「ほおり」と「ホーリー」
昔「井筒」の謡を初めて辰巳孝先生に稽古していただいた時の事です。
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シテ謡の出だし「暁ごとの閼伽の水」
で、「閼伽(あか)」はなんの事か知ってるかい?
と先生に聞かれたのです。
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もちろん当時は知らず、「いえ、わかりません」と即答しました。
すると先生は、
「閼伽は元々は”アクア”と同じ語源だよ。だから”閼伽の水”というのは本当はおかしいんだ。”水の水”になってしまうからね」
と仰いました。
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謡本の中の言葉とラテン語が同じ語源とは新鮮な驚きでした。
その後も「鳥居」の語源がストーンヘンジの三角柱”トリリトン”であるという説を歴史ミステリーの本で読んだりしました。
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今では、意外な語源に繋がっていそうな日本語を見つけると、つい色々と語源を想像して楽しんでしまいます。
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今日これを書いたのは、昨日松本稽古場で「三輪」の謡稽古をした時に、やはりそんな言葉があったからです。
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「三輪」後場の最初の地謡に、
「ただ祝子が着すなる」
という言葉が出てきます。
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“祝子”は”ほおりこ”と読み、「神職」を意味するそうです。
そして「holy」という英語は、名詞だと「聖人、聖者」を意味するのです。
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“ほうり”と”ホーリー”
もちろん全く関係ない言葉なのでしょうけれど、響きと意味がこれほど似ていると、もしかしたら同じ語源かも…
あるいは、「神聖なる存在」を「ホーリ」と呼びたくなる、何らかの理由があるのだろうか…
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などと想像して、ひとり楽しい気分になってしまうのです。