一層気持ちが良くなります。
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この日曜日、皆さま是非宝生能楽堂の月並能においでいただき、「翁」をご覧になってその不思議な「とうとうたらり…」を聴いていただきたいと思います。
素人歴45年ですが詳しいないです
翁もぼーっと数回運んでおります
絶対に宇宙と交信してる宇宙語だと信じております