瞬きを止める方法
火曜日のプラスチック成形加工学会の時に、私は壇上で能の型のモデルを少し勤めました。
ずっと「構え」の状態で立ち、満次郎師の解説に合わせて「くもる」「しおる」「面を切る」などの型をやるのです。
その解説の中で満次郎師が「我々は能面をかけていなくても、”直面(ひためん)”と言って表情を変えずにいます。瞬きも一切致しません」と仰いました。
その瞬間、何となく会場の数百人が「へ〜っ」と感嘆の声を出して、私の眼に視線を集中した気がしました。
「これは瞬きしてはならないぞ」と内心ちょっと困ってしまいました。
実は白状すると、私は「瞬きを一切しない方法」というのを未だ会得しておりません。
その昔、東京芸大にいた頃に当時観世流の教官をしておられた野村四郎先生に「瞬きを止める方法はありますよ。」と伺ったことがあります。
しかし私が「それはどんな方法ですか?」と質問しても、先生は笑って「それは自分で考えてごらんなさい」と仰るばかりでした。
それ以降、例えば直面のツレで舞台にずっと立っている時などに、色々と瞬きしない方法を研究してみました。
…が、とりあえず現在のところ、
①瞬きをした「つもり」になって、僅かに眼を細めただけですぐまた元に戻すと、「瞬きをした気持ち」になれる。
…という程度の事しか出来ておりません。
そしてどうしても我慢出来なくなった時は、以前に書いた「手品師の手法」を使って、
②お客様の視線が明らかに自分に無い時に、素早く瞬きをする。
という小技を併用しております。
プラスチック成形加工学会の時にも①②の合わせ技を使い、「お客様にはどう見えただろうか?」と内心ドキドキしながら壇を下りました。
そして終了後のパーティの時にある大学教授が「舞台上で一切瞬きをしないと聞いてから、ずっと貴方の眼を見ていたのですが、本当に全然瞬きしていませんでしたね。すごいと思いました。」と私に話しかけてくださいました。
どうやら今回は私のやり方でクリア出来たようで良かったです。
しかし、野村四郎先生の仰ったのはおそらくもっと根本的な方法だと思われます。
今日も七宝会でずっと舞台におりましたので、密かに色々試してみたのですがやはり瞬きを「長時間」「完全に」止めるまでには、まだまだ研究と鍛錬が必要だと思いました。
なので舞台上で直面の私がいても、じっと眼だけを見たりしないよう、くれぐれもお願い申し上げます。。
閉じた状態の上まぶたに、目を描いておく!
…あ、却下されました。
なるほど!
はじめまして、とても興味深い内容だったので不躾ながらコメントさせめ頂きました。
私は演奏家で、奏法について日々模索しております。
瞬きをしないというのは表情筋を動かさないという意識で少し変わるような気がしました(とはいえ、目が乾くのは生理的な事ですよね)私の楽器にも応用できたので感謝です。ありがとうございました。
伏田様 コメントありがとうございます。
久しぶりに2017年のブログを読み返してみましたが、あれから何年も経つのに未だに「完全に瞬きをしない」境地には達しておりません。
野村四郎先生にもっと食い下がって極意をお聞きしておけば良かったです。。
引き続き研究を続けて参りたいと思います。
気がついていなくてすみません!7年も前の話で、今では状況も変わっている事と思いましたが、丁寧な返信をありがとうございました!